石器の力
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主星αは高く昇り、動物も植物も一番活発に動く。ηの正午・・・地球とは一日の時間が異なっているので24η時間=23h31min12s(地球時間)で再び訪れる。重力と相対性理論によって地球よりゆっくり時間が流れている、という訳ではなく単に1日が少し長いだけ。
ついでにこの世界の1年は360日らしい。適当な感じがするが、公転・自転とのずれが数千年に1日程度しかないので問題は生じていない。現時点で最新の暦が誕生してからまだ1日半の誤差で、誤差を確かめようにも天文学などは全く進展していないので誰も気付いてない。
これは人間文明の話なので、森の中にボロ雑巾のように横たわっている物体、黎明望には関係のない話だ。彼の扱いが酷いことについては気にしてはいけない。
「ん・・・・くぁぁあぁああ~」
大きく欠伸をして起き上がって、暫し目を瞬かせる。体が痛いのだろうか、柔軟体操もどきをしている途中に聞こえるパキパキ音と「お゛お゛お゛お゛」呻き声。
一通り関節を回した後、自分の手を睨み付けたかと思えば虚空に向かってパンチを繰り出し始めた・・・威力はあまりない模様。
「こ※まま*ゃゴブ=ンに勝てない。」
小声なのか発音がはっきりしていないのか何かに対して勝てないと言っていることは聞き取れる。指を空中で何かを描くように動かして、真剣に考えているようだ。
あ、頭を抱えた。そのままゴロゴロ地面を転がって木にぶつかった。そのまま悶えている・・・
「あ゛あああぁあ↑あぁあぁあぃ何やってたの僕!?馬鹿なの死にたいの黒歴史なのノゾミなの?ノゾミは悪口じゃない・・とね?魔法でハイになっていたんだ、落ち着いて考えればわざわざ敵の前に出ていく前に武器を作るべきじゃないかJK!」
身体的ハンディを考えると阿保な事をしていたのは明らかだが、自分の名前を悪口ととらえるあたり若干ネガティブ思考な性格だ。いわゆる陰キャという感じだろうか?
「材料集めるか」
手だけで器用に移動して、そのあたりの木の枝を折って石を拾い、足を生やして出発地点の洞窟に帰っていく。
彼にとって足は必要な時に最小限の時間生やすモノなのだろうか?一般的な人間と照らし合わせても明らかにおかしい。異世界だからこういうのはごまんといる・・・筈もなく魔法を使うことができること以外に地球人と大差ないのでどちらでも彼は異質な存在だ。
望は木の枝に石ころと蔦や蔓といったものをかき集めていく。
ここで石を適当な岩に叩き付けて石片を作成。それを蔦と蔓から作ったヒモ状のナニカで木の枝を束ねた柄に取り付ける。現代科学の接着剤の優秀さが分かるというものだ。上手くいかなかったときに生成された、紐モドキが絡まって千切れて結構な数の緑色をした不定形物体が溜まっていて、手元は草の汁で汚れてしまっている。
とにかく、槍の完成だ。
似たような手順で斧と包丁もどきを作っていく―――まるで原始時代だ。打製石器を拙いながら自作して武器と道具を揃えようと試みている。
早速外に出て、丸太で斧の切れ味を試そうとしてバキッ「痛ったい手が死んだ!」振り下ろされた斧は跳ね返された。鋭さが圧倒的に足りないため、樹皮にほぼダメージを与えることができずに作用反作用の法則に基づいて彼の腕に返ってきたのだ。
「《ファイア》からの・・・えいっ」
リアジュウバクサンッッパキィン!
重さのある石を熱した石に叩き付けて割るやり方に変更することで、十分な鋭さを得ようとした。ここまでは分かる。でも、リア充への怨念を込めるのはやめてくれ。気持ちは分かるが、加工どころか原形を留めず粉々に砕け散ってるから!たまたまハートっぽい形だったからついやっちまったぜテヘペロ☆みたいな顔してもキモいし許されないから!何自分でナイワーキツイワー的な表情して納得してるの!?まいっか!じゃねーよ!!?!破片!熱いし当たると結構痛い・・・あっ作者だから実体無いんだった。
なんやかんやでやっと木繊維を断ち切れるだけの形状を作ることができた。冷めるのが待てないと言わんばかりに取り付けようとしてってストップ!あんまり近づかないで様子見てたのが裏目に出た!?アッツアツだから!作者がうるさい?アッハイ解説に戻ります・・・
案の定火傷。
やっぱり馬鹿なのではないだろうか?
1発目はそこそこ良い形に出来たが、斧に使うのには幅が足りないので槍の先に取り付けている。
パッキイイィン ィィン ィィン ィィン
洞窟の壁に音が反響して何重にもなって聞こえるという耳がおかしくなりそうな騒音の中、平然と作業が続けられるのは一種の才能と言えるのではないか?
そんな中で無数の残骸を作りながら使える形に割れているものを探す。
ガツッ!
ボッ・・・ シャオラア!! ガン!ヒュンッコンコロロ・・・
チィ!カタチガワルイナ ポイッガサゴソ オッ、アッタアッタ
ボォオ・・ブンッ!ガッ!パキーン!!
ヨシモウイッパツ コォォォ ガキッ
明らかにヤバい音が聞こえてきていr
ヒュンッッ!!!ヒョェッ!!?
やっばこれは近くにいたら破片のダイレクトアタック喰らう!?もっかい離れまーす。
山の半分ほど使い切った時点でようやっと3つ全て完成した。
僅かながら光を反射する半円状の切っ先に、木の枝に結ばれる部分がへこんでいて取れにくくなっている中央部。{石の斧}戦斧と呼ぶには威力が少し弱いため、道具として使用する方がよさそうだ。攻撃は槍の仕事である。
{石槍}次こそはゴブリンに有効な攻撃を!という意志が込められているのだろうか、最も鋭い刃先が取り付けられている。最初に取り付けた小ぶりの石?その辺に転がってるよ。
加工用に手後らな大きさの鋭いナイフ形の石、一応ルビを振ってナイフ石とでもしておくか?
小汚い原始人装備だが、本人からしたらさながら三種の神器に見えた事だろう。
「ウオラアアア!!!」
そうでもないみたいだ。さっきまでの怠そうな感じはどこへやら、目は爛々と輝いて乱暴にできたての道具を振り回し始めた。
刃が吹っ飛ぶほどの勢いで樹皮に傷跡を残して、さらにこれでもかと言わんばかりの容赦ない追撃。木片が飛び散り、幹は悲鳴を―――あげる間も無く―――
とどめの大きく振りかぶった一撃。相手は倒れる。
‥‥斧と木両方に親でも殺された恨みがあるのか?いや、切れ味が足りなかった頃のリベンジだよな?こんなにぶん回してちゃ手にダメージが来るのは必然なんだがな。
そんなことなどいざ知らず、殲滅者は止まらない。
惨殺された丸太が一本
丸太が二本
丸太が三本
丸太が・・・
二十本を超えたあたりで、望は数えることをやめた。ついでに切る作業もやめた。
前に見つけた食べれる木の実を摘もうとしているが、毒がないという訳ではないのだよ?地球のアケビに近い植物で、不味いのはまだ熟していないから。僅かに麻薬成分を含み、大量に摂取する・・・いや、摂取させるのだ。それによって体内から分解、仲間への伝達による中毒者の増加、最終的に過剰摂取で死んだ骸からの養分採集というかなりえげつないことをしている。
因みに熟れた実は栄養が足りないときに麻薬成分を糖分に変えて、他の植物と同じように果実を使って生息域を拡大する。
まだ若い木で中毒量になるほど実ってなかったのと、そもそもうろ覚えだったので今食べようとしている木の実が別の種類だということに気が付いていない。こっちはちゃんと春から初夏にかけて熟すけど・・・
『異世界の植生について』、第一部完! さて、寝るべ。
こうして作者も、考えるのをやめた。
「酸っぺぇぇぇええぇええぇえぇえぇぇえええぇええぇぇぇええぇえ!!?」
素破っ何事!?あっ説明忘れてた。マナス科クコの仲間、豊富なクエン酸やビタミンCを含むスーパーフルーツ。魔力・体力の回復効果がある。非常に酸味が強く、マナ・ポーションの材料として主に用いられる。
あ~生で食っちゃったの・・・
「でも食う」
回復効果は強いし、疲れ切った体には良く効くことを本能的に察知して採集・咀嚼・嚥下のサイクルは加速する。
今度こそ休憩・・・
再開した作業は、見違えるほどハイペースで進んで行く。目標本数の25本を早々と切り終わったので、丸太を木材に加工する段階に入ろうとしたものの、急に手が止まった。どうしたのだろう?
「何作るか決まってねぇ」
何となく勢いで木の板を作ろうとしていたが、実は作るものは特に決まっていなかった。
つい木こりをしてしまうのは某有名サンドボックス系ゲームが原因、作者も気持ちは分かります。
「しゃーない、塀でも作って拠点守るか。」
両側を切りそろえて、同じ長さの丸木の柱を造る。ここで{Stone Knife}を使って
削る、削る削る削る削る削る
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
削削削削削削削削削削削削削
で、出来上がったのがこちら☆(三分クッキング感)
木 の 杭
「作るもん間違えた・・・」
完成品を拠点に取り敢えず運び込んで、次の丸太を転がして運ぶ。丸太に転がされながら運ばれてることについては気にしてはいけない。寧ろ傾斜で逆方向に進んでいるのも、気にしてはいけないのだ・・・!
さて、木材を削る作業を再開しようか(白目)え?なんでボロボロなのかって??
ヒント。ゴブリンなどの魔物は音に反応します。
丸太2本ロストも、魔法攻撃を受けてできた痣だらけの背中も気にしてはいけないのだ(黒目)
さて、もう一回削る作業を始めよう。
削る、削る削る削る削る削る
削削削削削削削(以下略
で、出来上がったのがこちら☆(二回目)
木 の 杭
ハイ皆さんご一緒にー
5,4,3,2,
同 じ じ ゃ ね え か(一は飛ばした)
単に何を作ろうとしてたかを頭部に食らった一撃で脳震盪起こして忘れただけなんですけどね(白目&黒目オッドアイ)
杭を一列に打つことで壁を作って拠点の防御を固めることが目的だ。ゴブリンへの反撃は、少なくとも安全(仮)なセーフポイントを作ってからになりそうだ。