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サモン術式がバグったから、この世界を好きに生き抜く。(凍結)  作者: KSTAR(K*485)
第一章 不承負傷のサバイバル生活
5/9

ゴブリンから逃走

change sides

side:Nozomi


ηエータ/Eta Another World

η歴8203,春の下月 第2週 光の曜





 僕は黎明望、高校生だ。今、全力で移動している。元文化部だから全力疾走しても速度は高が知れているし、歩くことすら出来ていない。異世界に召喚される途中で足を失ったでござる。手を足代わりにして交互に前に進めることで、若干ゴリラを連想させる進み方になっている。




 読書部の高1に(いささ)かハードモード過ぎない?ねえ、マジで。バリアフリーの概念が存在しない世界だとしたら当然か。


 思考内容の文末が安定しないのは最近読んだライトノベルが原因だ。こういう異世界召喚モノはハーレム系とか俺TUEEEEとかチートとかがお決まりだったし、ゲームの世界線に転移するとか前世の記憶を引き継いで転生するとかそんな感じだった。そんな展開を1ミリでも期待した僕が馬鹿だった。


 取り敢えず足奪った上に未開の地に放り出した召喚者には一発顔面右ストレートを食らわせることが今決定した。




 大分(だいぶ)思考が迷走して脱線して暴走中だが、これには訳がある。



「現実逃避に決まってんだろおおぉぉおおぉ!!」


ファンタジーな世界の中にいるのはもうわかったよ!だけど!だけどさ!!ゲームの世界に召喚されたのなら最初に当たる敵はスライムないし低レベルのチュートリアル的雑魚モブと相場は決まっているだろ!!?


 実はもう分かってる、ここはゲームみたいに生易しい世界じゃないって。どちらかと言えばハリー・●ッターから魔法要素抜いてクリーチャーだけ持ってきたような・・小説じゃなくて映画・DVDの方のイメージだ(その方が楽だった)・・リアリティ溢れる感じ。ゲームとかのデフォルメを完全にやめた3DCG。CGじゃない。自分は、実際にそんな世界に入ってるのだと強制的に体感させられている。後方10mに迫ってきている奴ら(・・)のせいで。




 皮膚は緑で体毛は少なく、醜悪とは言わないがお世辞にも整っているとは言いようのない顔。ぎらついた眼に裂けた口、その中にちらつく鋭い歯。雑魚は雑魚だが身体的ハンディを考えると十分脅威な定番モンスター。


そう、【小鬼(ゴブリン)】だ。




「クッソがよおおおぉぉおぉおぉおおおおう!!!!」


口汚く罵る文言を吐くが、僕はもともと品行方正な方だ。単に自分にたまったストレスからくる狂気を発散しているだけ。大声を出すことによって僅かながら走る速度も上がるらしいので一石二鳥だ。


―――解説:作者 大声を出すことによって一時的に筋肉が弛緩し、ほんの一瞬だけなら速度が上がります。しかし、例えば100m走のラスト5mで使うようなテクニックであるため、持続的な効果はなく寧ろ酸欠で失速しやすくなってしまうのでここでは逆効果です。―――









 とか言っているうちに走りやすかった草藪と草原を抜けてしまって、目の前にはうっそうと茂った森。振り返って後ろを見る。【ゴブリン】が5,6体。僕の人生もうすぐ終わるんじゃね?


森に突っ込んでいく→動きにくいので速度落ちる→追いつかれる→武器ない→フルボッコ


ここまでほぼ一瞬(体感)


前方は森、後方には敵。虎と狼の方がまだましだ。だって選択肢二つもあるから。森を迂回する選択肢は、問題の先送りと事態の悪化にしかつながらないだろう。

L字のルートより直線で追う方が距離が短くなるから・・・



まだ諦めるのには早い。あの決意はどこへ行った?“生き残る”たった4文字の意思が、すでに折れることがあっていいのか?


必至というよりもはや決死の覚悟を持って森の手前で立ち止まり、右腕を軸に180度回転する。がくがくと上下していた視界が今度は左右に大きく回って、三半規管と視覚の情報のずれによる吐き気が襲う。



 そうして捉えたのは、かなり距離が開いたところにいる木の棍棒らしきものを待っているのが三匹、弓をもっているのが一匹、体格のいいのが一匹・・ん?弓!?


 丁度その瞬間に弓持ちのゴブリン【ゴブリンアーチャー】と命名(仮)が矢を放った。背筋に悪寒が走り、ほぼ脊髄反射で首をそらす。正確に頭部を狙った矢は、顔の横数mmを風を切ってさっきまで顔があった場所通過し、その先の木に当たった。


「Noooooooooooooo!!!」


スタートダッシュを決めて少しだけ、ゴブリン達を引き離した。。まではいいんだが、ジリ貧の状況に変わりはない。


!まだ僕はここで終わりじゃないようだ!

中規模の洞窟が左の方に見えた。両手首がいやな音を立てて鋭い痛みが襲うが、約80kgの力が瞬時に掛かったんだ、無理もない。ついでにバランス崩して文字通り転がり込んでいるけど大した問題じゃない。唐突に崩落したり、洞窟に主がいたりするケースよりかは全然悪くない事故だ。



岩陰に身を隠し、ゴブリンが立ち去るのを待つ。


「ギャギャ!ゲギャ!?」「ギョゴギャ、グギャ?」



「ゲギャ?ゲギャ?(ドコダ?ドコダ?)」「ギャギャ!ギャギャ!(サガセ!サガセ!)」



じっと耳を澄ますと、何となく言っていることが分かった。召喚時に何か〈言語理解能力〉なる物を与えられたからかな?そう云えば“必要以外の言語を排除に失敗した”みたいなエラーメッセージを召喚されたときに見たような・・




 そんなことを考えながら五分ほど待ってみたが、立ち去る気配はない。というか近付いてない?・・これは、見つかるのも時間の問題だ。


暗闇に目が慣れてきたので、足元に転がっている石ころを見つけて拾うことができた。テンプレ的な手だが石を投げて注意をそらさせることにした。



ヒュッ


コツッ コンコロロロ・・・・・・


「ガギャ!ガギャ!(アッチ!アッチ!)」


ゴブリン達は森の中へ去っていった。




「ふう~」


緊張が解けたためだろう。強烈な睡魔が襲ってくる。疲れ切った体を癒すため、一切抵抗せずにそのまま眠りに落ちた。

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