第94話無理を押して
エポジンだけを打ってもらって翌日から新潟からホテルを回ることにしました。
今回は3軒のホテルを2泊3日で回ります。
女房が不安そうな顔をして尿漏れパンツを3日分鞄に入れてくれます。
相棒が新幹線の予約とレンタカーを借りています。
「社長から反対を宣告されなかったですね?」
彼は3年半この会社にいて社長のことは私より詳しいのです。
「幹部連中が全員反対したとは言ってたな。だがこちらもそうだろうけれど、社員についてはあまり信用してなさそうだ」
「でもめったに自分では決めないのですよ」
「だが今回は条件付きだけど家賃の引き下げを認めた」
今回はノートを持ってきていて、合間に独立採算のプランを立て始めている。
「それはきっと専務の意見を取り入れたと言っていると思いますね。失敗したら責任を取らされますよ。成功したら次々と新しいことを言ってきます。まともな社員は6か月ともたないのです」
「じゃ二人ともまともな社員じゃないことになる」
「だから生き残っている社員は自分の守備範囲を守り、新しいことに手を出さないのです。それと身を守るためにすぐに群れるのです。もちろんその中の一人でした。でも専務はその人たちと違うのです」
珍しく相棒はよくしゃべります。
私は今まで仕事をしてなんぼの会社で育ってきました。