第91話ホテル回り
主治医のお許しは出ませんでしたが、全国のホテル周りを始めました。
相棒の部長がまずは近畿圏を選んで近いところから回る計画を立ててくれました。
その話を本社の社長に報告すると、社用車を必要な時に使えという返事でした。
でも家賃の引き下げのOKは出ません。
これが決まらないと再建は滞ってしまいます。
車の移動ですが、2時間おきにパーキングに寄ってもらうよう彼に頼んでいます。
話が行っているのか支配人が迎えてくれます。
ホテルの設備と修繕箇所を説明します。
相棒はカメラマンに徹しています。
「今回本社から出向に来られたのは訳があるのですか?」
「恒常的な赤字体質の健全化なのですが」
支配人が難しそうな顔で、
「本来はホテルはパチンコ店のように定期的に改装したり、新しいシステムを導入しないと売り上げは続きません。でもこのホテルは前の管理会社からそれを行っていません。この地区では7軒の同業者がいますが、売り上げではここは下から2番目です」
「今の社長は?」
「儲かる店を中心に改装や設備を入れていますが、ここはいくら話をしても待ってくれの一点張りですよ」
相棒が戻ってくると、さっと話を止めます。
「今から戻ると8時を過ぎます。フロントに話を聞きましたが、あの支配人は昼間よくサボって街に出かけるそうです。彼は別会社のあの専務のイエスマンだそうです。新しい商品は必ずここが先頭を切って購入しています」
「どうも専務がよく出てくるな」
何とかこの距離の営業は体が持ちそうです。