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第54話最後の仕事
翌日から会社に出勤をして、ホテルの資料を見ています。
どうもこの事業は10年まえから始められていて、全国に中古のホテルを26棟持つに至っています。
本業の運送業と肩を並べる規模になっています。
運営指揮は社長が直々にとっていて、専務も他の社員も絡んでいません。
社長の息子が下働きをしているだけです。
「よくもこれだけの人数で回せますね?」
息子の席に呼ばれて話します。
「今はあの子会社の社長が全体を見ていますが、ここには社員を入れない主義なのです」
「問題は起きないのですか?」
「問題だらけですよ。だから心配なのです」
10日ほど資料に張り付いて少しは全景が見えてきました。
現在の体調ではこの会社が最後になるような気がします。
それだけにしっかりとした仕事がしたいと思っています。
今のところ総務部長のままですので、課長の隣に戻ります。
不動産部の担当が気を使って倉庫から古いパソコンを運んできてくれています。
「今度は何をするんですか?」
課長が心配そうに声をかけてきます。
社員にどんな噂が流れているのでしょう。