第49話エポジン
会社からは何の指示もありません。
これは出勤した日から退職の話になるかもしれません。
むかつきは治まりましたが、検査の結果を見ないとどうとは言えません。
今日は朝ごはん(まだお粥です)が終わって内科の主治医が顔を見せました。
横に担当の若い女医がファイルを持って立っています。
「クレアチニンは今のところ4台を維持していますが、しばらく様子を見たいと思います。Hb(ヘモグロビン濃度)は13.5~17.5が正常値ですが、4.61に落ちてかなりの貧血状態だったようです」
隣の女医が検査結果を見せてくれます。
「現在は10.4までに回復していますが、腎不全では血液を自分で作れなくなっていますので、取敢えず1か月に一度エポジンを打つことにしましょう」
と言うなり主治医は質問したい私を置いて部屋を出てゆきます。
「エポジンて!?」
「エポジン(中外製薬、主成分エポエチン ベータ(遺伝子組換え))は、腎臓の働きが低下することでおきる貧血(腎性貧血)を治療するための薬です。腎臓からは、赤血球の産生をコントロールするタンパク質、エリスロポエチンが分泌されています。腎臓の働きが低下すると、腎臓からエリスロポエチンが分泌されなくなるので、体内の赤血球の産生ができなくなり、貧血症状を起こします。エポジンは、遺伝子組み換え技術により作られたヒトのエリスロポエチンで、エリスロポエチンのを補充することで、腎性貧血を治療します」
まるで生徒に教えるように丁寧に説明します。