第289話初心に帰る
商品モニター実施の5社のうち社長の奮闘でネット販売に4社が協賛してもらいました。
それでPさんとシステム部長が朝までかかってアップしたそうです。
昔はそういうことがよくありました。
「覆面調査もネット販売も炎上なうですよね」
久しぶりにいっちょかみ娘が椅子を滑らせてテーブルにファイルを拡げます。
私はベランダ栽培で作ったブレンドハーブ茶を出します。
「売り上げとしては安定しているんですがどうもパッとしないんですよ」
「まあ、足踏みの時代も必要だよ」
彼女は会社では一番若い22歳の部長です。
「開店看板も同業が10社ほど出てきました。結構大手も3社あるんです。もう寿命なんですか?」
彼女の拡げた資料をペラペラ捲っていきます。
いっちょかみ娘の良さは実行パワーですが、他の部署との連携は苦手なのでプラスアルファーが採れにくいのです。
「開店看板の会員数は当初に比べて10倍の100人まで来たんだね。更新作業は100%、新規は50%まで会員でこなすようになっている。それは予定通りだが問題は?」
「更新はシステムが出来上がってほぼ社員の手がかからないようになっています。問題は新規ですね?ここは会員としては10人だけしか難しいのです」
「それをR職会員としてという覆面調査のいいところは真似ることだよ」
「それが苦手なんですよね」
「部長としてはそこはだめだよ。それとこれを見ていると今までは来るもの拒まずで来たようですが、これからは強い分野を絞り込むことですね」
開店看板の分野別のグラフがあります。
「飲食関係が35%、不動産が20%で過半数を占めているね?」
「ええ、そうですね」
「成功事例をグラフ化して業種に特化すべき時代だな」
「さっそくホームページにそのグラフを上げます。それに営業メールリストの絞り直してみます」
「初心に帰るですよ」
夜にシステム部長がいっちょかみ娘と入念な打ち合わせをしています。
私は一足先に退社しておっさんの息子と北新地のママの店に行きます。
これは信組の理事長ととの見合いのようなものです。




