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第208話元も子もない

今日は内科の検査の後、前回差し押さえをした銀行の支店長と銀行で会います。

「すいませんね。わざわざ出向いてもらいまして」

支店長室で担当をしていた次長と並んで座っています。

「総務部長時代は何度かこちらに来ていただいています」

担当の次長は分厚い資料を拡げます。

「会社の真実な状況はどうでしょう。元銀行員でもあられたのでよく分かられていると思いますが?」

銀行もいろいろ調べているようです。

「おそらく会社全体は私の入る前は黒字であったと思います。でもホテル事業は当時から赤字でしたね。現在は全体で売り上げが半分に落ちたと聞いていますので赤字でしょう」

「やはり」

支店長が困った顔をしています。

「回復の見込みは?」

「更に悪くなると思います。どの部門も先行きは見えません。これは債権回収をした経験から言うと早く逃げたところが助かる流れですね」

そういう私も労働裁判に勝っても倒産されたら元も子もありません。

「メインバンクはどうでしょう?」

「引くに引けないところだと思います。何しろ全グループの年商の5倍を貸し付けているわけですから」

こういう状態はバブルの時によくあった話です。

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