第181話告発
職業訓練の授業が終わったのを見計らって、相棒の部長から慌てた声で携帯が入ります。
どうも教室の近くの行きつけの喫茶店に来ているようです。
「仕事中じゃないの?」
「いえ、この近くに当社のビルがあるので」
「不動産部長がとんでもないことをしでかしたのです」
「自宅謹慎やなかったの?」
「それが謹慎中の期間の給料がカットされて、約束を反故にされたとか」
「約束?」
「どうもあの事件を引被り替わりに専務にすると言う約束があったようです」
「それは疑わしいな。あの社長はそんな約束を口頭でもしないタイプだ」
「それを伝えてきたのは当時の総務課長ですわ」
「それを真に受けるとは」
「それで住宅ローンが払えなくなって、私にまた金を借りに来たのですよ。それと本社のホテルの現場責任者が不動産部長の肝いりのホテルの元専務でしたが、今回あの殴り込みしたやくざに代わったそうです。これはその男が総務部長を脅したと噂ですわ」
どうもあの総務部長という男はどこか欠落しているとしか思えません。
「どうも不動産部長が運送の元受の支店長に本社が毎年1000万の裏金を渡していたとの告発を相手の社長に送ったようなんです。不動産課長も連名したようです」
「とんでもないことになるよ」
「それで専務に会わせてくれと?」
「私は彼とは関わらないよ。私の場合は純然たる労働裁判なんだ」




