第16話再発は?
本来の総務部長の仕事は総務課長ががっちり抱え込んでいて離しません。
得てして転職の先では起こる現象です。
泌尿器科と内科の通院がある現状ではしばらくおとなしくしているしかなさそうです。
それで社長の了解を得て会社の決算書を丁寧に見ていきます。
この会社は傘下に7社の子会社があり、各社の事務代行を主たる仕事としています。
私はリクルートで経験のある不動産事業から会社の分析をしてみようと思います。
取敢えず誰からも病気のことも退職の話も出ません。
昨日胱内注入療法を開始しましたが、多少膀胱のあたりがムズムズするだけで副作用はなさそうです。
お弁当を食べていると、不動産部の担当者が初めて声をかけてきました。
「病気の方はどうなんですか?」
初めて病気ことを聞かれて逆にほっとしたのはどうしたことでしょうか。
「膀胱がんは摘出成功して後は検査です」
「総務課長の噂を御存知ですか?」
「よくやってくれているんで助かっていますが?」
「彼は部長が仕事をしないと不平たらたらですよ。あのタイプは信用できませんよ」
それだけ言うと離れていきました。
やはり!と思いましたが、今は病気の成り行きを見るしかありません。
57歳の私としては取敢えず60歳が一つのゴールで、出世をしたいとかそういうものはありません。
膀胱がんがこれで終わるとはどうしても思われません。




