魔法でゴホゴホ。発動でビリビリ。
杖契約式から数日が経った。
その後、すぐに魔法のお勉強...とはいかなかった。
今回杖契約式に出席していた身内の方お茶会や挨拶回りなどでここ数日は魔法の勉強をする暇さえなかった。
そして、ようやく身内の方が全て帰って行き、魔法の勉強ができる環境となったのだ。
その時に、父さんから今まで読んでいた魔法の本とは別の本をいただいた。
俺は新しくもらった魔法の本を手に取り、最初のページを読んでみる。
「え〜っと。『魔法には6つの属性がある。赤い光を放ち、熱などを使う《火属性魔法》。青い光を放ち、水を操る《水属性魔法》。緑色の光を放ち、風を支配する《風属性魔法》。黄色い光を放ち、大地を揺らす《土属性魔法》、白き光を放ち、世界を照らす《光属性魔法》。黒き光を放ち、世界を包む《闇属性魔法》』か...。この光ってのがあの式で杖石から出てきたあの黒い光のことかな?」
俺は本の目次から闇属性魔法に関するページを開く。そのページには闇属性魔法についてののことが書かれてあった。
「え〜。『闇属性魔法はその異質の特性から、発動できる魔法は大きく分けて3種類である』。異質?」
闇属性魔法はほかのどの属性とは違い、単体の属性でしか使えない。
ほかの属性は、多種の属性を組み合わせることで、より強力な力が使えることができる。
例えば、風属性と水属性を融合させ、氷属性魔法と言った強力な魔法が使えるようになるのだが、闇属性は他の属性を飲み込む性質があるため、単体としてのみ使用することができる。
「なるほどな。だから異質なのか。なら、光属性はどうなんだ?」
俺は闇属性のページに栞を挟み、光属性のページを開く。
「『光属性は単体で魔法を発動することはできない』」
光属性は火属性・水属性・風属性・土属性の魔力比を1・1・1・1の割合でようやく使える非常にバランスを合わせることが難しい魔法である。中には生まれ持った才能で、バランスよく比率を調節をすることができる者や最初から光魔力を発動できる者もいる。それができる者は、ほかの4属性の才能も高い。
「『主な魔法は《回復魔法》や《浄化魔法》である』ねぇ」
光属性は闇属性と同じように少し変わった性質だが、闇属性とは全くの逆の性質のようだ。
「まぁ、光と闇は対極のようなものだからな...。さて、闇属性は...『主な魔法の1つ目はは《煙幕及び状態異常系の魔法》。2つ目は《召喚魔法》。そして、3つ目が《独自仕様魔法》の3つである』。ワンオフ・マジック?」
俺は本読み進めていき、大まかにだが内容を理解した。
まず、1つ目の魔法についてだが、これはただ煙幕を出すのではあるが、魔法1つ1つにしっかりとした効力があり、発動する魔法によっては回復のできるものや相手を眠らせることのできる魔法もあるらしい。2つ目の魔法はよくファンタジー系であるごく普通の召喚術だった。そして、3つ目のワンオフ・マジックはたった一言。『自分の発想を形にした魔法』としか書かれていなかった。それならほかの属性にも使えるのではと考えたのだが、説明文に『最もイメージを形にすることのできる魔法は闇属性魔法だけである。何故なら、ほかの属性には自然の中から魔法を生み出す発想が生まれるが、闇属性は常に自分との対話である。そのため、ほかの属性ではイメージを構築するための力を持たないのである』と書かれてあった。
「・・・なるほどな。つまりは自分で学んで作っていけってことか...」
俺は顔をしかめながら立ち上がり、部屋の中心に歩きながら杖石に魔力を込めて杖の形に変える。
ここ数日で杖石に魔力を込めるだけで杖の形になることがわかった。おそらく呪文は最初に杖との契約として使われていたのだろう。
俺は杖を展開し、部屋の中心で構える。
「とりあえず、煙幕系の魔法を思いつくいくつかを試してみるか」
俺は目を瞑り、煙りや煙幕をイメージする。
前に読んだ本で目を瞑ることでより強く魔法の形をイメージしやすくなるのだそうだ。
俺がイメージとしての形づけたのは忍者が使う煙玉の様なものだった。
うまくイメージすることができたので、あとは魔力を杖に送り込み、魔法としての形を作る。
魔法を形づけるにはその魔法に対する魔法名とイメージを形づけたものを文として当てはめ、それを詠唱することでより強く魔法を発動することができる。
今回の場合は、
「黒き煙よ!我が姿を隠し包み込め !スモック!」
その言葉を口にすると、杖から黒い煙がかなりの量出てきた。
「よっしゃ!うまくいった!・・・それにしても、生まれて初めての魔法がかかる煙って地味...ゴッホ!ゴッホ!」
初めての魔法に感慨深く思っていると、発動したスモックの煙を吸ってしまい、思いっきり咳き込んでしまう。
「ゴッホ!ゴッホ!...いや〜、まさか魔法がここまでしっかりと発動するとは思わなかったよ。これからその点にも注意しないとな」
俺は魔法1つ1つに注意しながら、今度は違う魔法を発動させた。
*
「それで、つい気が緩んで魔法に当たって感電してしまったの?」
「はい...。すみません」
俺は今ベットの上で母さんに事情を説明しながら顔を俯かせている。
あの後、2つほど魔法の発動に成功した。まずは、《ミスト》。これは煙と同じような解釈で発動したが、発動することはなかった。どういうことかと頭を悩ませ、俺は霧について調べることにした。
机には魔法を使うためにいくつもの資料や辞書が置かれている。俺はそこから辞書を取り、エルドラス語で書かれている『霧』と載っているページを開いき、読んでみた。結果、霧には水が含まれていると書かれてあった。つまり、霧は水属性系統の魔法。水属性に闇属性を使うと特性上、水属性を飲み込み闇属性にしてしまうのだと結論付けようとしたが、本に書かれていることを思い出した。『回復のできるものや相手を眠らせることのできる』ということは逆にほかの属性を闇属性に付与できるのではないかと思いついた。
回復魔法は元々光属性が得意とする魔法だ。その回復魔法を闇属性魔法として回復することができるのならば、それと同じようにすれば、《ミスト》も発動することが可能なのではないかと思いついた。
その時、水蒸気のことについて思い出した。水蒸気はもともと成分は水。そこに《加熱》という火を加えることで発生するようは《湯気》だ。煙そのものは《空気》の塊だ。ならば、その《空気》を《水蒸気》である《H2O》に変換することができるならば、先程の考えの通りに《ミスト》を発動することが可能なのではないかと思いついた。
結果、実験は大成功。見事に霧を発生させることに成功した。
喜んだ俺は、そこから調子に乗った。
俺は父さんからもらった本をさらに読み進め、その中の1つの魔法が目に留まりその魔法を発動させ、
「アバババババババ!!!」
その魔法を自分がくらいそのまま感電しのだ。
感電し、動けなくなっている俺がいる部屋に様子を見にきた母さんが倒れている俺を見て驚き、すぐさま回復魔法をかけてもらった。その後すぐにベットで横になり、起き上がるくらいまで回復した。
「全く...、気をつけなさいよ」
「は〜い」
「それじゃあ私は戻るけど、あまり無茶はしない安静にしていなさいね」
「あ!その前に2つほど頼みがあるんだけど!」
「うん?何?」
「召喚魔法を試したいんだ!いいかな?」
「う〜ん。それはお父さんに言って見ないと...」
「そっか...」
「それで?もう1つは?」
「え?ああ!うん!母さんはワンオフ・マジックって知ってる?」
「・・・」
「?母さん?」
「へ?...ああ。・・・私からなんとも言えないわ」
「そっか...」
「でも、お父さんなら。何か知っているかもしれないわ」
「そっか!それじゃあ、後で聞いてみるよ!」
父さんに話を聞くことを決めると、母さんは優しく頭を撫でる。その表情はまるで、恋をしていますといった顔をしていた。