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4年間の出来事と杖石

 俺がこの世界に転生してから実に4年の月日が流れた…。

 赤ん坊から人生再スタートは、正直きつかった。

 ミルクを飲むも誰かがいないと飲むこともできない。飲んだ後は息が詰まって死にかける。その中でもトイレや風呂が1番きつかった。

 ・・・思い出したくないから考えないようにしよう...。


 赤ん坊から2歳ぐらいの時はいつも今の母やメイドたちが側にいることが多かったが、どうにかこの世界のことを知ることができた。

 この異世界の名前は『エルドラス』。数多くの種族が平穏に生活している。

 さらに、この世界は大きく分けて3つの国に分けられている。採掘や工業などが盛んな国『ドラン王国』・緑や泉などの自然豊かな国『エルレシア』・亜人などが平和に暮らす『アトラス』。この3国が中心となり、平穏が保たれているということがわかった。


 それと、俺の家が貴族の家であることが3歳になってわかった。家の名前はドラケイル家。このエルレシアにある貴族の家系で爵位は子爵…一応この国ではそれなり名のある名家の本の一つらしい。 というか、普通に考えてメイドとかいる家が普通な家の訳がないか...。


 4歳になり、色々と自由が効くようになるが、この歳になると母であるユリア・ドラケイルが、


「ハク〜。こんな服はどうかしら〜?」

「とりあえず男にそんなフリフリドレスを許容しないで〜!てか!そっちのセーターは何!」

「一部の男性を殺せるセーターだそうよ〜」

「い〜や〜!!!」


本気で女性服を着させようとしてくる。

 てか、あのセーターはダメだ!あれを着たら、本当にそっち方面の人になってしまう!

 俺は家の中を全力で逃げ回るが、いつのまにか先回りされ、捕まった。


「母さんは運動は得意じゃなかった筈だ!」

「愛さえあれば、人間なんでもできるものよ♪」

「捨てちまえ!そんな愛!」


 その後、父さんの説得でセーターの代わりにメイド服を着るということでどうにか事なきを得た。

 てか、メイド服でも色々と問題がある気がするのだが...。

 父であるアイゼン・ドラケイルからは魔法についてある程度のことは教えてもらった。ある程度の理由は...、


「魔法は自分で考え、作り出すことに意味があるんだ」

「とか言いながら、本当は何を教えていいのか、わからなかったんじゃないの?」

「そ、そんなことないだろ...」

(図星か...)


とのことらしい。・・・目を逸らしながらだけど。

 その為、(他は知らないが)魔法のことを考える時間は、日によって違っていた。

 日によっては魔法の本と1日中にらめっこをしていたり、逆に家の中を歩き回って母さんに見つかり、1日中鬼ごっこをしている日もあった。


 そんなある日、部屋で魔法の本を読んでいると父さんが大きな箱を持って部屋にやってきた。・・・母さんを連れて。

 俺は勉強のために座っていた椅子から飛び降り、臨戦態勢をとった。


「いや、これは女性服とかじゃないから...」

「信用できないのだけれど」

「本当よ〜。そ・れ・に〜ほら!」


 母さんが大きな箱の中から宝石のような赤い石を取り出す。


「何それ?」

「これは、杖石(じょうせき)というものだよ」

「杖石?」

「そう。杖石は魔法を使う者にとって最も大切な物なの」

「杖石は持ち主の持っている魔力を用いて魔法を発動するための石なんだ」

「ヘぇ〜。こんな石ころがね〜。じゃあ、この石ころを杖につけて完成ってこと?」

「いや、そんなことをいちいちしなくていい」

「え?どういうこと?」

「実はな、この石自体が杖を構築するだ」

「え!?嘘!?」


 そんなこと有り得るのか!?

 ひょっとしてこれ、あの白い魔王の心とかじゃないよな!?最終的にビーム打つあれじゃないよな!?


「まぁ、その人イメージの仕方によって杖にも剣にも形を変えるんだがな」

「ちなみに私は指揮棒、お父さんは右手につけるガントレットよ♪」


 2人の話を聞く限りでは、確かに1人1人杖の形が違うみたいだ。


「それで?こんなに杖石を持ってきたのには意味があるんでしょ?」

「さすが、鋭いな。これは今度行われる杖契約式でお前に渡す杖石をこの中から選ぼうと思ってな」

「ああ、なるほど。で?どうやって?」

「1つづつ触って確かめるんだ」

「へ?この数を?」


 箱の中には、数えきれないほどの数の杖石が入っていた。


「大丈夫よ〜。石が淡く光を放つのがあなたにあった杖石だから♪」

「なんの解決にもなってないのだけれど...。」


 しかし、ほかに解決策がなかったため1つ触り確かめていくことにした。

 この作業で1日使ってしまうとは思ってもいなかった...。


 *


 そして、杖契約式の日になった。

 俺は杖石を父さんから受けとるため、如何にも魔法使いと呼べる装束を執事長であるアランさんに着付けてもらった。


「よくお似合いです。お坊っちゃま」

「ありがと。アランさん」

「ありがたきお言葉でございます」

「アランさんは身内だけで行われるとはいえ、今回の催しには出席するんですか?」

「はい。執事としての仕事としてですが、お坊っちゃまの勇姿をこの目でしかと拝見させていただきます」


 アランさんと杖契約のことについて話していると、

 コンコン

と軽く扉を叩く音が部屋に響いた。

 そしてゆっくりと扉が開くと母さんが部屋の中に入ってきた。


「ハク〜。準備は...あら〜♪とてもよく似合ってるじゃない♪」

「そう、かな?だったらよかったよ...」

「フフ。さあ、そろそろ会場に向かいましょう。お父さんがきっと待ちくたびれているわ」

「わかった。それじゃあアランさん。また後で」

「はい。頑張ってくださいませ。お坊っちゃま」


 アランさんに後で会うことを伝え、俺は母さんと一緒に部屋を出て会場に向かった。


 *


「ドラケイル子爵!第一王子!ハク・ドラケイルのご入場!」


 催しが始まり、この家の王宮の間の扉が結婚式さながらのテンションで開く。

 俺は俯いていた頭を上げ、まっすぐ、父さんのいる王座に向かってゆっくりと歩く。


(あれが、ドラケイル子爵の息子...)

(あの雰囲気からして、なかなかしっかりとしたお子さんなのだろうな)


 あたりから微かではあるが喋り声が聞こえてくるが、俺は特に気にすることなく王座に歩いてあると、ふと父さんの顔が目に入った。

 父さんの目頭には僅かに涙を浮かべていた。

 俺はそんな父の表情に緊張がほぐれ、僅かながらの呆れと感謝をした。

 王座についた俺は()の目の前で片膝をつき、跪いた。

 それに答えるように父は立ち上がり、あの時見つけた杖石を持った手を高々と上げ、


「我らが誓いと誇りをここに!」


そう言って、父は手に持っていた杖石を俺の方へとゆっくりと突き出し、俺自身は手を合わせ、ちょうど父の手が両手の間に来るように手を挙げた。

 そして、父は杖石を俺の手に置き、腕を引っ込めた。

 俺は杖石が俺の手に置かれたことを確認し、杖石を発動する呪文を唱えた。


「汝、我が呼び声にに応え、

        我が望む形へと姿を変えよ!」


 魔力を込めながら呪文を唱え終えると、杖石は光に包まれ、そしてその光が治ると杖石は見たまんまの杖の形へと変化した。

 俺は杖となった杖石を両手で掴み、ゆっくりと立ち上がった。

 杖石を両手から右手に持ち替えて、そのまま後ろ振り返り、杖石高々と掲げた。


「我が杖よ!我が力を具現化し!

          その光を放ちたまへ!」


 そう言うと、杖から黒き威光が放たれた。

 会場から大勢の拍手が湧き上がり、俺の杖契約式は幕を閉じた。

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