転生完了 人生一から再スタートです
ガチャ!
しばらく2人を待っていると、2人が出て行った扉からエレナさんだけが戻って来た。
なんだかとてもスッキリした表情なのは気のせいではないだろう。
「お見苦しいところをお見せいたしました。申し訳ございません」
「う、ううん。気にしなくていいよ」
もともと原因は俺にあるわけだし・・・。
「それで、俺はどうしてここにいる・・・この場合は眠っていたが正確かな?それを教えてくるか?」
「わかりました。それでは、もう少し落ち着ける場所でお話いたします。そして、彼らやその後のことについても」
「(彼ら?)わかった。それじゃあ、案内してくれぇ!?」
「?どうしました?」
「え!?い、いやいや!なんでもないよ!」
話をするということで俺はエレナさんに近づくと、俺はあることに気付いた。
エレナさんの服だ。エレナさんの服装はメイド服だ。初めて見たときは『よく出来たコスプレ』かと思ったが、やはり神様の世話係とのこともあり、振る舞いは見事なものだと思った。
そんなエレナさんのメイド服の袖口に先程はなかった赤いシミが付いていた。
考えられることは、神様を連れて部屋を出て行った時だろう。おそらく、その時についたのだろう・・・。
き、きっとトマトジュースか何かなんだろう!そうだ!そうに違いない!
・・・。
俺は深く考えないようにした。
エレナさんも俺の反応に疑問符を浮かべたが深く追求はしなかった。
俺だって命は惜しいのである。
*
エレナさんに連れられて部屋を出ると、部屋と同じような白い廊下だが、壁にはいくつもの扉があった。
「こちらです」
エレナさんは真っ直ぐ、向かい側にある扉に歩きはじめ、俺はその後を追った。
俺たちが扉の前を通り過ぎようとすると、扉の上に立立て札が付いており、それには『司書室』と書かれていた。その他にも『資料室』や『調理室』、『娯楽室』なんかもあった。
(へぇ〜。以外に部屋分けはしっかりしてるんだな・・・)
部屋の立て札を見ていると、1向かい側にあった1番奥の部屋にたどり着いた。ただ、左側にある何故か鉄格子で出来ている牢獄のような部屋と右側にある豪華な扉が気になった。
鉄格子の方の扉の立て札を見る。
『神様(笑)の部屋』
・・・とてつもなく神様を不憫に思った。
逆に豪華な方の扉の立て札を見る。
『絶対神の部屋』
もはや意味がわからなかった。
*
1番奥の扉をを開けると、そこにはどこまでも雲の絨毯が広がり、果てが見えない程の雲海と、質素な六畳一間の畳の部屋が(部屋と言っても壁も天井もないが)雲の上に浮いており、その中心には卓袱台が置かれていた。
その部屋には、ボロボロの神様をはじめ、2人の男性と3人の女性いたが、学年人気が高かろうイケメン男子となかなかのスタイルを持っている可愛い系女の子1名づつが神様の状態にオロオロしており、眼鏡をかけた図書委員のような女の子は我関せずと言っているように本を読んでおり、鋭い目をした俺様系の男と学校で『お姉様』と呼ばれそうな美形女子が図書委員さんにナンパをしており、神様はまるで植物の自爆でやられた地球戦士のような格好で倒れていた。
何?このカオス・・・?
エレナさんは部屋に入ると神様の胸ぐらを持ち、そのままビンタをした。
「エ、エレナちゃん!どうしてそんなボロボロなのになんでそんな追い討ちをかけたの!?」
「・・・持っている人にはわかりません・・・」
「えっと・・・。ど、どうしてにらめ付けてるの・・・?」
エレナさんは人を睨み殺せそうな目で女の子を睨み、睨まれた女の子はその視線(死線?)に後ずさる。
俺は、卓袱台の空いているところに座ると、女の子に視線を送るもう1人に気が付いた。図書委員さんだ。
女の子はその視線には気が付いていないが、エレナさんと同じような視線を彼女のある一点に送っていた。
(まぁ、確かに2人とも胸が小さ)
「ハク様?何をお考えになられたのですか?」
「い、いえ。何も考えていませんよ。アハハ」
「そうですか・・・。ツギハアリマセンヨ」
「か、かしこまりました・・・」
次からの考えごとには気を付けよう。それが今日の教訓となった。
*
その後、神様は目を覚ましたが、顔はボコボコに膨れ上がり見るに耐えない状態だったが、数分後には元の顔に戻っていた。
「それでは、話をするとするかのう」
「はぁ?そんなことする必要があるのかよ?どうせ、この俺様がいれば他の奴らなんて関係ないだろう?」
「いや、でも雄二?彼はさっきの説明を聞いていないんだから、話や説明をしなくちゃいけないだろ?」
「は!そんなの俺様には関係ないね!」
「で、でも!何も知らない人にちゃんとお話をしなくちゃいけないじゃないかな?」
「それに、隼人くんも言ったように僕たちもその先の説明はまだされていないんだ。ここはお爺さんの話を聞くべきじゃないかな?ダメ男くん?」
「ああん?」
「うるさいです。特に、烏丸君とビロードさんは少し静かにしたください」
「飛鳥も少し落ち着いて」
「う、うん」
「これは済まない。ミス・綾乃。害虫がやかましくてね」
「ッチ!」
「・・・」
本の数分・・・いや、数秒でこいつらの性格がわかった気がした。
雄二と呼ばれた俺様系の男は見た目通りの自分主義の男だった。
ビロードと呼ばれた美形女子はおそらく男性が嫌いなのか、もしくは同性愛者なのだろう。
綾乃と呼ばれた図書委員さんは、基本我関せずの態度なのだろうが自分にマイナスになることについては口を挟むのだろう。
飛鳥と呼ばれた女の子はこの中で最も自分がない人物だろう。他人に左右されやすい上に他者の主張を簡単に受け入れてしまっている。
そして、隼人と呼ばれた男。この中で最もリーダーやまとめ役に向いている人だろう。そしてこの中で最も不安要素が高い人物だ。
「・・・とにかく、話の続きをするぞい。ハク君」
「うん?なんだ?」
「まずはじめに、儂のミスにより君を死なせてしまった。本当か申し訳ない」
「・・・はぁ・・・」
「粗茶ですが」
「あ、どうも」
俺はエレナさんからもらったお茶をいただく。
渋みが効いている美味しいお茶だった。
「・・・なんか、すごい落ち着いておるのう」
「だって実感ありませんし。というか、俺自身どういう風に死んだのか全く覚えていませんしね。それに起こってしまったことをどうこう言うのは筋違いというか何というか・・・。すまん。うまく説明できそうにないわ」
「そうか・・・。それで、君たちに集まってもらったのは他でもない。お主たちには、これからとある世界に転生してもらう」
「よっしゃ!待ってたぜ!」
「しかし、お主らが漫画やラノベにすでに出てきた世界ではないがのう」
「へぇ〜。そうなのか」
「まぁ、どこに行ったって俺様が守ってやるぜ。綾乃、飛鳥」
「ふん!貴様風情が守れるわけないだろ。ここは僕に任せたまえよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・続きを話しても良いかのう?」
「あ、はい。すみません。どうぞ続けてください」
「話止めてごめんな。神様」
俺と隼人と呼ばれた男は話を中断させてしまったことを謝罪し、神様もそれに答えるかのように話を再開する。
「おほん!お主らに行ってもらう世界は元いた世界と比べると、まだまだ発展途上の世界じゃな。ほれ、お主らの世界でいうところの中世時代に近い状態じゃのう。まぁ、全てがあの時代と同じというわけではないがのう」
「そういう世界では魔法という概念があるものが多いですが、その世界ではどうなのですか?」
「ああ、その世界は魔法という概念はある。じゃが、魔法が使えるかどうかは本人次第じゃ」
『・・・』
俺たちは神様の言葉に真剣な表情になる。
「・・・まぁ、そんな硬い表情をするでない。それでは転生を始めるとするかのう。最初は 隼人君から始めるぞい」
*
俺を除いた全員が転生を完了し、先程まで賑やかだった部屋が今では俺1人だけとなった。
「あとはハク君だけか・・・」
「なあ、神様。1つ聞いていいか?」
「うん?なんじゃ?」
「どうして、俺が選ばれたんだ?」
「?どういうことじゃ?」
「・・・俺以外の連中を見てみると、確かに色々と問題がありそうなやつばかりだ。特に、烏丸・・・だっけか?あいつなんて、すぐに問題を起こしそうないい例だ」
「・・・そうじゃな・・・」
「それに比べて、飛鳥って子の様な性格とは、かけ離れてる。俺だって、烏丸の様な自己中タイプだ」
「・・・」
「いくらミスだルールだと言っても、天国もしくは地獄に送るという選択はできた筈だ。でも、それをしなかった。何か理由が」
「『あなたは《ハク》』」
「へ?」
「『凶暴な龍なんかじゃない。邪を祓うを払う』」
『優しい龍。それがあなたよ。ハク』
「・・・」
「君は、交通事故に巻き込まれて亡くなった。しかし、君は本来なら死ぬことはなかったのじゃ」
「はあ?ならどうして、俺は死んだんだ?」
「実はのう、あの事故では全くの別人が無くなるはずじゃった。年端もいかないまだ幼い女の子じゃ。その女の子とその家族に向かって車が突撃していった」
・・・そうだ。あの時・・・
*
あの時、俺は夕飯の買い出しで出かけていて、横断歩道で待っている時、俺はあの家族の姿を見ていたんだ。
女の子はとても母親であろう人の手を繋ぎ、嬉しそうな表情をしていた。
そんな時、信号を無視してこちらに向かって車が飛び込んで来た。
ほとんどの人はその場から逃げるが、後の女の子だけは足がもつれ母親から手を離し、その場にこけてしまった。
*
「君はそれに気づき、すぐさま女の子をお母さんの方に投げ飛ばし女の子を助けることはできた。しかし」
「代わりに俺がその車に引かれて死んじまったってことか・・・。あの助けた女の子は無事だったんだな?」
「ああ。そこは安心せい」
「そうか...」
「・・・」
「でも、安心した」
「?!ど、どうしてじゃ?!」
「・・・俺はその子を助けたいって思って行動したんだろ?なら、俺は俺らしく死んだ。それに後悔が全くないと言った嘘だけれど、それでも俺は自分を貫けた。ならば、さほど後悔は残ってないよ」
「・・・正直、お主のそんな性格だからこそ選んだ理由じゃ」
「はあ?」
自分の行動に納得していると、急に神様が俺を選んだ理由を喋り出した。
「お主は、自分自身『別に死んでも構わない』そう思ってあるのではないか?」
「な!そ、そんなこと...」
「『全くない!』と自信を持って言えるか?」
「そ、それは・・・」
「だからこそお主を選んだ。お主に気付かせるためにのう」
「・・・気付かせるってなんだよ」
「それは自分で気付かいかんのう」
「・・・わかったよ」
俺は卓袱台に手をつけ、頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「うむ。それでは、始めるぞ!」
神様がそう言うと、視界がどんどんと光り輝いていき、視界は真っ白になった。
*
先程まで話しておったハク君を転生させ、ようやくひと段落じゃわい。
「ハク様は行かれましたか?」
そう言って、エレナ君が扉から顔を出してこちらを覗いていた。
「ああ、今しがた送り届けたいところじゃ」
「そうですか...」
エレナ君はそう言って先程までハク君がおった場所に座る。
「しかし、大丈夫ですかね」
「大丈夫じゃろう。ハク君なら、なんとかやっていけるじゃろうて」
あの性格を直すのは、苦労しそうじゃがな。
「ところで、ハク様の転生特典はなんなのですか?」
「ああ、それはのう・・・」
「・・・まさか」
「しまったああああ!!!」
*
いや、まぁ確かに。異世界なのはわかるよ・・・。
けどさあ・・・。
「あう!」
人生一から再スタートは色々とおかしいだろうがああぁぁ!!!