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貴族メイドと毒殺未遂事件

 あれから、案外あっさりことが進んでいった。

 ゴブリンは貴族としての位を失い、犯罪者として投獄されることなった。今まで侵略のような行動をして手に入れた領地は一時的に各領地主と協力して世話をするということになったらしい。

 司教には昼頃に、逮捕状を持った兵士達が教会領地・イール向けて出発していた。

 アーバメも同じく貴族としての位を失った。アーバメもゴブリンと同じく投獄され、領地も各領地主と協力することになっているらしい。

 ヴェイランの連中も捕まったがり、詳しい事情を聞くそうだ。

 そして驚いたことに、おっさんがあっさり目を覚ました。女王様曰く、もともと体は丈夫だったらしいのだ...。宮廷魔導師が体を検査して見たところ、むしろ健康体だといわれ、ここまで丈夫だと人間なのか色々疑いたくなってしまった。まぁ、目覚めたのなら良いことなのだろう。

 おっさんが目を覚ましたことにより、事件解決に貢献したためか、もしくは事件を解決したためかわからないが、俺らの家の爵位が一つ高くなった。

 でも、何より嬉しがったのがファレード家の異端者ではなくなったことだ。ゴブリンの自供により、ファレード家の異端者というのがでっち上げだとわかり、おっさんのはたらきで異端者ではなくなった。アスカはそのことを理解するが遅れたが、理解し終わると涙を流し、喜んだ。ただ、アスカのお父さんはまだ行方が分からないため、まだ油断を許さない状態だ。


 昼過ぎ、アトラス王国から国王がやってきた。

 その姿は、大柄の虎が服を着ているような人だった。

 おっさんはまず、昨日あった事件について説明した。話していくうちに、どんどん険しい表情になっていった。ある程度話を聞くと、アトラス国王は俺に手が届く範囲まで近づき、


「・・・頑張ったな」


 と頭を撫でてきた。


 そして現在。

 エルレシア王国とアトラス王国の友好パーティーが執り行われていた。

 会場は多くの貴族がワイワイと賑わっている。

 俺はというと...


「へ〜、やっぱり本物なんだ」

「あ、当たり前です。ところでこれ、いつまで続くんですか?」


 セレナさんの耳を触っていた。

 どうしてこうなったかというと、パーティーが始まってしばらくうろうろしていると、前から歩いてくるセレナさんがいた。セレナさんに話しかけると、セレナさんは深々と頭を下げ、お礼を言われた。気にしてないと答えるが、納得がいかないのか何かお礼をさせてほしいと言われたので、俺はその耳を触ってみたいと言い、触らせてもらっている

 触り心地ははっきり言って動物そのものだ。とても柔らかく触り心地が良かった。


「ありがとうございます。大変良かったですセレナさん」

「そ、それなら良かったです...。それでは私は行きます。失礼します!」


 セレナさんは顔を赤くしてお辞儀をすると部屋の中心に向かって歩いていった。


「どうしたんだ?いったい?」

「さあ〜。きっと耳を触れて恥ずかしかったんだと思うよ〜」


 振り返ると、いつものメイド姿ではなく綺麗なドレスに身を包んだアスカがいた。


「へえ〜、似合うじゃん。綺麗だよ」

「ふぇ?!そそそ、そうなんだ。・・・かった」

「?なんか言ったか?」

「ううん。なんでもないよ!それもより、ハク君。テラスの方行ってみよ!」

「ちょちょ!引っ張るなって!」


 アスカは俺の手を引きながらテラスの扉を開く。

 テラスには誰もおらず、空から覗かせている月明かり俺とアスカを照らしていた。


「つ、月が綺麗だね!」

「ああ、そうだな。確かに、今日の月は綺麗だ」

「う、うん」


 俺達は互いに黙り、ただ月を見ていた。

 すると、アスカ話を切り出した。


「・・・あのね、ハク君。私、伯爵の位が戻ることになったの」

「おお!よかったじゃないか!」

「う、うん。でも、すぐに爵位は返還出るものじゃないから。もう2、3年はかかるんだって」

「2、3年か...それでもよかったじゃないか!おめでとう!」

「・・・うん。ありがとう。・・・はぁ〜。よし!」


 その言葉と共に、アスカは俺の方に向き、真剣な眼差しでこちらを見た。


「・・・どうした?」

「ハク君にお願いがあるの」

「別にいいけど...。なんだ?」

「・・・私を貴方専属のメイドにしてほしいの!」


 ・・・は?


「い、いやいや!いきなりどうした!」

「何!私が、私を助けてくれた命の恩人に仕えたいと思っちゃいないの!」

「いや別にそういうわけでは...」

「じゃあどういうわけなの!」

「う〜ん...」


 なんと言おうか悩んでいると室内が湧き立つ。きっと、友好パーティーが本格的に始まったのだろう。

 俺は室内から目の前にいるアスカに視線を戻す。

 その目は真剣で、強く俺を見つめていた。


「・・・俺なんかでいいのか?」

「!ハ、ハク君がいいの!ハク君じゃないとダメなの!」

「どうして?」

「そ、それは...キ...と、とにかく!私は貴方に残り期間は仕えていたいの!」


 アスカの真剣な眼差しに、俺は心打たれた。


「・・・わかった」

「へ?...」

「いいぞって言ったんだ。・・・これからよろしくな。アスカ」

「・・・うん!」


 アスカの表情はパァァっと明るくなり、これまでの中で最もいい笑顔で頷いた。

 俺は、彼女のこんな姿につられるように月明かりの下一緒に笑い合った。

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