転生準備
ふと目を覚ますと俺は白い部屋のベットに横たわっていた。
「ここは・・・」
俺は不安定な意識で体を起こし、周りを見渡す。
周りには俺が横になっていたベットと同じものがいくつもあるが、その中には誰もいない。
順当に周りを見渡していくと、すぐ真横にメイド服を着た一人の女性が言葉を発さずに立っていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・うわぁ!」
俺は女性の存在に驚き、ベットから転げ落ちそうになるがどうにか転げ落ちなかった。
「あ、危ねぇ・・・。えっと、君は?」
「・・・」
「えっと・・・」
「・・・」
女性は一言も言葉を話さなかった。
どうしたものかと、悩ましていると女性が背後から、
[お目覚めですか?]
と書かれたプラカードを取り出した。
「(一体どこからあんなものを・・・)えっと、はい。すみません。ベット借りてしまって・・・」
俺がそう言うと女性はプラカードを回し、裏側を見せる。
[いいえ、お気になさらず]
「・・・そう言ってもらえると助かります」
[一寝入り500円です]
「・・・へ?金取るの?」
[貸してあげたのですから、当たり前でしょう]
「え、えっと・・・、今持ち合わせが無くて・・・」
[ならば仕方ありませんね]
「す、すみません」
[十一でいかがでしょう?]
「もう一種の詐欺だよなそれ!」
なんだこの人!
確かに勝ってベットを借りたのは悪かったけれど、それで500円って!しかも十一って!詐欺ほどがあるだろ!
そう思っていると俺達の近くの扉が開き、一人のご老人が入ってくる。
「お〜い、エレナ君。ハク君は目を・・・何をやっとるんじゃ?二人とも・・・」
「いや!これはその!」
「はい。先程目を覚ましました」
「あんた喋れるのかい!」
「はい。喋れないとは一言も言っておりませんので」
「だったら最初からプラカードを使うな!」
「すまんのう。エレナ君はいたずら好きでな。許してくれんかのう」
「・・・別に怒っているわけではないから構わないけれど・・・。で、あんたは?俺のことを知っているみたいだけど?」
俺は手を額に当てながら、目の前にいる女性から意識を逸らし、ご老人に問いかける。
「そういえば、自己紹介がまだじゃったのう。九十九 白龍君。儂は最高神。これでも神様をやっておるものじゃ。この子はエレナ君。まぁ、儂の世話係の様なものじゃ」
「はじめまして、ハク様。機械仕掛けの神のエレナと申します。」
「・・・はあ?神様?」
この人は何言ってんだ?ひょっとしてもうボケがかなり酷くなってるとか?
「ボケとらんし、そこまで酷くないわい!」
「神様・・・色々と終わってますね」
「エ、エレナ君?そこまで辛辣に言わんでも・・・」
・・・なんだか、一種のコントを見せられている気分だ。というか、
「あれ?俺、今声に出していましたか?」
「いや、出しとらんよ。儂がお主の心を読んだだけじゃよ」
「・・・」
「そ、そんな疑いの目で見るでない!ええい、ならば、何か心の中で問うてみるのじゃ!儂はその問いにすぐさま応えようではないか!」
「は、はぁ・・・」
って、いきなり言われてもなぁ・・・。う〜ん、そうだな。
(一人の少年が大海原に旅立ちました)
「海賊皇においらはなる!」
(百裂拳を打ちました)
「お主はもう死んでおる」
(有精卵とは?)
「ゴムを付けていない時の卵だ!」
(エレナさんの胸は?)
「断崖絶壁!」
「・・・」
(・・・あ、やべぇ)
「?何がじゃ」
俺はそう思い、ベッドから降りて2人・・・というよりもエレナさんから離れる。
「神様・・・」
「?どうかしたのかのう?エレナ…君…?」
神様は隣にいるエレナさんに呼びかけかられ、横にいるエレナの方に顔を向けと、そこには只ならぬ雰囲気を放つエレナさんの姿がそこにはあった。
「先程の断崖絶壁について、少々お話があるのですが・・・よろしいですか?」
「い、いや〜。エレナ君。これには理由がああああ!!!」
エレナさんは神様の返答を一切聞かずに頭を鷲掴みし、そのまま引きずって、先程神様が入って来た扉に向かっていった。
「いたいいたいいたいいたいいたい!!!ちょ、ちょっと待って!エレナ君!今のは言葉の綾で!それに!誰も君のこととは一言も言っていないじゃないか!だから、力を強めながら引きずっていくのはやめ」
ガチャ!バタン!
エレナさんが神様を引きずりながら、神様が入って来た扉に入ると途端に神様の声が聞こえなくなった。
(・・・ごめんなさい・・・)
俺は手を合わせ、合掌しながら心から謝罪をするのだった。