グランの焚き火
放課後の学校で、校庭の掃除を終えた少年少女達は、一箇所に集めていた。
その様子を管理室から見ていた一人の監視員が、子供達の元へと現れた。
「よく枯葉を集めてくれたね」
「グラン、いつものあれ、やってよ」
グランと呼ばれた監視員はそっと枯葉に向けて手を差し出す。風が舞う。一瞬のふわり。
そして。
「わぁ、すごい。あったかーい」
「お芋が残っていたからね、焼き芋でも焼いてみようか。今日は特別だ」
グランが背を向けると、子供たちはにししと微笑み合いハイタッチを交わす。
煙が炊かれ、芋が焼けると、子供達はその手で芋を転がしながら、お互いの大きさを確かめ合う。
「なんかクリスの方が大きい。ボクのと、とっかえて」と愛くるしいイガグリ頭の男の子。
「嫌だね、そんな変わんねぇよ、アルパ自分の食えよ」と銀色の髪の凛々しい顔立ちの男の子が突き返す。
二人の少年達が芋を両手に睨み合う、その傍らで少女二人が美味しそうに芋を頬張っていた。
「ユアちゃん、ほっぺにお芋がついてるよ、とってあげる」とお団子髪の金色髪の女の子がそっと手を伸ばす。
「ありがと、ニコ」と桃色髪のショートヘアの女の子が微笑む。
クリスとアルパはさらなる芋論争を繰り広げていた。
「ととととっとと、その芋交換しやがれですよ」
「絶対、嫌だね。それにもうかじってるし、この芋は俺のもんだ」
様子を見ていたグランはふっと微笑して二人の頭を押さえつける。
「こらこら、喧嘩するならお芋は没収するよ」
「没収反対です。反対運動を起こすよ、グラン。それでもいいのですか」
「そういうムーブメントってお前一人で成立するもんなのか」
「成立するでしょう」
「成立するでしょう、ってお前どういう立場からその発言してんだよ。その元の発言してるのお前だろ」
「そうともいう」
「お前と会話してると宇宙人と会話してるみたいだな」
クリスとグランの小気味の良い会話に苦笑するグランと少女達。
「アルパはまだお子様だからね」
「なんですよ、ニコ。ニコだってお子様でしょ」
「あたしのどこがお子様なのさ」
「お子様もいいとこ、いいとこいいとこスーパーお子様ランチですよ。あ、ニコ口元にお芋がついてますよ」
「ニコ抑えて、ミイラとりがミイラになってるよ」と突っ掛かるニコを今度はもう一人の女の子ユアが片手で抑える。
「ユアが一番大人です。ボクはそんなユアが一番好きですよ。だから芋ください」
スパンとクリスがアルパの頭をひっぱたき、もみ合い転げ回り始める少年二人。
そんな賑やかな喧騒をグランは優しく見守っていた。