焼け付いた凍傷
その男は苦しんでいた。
ただ無造作に転がり、悲鳴を上げる。
「助けてくれ、金なら出す。何か気に触ったことをしたなら心から謝る」
そういうことではないんだ。
焼け焦げた臭いが鼻腔をくすぐる、この臭いが創造力を掻き立ててくれる。
「俺が何をしたんだ。ただ街ですれ違って肩がぶつかっただけじゃないか」
そう、ただそれだけの関係。だから、都合が良かった。
「頼むよ、金ならいくらでも出す。命だけは助けてくれないか」
幾度、この命乞いを聞いてきただろうか。そして、一度でも耳を貸したことがあっただろうか。
「助けて・・・・・・くれるのか・・・・・・」
そっと、転がった男の腕を取って支える。そう、これで最後だ。
「・・・・・・恩に着る」
男は異常に気づいたのだろう。その手が帯びた冷気に。
そう、この後がいつも好きなんだ。
「冷たい・・・つめたい!? なんだお前、どこから! ああぁぁぁぁぁ!!!」
とある小さな街の翌日のニュースではある一人の中年のサラリーマンの死が報じられた。
死体は、全身に火傷を負い、そして凍傷を負っていた。
葬儀は身内でささやかに、そしてしめやかに行われたという。