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退散

 突然の事態に、全員があっけに取られている。


 周りから突き刺さる(オレ)を咎めるような視線を無視して、塩の中から光る石のカケラを拾いながら、長身の男へ振り返った。


「あ、あなたは、く狂ってる。に人間だとわ分かって殺すだなんてっ。こっ越谷代表、ひっ被害者の保護にし失敗しました。かっ帰りまましょう」


 長身の男が、隣で放心していた越谷代表の背を押す。


「くっ、貴様覚えていろよ、明らかに殺人だ。後で正式に逮捕状を取って来るからな警察権力を舐めるなよ」


 越谷代表が、踵を返すと、SUVの方へと歩き出した。


カピバラ10(カナン)、やり過ぎだわ」


 エリカが焦った顔でこちらを見ている。社長は面白そうにニヤニヤしていた。


「ふんっ」


 (オレ)は、唾を吐き捨て、エリカを手でどかした。


「お前ら逃げられるとでも思っているのか? 特にそこのノッポ、てめーだよ」


 長身の男がこちらを振り返る。


「わっ私達は、り理性のあるに人間だ、ちちゃんとじ人類ときょっ共存をすするため、ここうして、協力している。ほっほっといてくれ」


「へえ? 理性ね。てめえのその吸盤だらけの触手、どっかで見たことあるんだよなー、どこだと思う?」


「なっ何を言っている?」


「何しらばっくれてんの? お前の触手で無残に引き裂かれた親子の死体を俺は見たぜ、その特徴的な吸盤の跡もな。お前らシモベは、しょせん人食いだ。生かして返すと思ったか?」


「ぐっ」


 越谷代表がうなった。俺を検挙すれば、人食いを飼ってる事を認める事になる。必死で何と言い訳するか考えているのだろ。

 他の奴らは、俺の殺気がダダ漏れになってるのに反応したのだろうか、皆真っ青な顔になっていた。肝心の長身のシモベは、逆に無表情になっている。


 真っ青な顔で立っていた越谷代表が、必死に声を振り絞って、俺に喚き出した。


「きっ貴様、本気で警察と事を構える気か? 例え自衛隊に関係しててもただでは済まんぞ」


ふんっ、小物め。脅せば黙るとでも思ってんのか?


「くくくっ、中途半端な脅しだな。この場で綺麗さっぱり始末をすれば、何も証拠は残らないのに、おめでたい奴だ」


 隣の社長もカラカラと笑っている。どうやら彼女も止めるつもりは、零のようだ。


 (オレ)が一歩踏み出そうとした時、突然後ろから羽交い締めにされた。


「わわわ、駄目、駄目よカピバラ10(カナン)、落ち着いて。社長も笑ってないで止めてください。うわっ引きずられる。皆止めるの手伝って。ああ、そっちの警察さん、さっさと逃げてください、この場から消えて」


 後ろから羽交い締めにしてきたのは、エリカだった。班長が(オレ)を止めている間に、D-警備保障の奴らは、走ってSUVに飛び乗り、タイヤを鳴らして走り去っていく。



◆◇◆


「ふざけんな、てめーら離せ、ぶっ殺すぞ」


 頭の中が怒りで支配されている、ふざけるなよ、アイツラを皆殺しにできなかった怒りが、(オレ)を止めてる隊の奴に矛先を変えていた。


「あああ、もうしょうがない、俺様カナン君を鎮めるわよ、急いでっ」「「「はいっ」」」


 エリカの声に、少女達が(オレ)の前に飛び出て並んだ。


「カナンくうーん、コレ観て落ち着かなあかんよー、はいっ」

「カナンきゅん、ボクのも観て」

「あ、兄様、は、恥ずかしいけど、観てください」


 少女達が、制服のスカートをめくっていた。


ツツツー

 温かい物が鼻から出て口の上を伝う。(オレ)の顔面に血が登ってくるのを感じる。


「ほーれほれ、カナン君、この感じはどうかしらあ」

プニョンプニョン

 後ろからは、エリカの巨乳が、(オレ)の頭を両側から挟んでくる。


「なななあああああああ、お、お前ら、恥じらいってもんがあああ、特にさくらー、お前のは児ポってる、児ポってるからアウトだ!」

「エへへ〜、僕のはスパッツだよーセーフ」桜は、スカートをピラピラさせながら、悪戯っ子ぽく笑っている。

「なら良し……って、良くない。しっしまえ、お前らやめろー」

 白色が眩しい。血圧が上がり鼻血が勢いよく吹き出している、目の前が霞んできた。


「ほーれほれ、俺様カナン君、可愛いわねえ、このままオネンネしてちょうだい」


「カナン君、このまま眠ってええんやでー」


「カナンきゅん、こっちこっちー」


「兄様、よ、良かったら触ってもいいのだぞ」


 あ、ああ、意識が飛ぶ……


「くっ……お前ら覚えてろよ」


「何言ってるの、俺様カナン君、毎回最後の事は覚えてないじゃない、さっさと眠りなさい」

プニプニプニ


「くそー」


 (オレ)は、絶叫と共に意識を手放した。



◆作戦終了後のハイエース◆


「……ソイバー買い占めたし、これぐらい有れば十分かな、コーヒーとお茶っ葉は足りる…と。あ、粉末スポーツドリンクまだあったかな? うーん多分足りるか……いいや。ふう、疲れたあ、あ、穂の香ちゃん、私ピザまんね」


「班長どうぞ、私は肉まんで、それにしても、久しぶりに俺様カナン君出てきて焦りましたわあ」

ガラァッ


 コンビニの前に停めたハイエースのドアを開けると、中から3人分の寝息が聞こえてくる。運転席では、さっさとコンビニから出てきた社長がコーヒーを飲んでいた。

 月島エリカ、田主丸穂の香の2人が後ろをチラリと見ると、サラの膝枕でカナンが寝ている。


「そうね……でも相変わらずチョロかったわね。クスッ」


 カナン君の寝顔は、高校生なのに可愛い。


「フフフ、まあ、あの程度で退散させる事ができるんやし、何とかなりますねえ」


「うん。それより、今夜一晩に4箇所も幽世(かくりよ)が現れるだなんて、ダンジョン(あっち)の活動が活発になってきてるわ。今度のような強いシモベの出現の後には、大きなクエストも起きるだろうし、今のままじゃ大規模クエストには耐えきれないわよ、課題山積ね」


「はあ、えらい大変ですわあ」


プッ


 2人の会話中、オペレーター席のモニターが突然点灯。モニターに社長の顔が映っていた。


「お前ら、何呑気な事言ってるの? 特に穂の香、お前ジャム(給弾不良)からのリカバリーが遅すぎる。帰ったらダンジョン・クールの時間は訓練な」


 ダンジョン・クール……世界間の時間差(ダンジョン内の24時間は、現実側の1時間)を利用して、コントラクター(武装警備員)の深夜業務の直後は、ダンジョンのある宿泊施設に一度入って、丸一日のクールダウンタイムが与えられている。


「ふええ、社長、ほんま堪忍してくださいよお」


「桜の真似をしても駄目だぞ。まあ、次のクエストが、大規模クエストにならない事を祈ってるわ」


「はあ~」


「あ、私本部から非常召集かかったので、会議終わってからそっち行くから、後よろしくね」


「了解です、社長」


 ハイエースは、首都高を上野に向かって帰って行った。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

最初の章が終わったので、物語書く時に削ったここまでの設定とか裏話みたいな物を。


◆地獄の門について

物語の中で登場している地獄の門ですが、イタリアを代表する古典文学「ダンテ・神曲」をモチーフに、考える人で有名なロダンが作った地獄の門です。上野公園に入ってすぐ右、国立西洋美術館の外庭に設置されています、すごく迫力のある物が美術館のお金払わなくても見れるし、グーグルストリートビューでも確認ができるので興味ある人は、ご覧ください。

実物みると結構狭いので、戦車とか大きな車両が入れません、ダンジョンに運び込める物も色々制約が産まれます。


◆戦闘現場について

ミリタリーとかエアガンが好きな人なら、ピンと来る場所かもしれません。物語の中でサイドアームにガバメント1911を使うので、ガバメントならあそこだろうと決めました。エアガンメーカーのウエス○ン・アームズ渋谷店の真ん前です。


◆使用銃について

・サイドアームのガバメント1911ですが、イメージとしては、スプリングフィールド社製のカスタム銃を使い、マズル部分も延長してサプレッサー用のねじ切りがしています。マガジンも増量マガジンで10発の物を使い、特殊部隊が使うのを考え、ジャムらないようきちんと調整された物を考えています。

・メインアームに、クリスベクターを使っている理由ですが、物語の中でも一部問題を起こして、色々と問題もある銃です。それでも使ったのは、亜音速弾の45口径のサブマシンガンと言うことで選びました。それと、社長に米軍のツテがあるので45口径弾は、米軍経由で買うと安いからって社長のケチ理由もあります。

・幽世でSMGを使う理由ですが、裏設定として、幽世空間での街破損は、現実世界に影響を及ぼさないんだから、重機関銃の50口径キャリバーやM134ミニガンを車両の荷台に搭載して薙ぎ払えば、シモベ相手でもあっさり駆除できると思うのですが、警察が銃刀法との兼ね合いで高出力の銃器を持った他所の部隊が、都内をうろつくのを嫌い、ましてや、正式な司法機関じゃない民間軍事会社が都内で銃を持つ事自体警察と、ダンジョン利権を狙う東京都に嫌われて、大揉めした結果、アサルトライフルもアウト、拳銃弾を使うSMGが限界と政治決着した世界としています。

・銃のメンテナンスも、サプレッサーを着けて発砲すると、発砲煙が逆流してきて銃の中を通常弾よりずっと汚れるのでこまめに分解掃除しています。ベクターのロックピンを銃弾で押して抜き、簡単に分解できる描写とか、中の特殊な機構とか書こうと思いましたが、どう読んでも蛇足だったので削りました。



良かったら評価・ブックマークお願いします。

ここまで書いてみて読んでもらえてるのか分からなくて不安なので、何か反応があれば嬉しいです。


それでは、物語はもう少し続きます。

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