乙女ゲーム
ーーおい。どうしてこうなったんだ。
大きな姿見に映る自分の姿を見つつ呆然とする。そこには、見慣れた"俺"の姿はなく、2、3歳ほどの黒髪黒目の美幼女が映っていた。
幼いその姿でも、俺にはそれが誰かわかった。なんで、
「なんで俺が乙女ゲームの悪役令嬢なんだよーーーー!!!??」
そう。俺は気が付けば乙女ゲーム"暗闇の花〜一筋の光〜"の世界に悪役令嬢として転生していたのである。しかも役柄はベタなことにヒロインの腹違いの姉ユリアである。原作では、強すぎる魔力を持って産まれ幼い頃から家族からも疎まれていたユリアが妾の娘でありながら家族に可愛がられ、自分から婚約者を奪ったヒロインを嫌い、いじめた結果イジメが攻略対象にばれ、死刑もしくは国外追放エンドまっしぐらというものであった。
ーーそういえば、どうしても嫌いになれなかったんだよな。結局、ユリアは誰かに自分を愛して欲しかっただけなんだよ。
脳裏にユリアの処刑シーンが浮かぶ。
《わたくしは、誰でもいいからわたくしを愛してほしかった。ただ、それだけ。他の何も望んでなどいなかったの。》
ーーあれはかわいそうだったなぁ。
だか、それが我が身に降りかかるのは困る。
女に生まれ変わらされたことには神に文句の一つも言ってやりたいが、生まれてしまったものは仕方ない。むしろ赤ん坊スタートから記憶が目覚めなかっただけ感謝すべきだろう。おしめを変えられた記憶なんか覚えていたくない。
そうと決まれば話は簡単だ。決められた運命なんか変えてやる!!
そう決意してその日は眠りについた。
ーーちなみに、俺がなぜ乙女ゲームに転生したと分かったのか。それは、俺と妻がかなりのゲーオタで、妻に勧められてやったらどっぷりハマってしまったからである。
俺は悪くない。そもそも乙女ゲー男がやる場合も少なくないしな?無駄にストーリーが良かったのが悪い。
うん、そうに決まっている。てか思いたい。
ユリア…乙女ゲーム"暗闇の花〜一筋の光〜"に登場する悪役令嬢。ゲームの世界では不吉とされた黒髪黒眼とあまりに強い魔力のせいで忌み子のような扱いを受け、愛情を知らずに育つ。そのせいか、非常に愛に飢えており、周囲から無条件に愛を注がれるヒロインを妬みいじめた。それさえなければ心の優しい素直ないい子。