prologue〜神様転生?誰が女にしてくれと言った〜
ーとある火災現場ー
「二人共先に逃げろ!俺は後から逃げる!」
右足を怪我して動けない俺を必死になって助けようとする妻に生後間もない我が子を預け、叫ぶように強く言い聞かせる。
「頼むから、な?俺が約束破ったことないだろ?ーー必ず戻ってくるから」
これが最後だとわかっていてわざと、そう約束した。二人が火災現場から逃げたのを確認すると、ズルズルと体から力が抜けるのを感じた。
小さく、妻の名前を呼ぶ。
「ま、り……すまな、い…………」
だんだんと意識が遠のいていくのを感じながら俺が最後に見たものは、俺を助けようとする救助隊員の姿だった。
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気がつくと、俺は何もない真っ白な空間に一人で立っていた。
ーーおかしい。なぜ俺が生きてるんだ?しかも、足の怪我も初めからなかったように全てが火災が起こる前の状態に戻っている。
ん?なんだこいつ。いつの間にか目の前に十代、二十代くらいのヘラヘラ笑いを浮かべた男がいた。
「大丈夫かな〜♪ごめんね〜君にちょっと謝らないといけない事があるんだ♪あ、ちなみに僕は神様だよっ♪」
ーーまぁ、このムカつく喋り方のアホを締め上げて聞き出すか。
「…つまり、お前のミスで俺は死んだってことか?」
ニコニコ笑いながら自分のミスだとか言いやがる自称神様にアイアンクローをお見舞いする。
「痛い痛い痛い!!ごめん謝るからアイアンクローはやめてぇっ「麻理……すまない…………こんなアホの所為で俺が死ぬだなんて…」ねぇちょっと僕の話聞いてる?!」
「それでね?死んじゃったのは僕のミスが原因だから特典付きで別の世界に転生してもらおうと思うんだ♪
何か希望があれば3個までなら全部聞くよ♪」
…3個か。それなら
「容姿と環境は任せる。能力はチートで努力次第で上がるってことで。あと元の世界から俺の存在と記憶を消してくれ。後は特にない。」
「うん分かったよ♪ちゃんと消しておくね♪ちなみに別の世界はファンタジーだよ♪楽しんできてね♪他にもプレゼントを用意しておくからさっ♪」
「プレゼント?なんか嫌な予感がするが……まぁ貰えるものは貰っとく。」
「じゃあ今から扉を出すからそこから入ってね♪扉を開けたらスタートだよ♪」
そう言い髪、じゃない神が豪奢な扉を出す。
「ねぇなんか今僕馬鹿にされなかった?」
「気のせいだろ」
現れた扉の前に立ち、ドアノブに触れる。ゆっくりと扉を開けていくと、白い光が俺の体を包み込み、意識を溶かしていく。
「さよなら。本当は君は死ぬべくして死んだんだよ。それを知らせなかったのは僕のただのエゴでしかないのだけれど」
ーー最後に神が言った言葉が俺に届くことはなかった。
麻里…主人公の妻。主婦でありながらかなりのゲーオタ。主に乙女ゲームや格ゲーが好き。主人公にゲームを勧めた本人。事故の後子供とともに無事生還した。
神…主人公を転生させた本人(本神?)。毎回毎回転生する度にこんな感じで死んでいる主人公を哀れに思いかつその魂を慈しみ、特別にチート付きで転生させた。あのふざけた喋りはわざと。