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2話

 セルシア・クランブルクとは私の名前です。年はと聞かれれば指を三本見せて笑顔で答えます。今日は体調がいいので侍女のカーナと一緒に庭へ出て綺麗なお花をいっぱい摘もうと約束してるのです。


 肩ぐらいの長さの髪の毛を両サイドで軽く結ってそこに帽子を被り簡素な服に着替えればカーナと手を繋いで一緒に屋敷の庭へと出ればいつも上からしか眺めなかったお花を間近で見れて満足げな表情をする。このお花はこんな匂いがするんだとか、地面を見れば小さな虫を発見したりといつも新しい事がいっぱい。だからついついカーナにこれはなあに?といっぱい質問しちゃうの。いつも教えてくれるカーナは何でも知ってるみたい。庭師さんが綺麗にしてくれた庭を眺めるのも大好きだけど今日はちょっとごめんなさいと思いながら綺麗だなぁと思ったお花を小さな手で摘み取っていく。途中カーナがこのお花はトゲがあるのでダメですって注意してくれるのでセルシアの手は傷一つ付くことがない。



「できた!」


 両手いっぱいに持った花を見てセルシアは満足げに微笑んだ。その姿はいつも触れれば壊れてしまいそうな儚げな少女とは違いとても愛らしく可憐な姿だった。カーナもその微笑みにつられて微笑めば少女の頬に付いた泥を脱ぐってあげるのだった。



 そのままセルシアが向かった先には扉の前で別の侍女が少女の姿を確認すればゆっくりと扉を開くのだった。セルシアが部屋へ入れば一直線にある場所へと向かった。



「お母様!」


 プラチナブロンドの女性が椅子に腰掛けていらっしゃいとセルシアに微笑む。母親と一緒の美しいプラチナブロンドはセルシアにとって自慢の一つだった。



「はい!お母様にプレゼント!」


 そのままセルシアが両手にも花を母親の前へと持っていけば彼女はフフフ、と嬉しそうに破顔する。



「まあ本当に綺麗ね。大事にするわ、ありがとう」


 彼女が花を受け取れば、沢山ある花の一輪一輪をゆっくりと眺めた。その姿を嬉しそうに眺めるのはセルシアだった。彼女は座っている母親のお腹に頭を近付ければそっと目を閉じる。そこにはじんわりと暖かく何かが動く音がすれば彼女の気持ちが高まる。そこで彼女の頭を優しく撫でてくれる母親のシーナだった。



「お母様、私の弟、妹となる子はどんな子なのかしら」

「そうねぇ、きっとセルシアのように優しい子よ」

「ふふふ。弟だったらお父様みたいにおっきくてかっこいい人。妹だったらお母様みたいに綺麗な人がいいなぁ」


 嬉しそうに話すセルシアに母親のシーナの心は幸せで溢れていた。

 頭を撫でていた手を止めてセルシアの頬へと移動する。



「私の愛しいセルシア、顔色が悪くなってるわ。そろそろお部屋に戻って休憩しなさい」


 頬にチュッとお母様からキスをもらえば名残惜しいけど部屋へと帰ることにする。カーナに抱き抱え部屋に戻れば暖かい布で身体を拭き寝間着にと着替えさせてもらえばようやくベットへと入る。すぐさま身体からどっと疲れがでて心なしか息使いも荒くなっている。セルシアは少し動いただけでも身体が悲鳴をあげるのが小さいながらも徒然痛感していた。



 私は死んじゃうのかしら。


 苦しくて苦しくて左胸元をぎゅっと握ってしまう。はあはあ、と呼吸が苦しくてもどうすることが出来なくて。こんなことは多々あるのに慣れることがない苦痛に小さなセルシアが耐えられるのだろうか。否、無理である。セルシアがいつ何時助けてを求めれるように枕元には外に知らせるベルが置いてあるけどあまりの苦しみに身体が上手く動けない。静かな室内にはセルシアの苦しがる音しか聞こえなかった。




 気付けば目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。苦しい、苦しい、苦しいよ…。声にもならない悲鳴に誰が気付いてくれるのだろうか。この痛みを誰が分かってくれるのか。お父様は私の病気を色んな医師様に診させるけどだれも治すことの出来ない病気。私は助からないってことはずっと知ってた。でも誰もがその事を口にしないの、皆一生懸命私を助けようとしてるの。


 下唇を振るわせながらも涙を止めようと手で擦ろうとするセルシア。だがその涙を別の誰かがそっと脱ぐった。誰?と思った瞬間に身体がポカポカと暖まるのと同時に先程の胸の苦しさもすっと落ち着きを取り戻すのだった。彼女はそのまま深い眠りへと入っていく少し前に髪を撫でる者の声が聞こえた。



『おやすみセルシア。今はゆっくりと眠りなよ』


 とても優しい優しい…懐かしい声が聞こえた気がした。

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