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18話



 突如身体を纏う空気が変わった。


 それと同時に胸がざわざわとざわめく。私はその元へと転移しようと力を使おうとしたらその場で力が跳ね返された。そういえば先程その場所に結界を張っていたのだと思い出せば結界を抉じ開けるべくすばやい動作で色を紡いでいく。数分もしないうちに目の前に出来上がった術を確認せず身を滑らせて結界の内側へと入り込めば周りの景色が一辺する。




『おい、一体何が……』



 見慣れた簡素な部屋に駆け込んだ私はこちらに背を向けた人物を見た途端身体中に電撃が走る。それと同時に纏っていた色が瞬く間に萎んでいく。次第に呼吸は浅く圧迫し,冷汗が出てきた。唐突の虚脱感に目の前にいるそれにまさかと身震いした。


 私とは反対に背を向けた人物がゆっくりと髪を靡かせながら振り向く。


 私は昔からあの者達が苦手だった。どこまでも混じりけのない純粋な輝きを持つ色に。純粋な色は圧倒的な力、有無を言わさぬ支配の力。そしてその色を纏うことが許されたあの一族もまた然り。


「フフ、ハハハ。やあ、初めましてだね」



 肩を震わせ正面を向いたのはあの娘であってあの娘ではない。そう、瞳だけ違った。本来ならば蒼翠である瞳が青へと変わっていたのだ。


 圧倒的力を纏う青。


 我々混色ではなく原色の青。




 何故ここに「ほら、時間がない」



 その者はパンと手を叩けば思念が弾けたと同時に身体の虚脱感が軽減されていく。



「薄紅のヴィクス。私を台座に連れていけ」


 たった一言の命令は私自身の意思を組み込む前に薄紅色が術を瞬く間に発動させ景色を変えたのだった。



 ガラス張りの天上がある部屋は月の光と赤色の玉の色が部屋の中央にある台座に置かれた水晶球を僅かに照ら出していた。

 その者は私を横切り迷わず中央へと歩きだせばその者が歩いた場所から文字が浮き出しその者を求めるように追い掛けた。文字が足へとたどり着き身体を駈け上がろうとしたときにその者は足を止める。



「悪いけど、私の力は譲れない。彼女自身から貰うんだ」



 一瞥せずに告げたその言葉に文字はピタリと停止し緩やかに、諦めたように駈け上がるのを止め足元へと消えていくのを気にも留めないかのようにその者は歩みを再開したのだった。



 その者が近付くにつれひび割れた水晶体の色が弱々しく萎んでいく。

 ついに真正面で立ち止まればその者は片手を水晶体の頭上で数回左右に振る素振りをすればその手を口元へと引き寄せた。



「ノワール」


 吐息を吹き掛ければ拳の大きさのある黒色の光が生まれた。そして続けざまにその者は


「ヴェルデューン」


 緑色の光。

 

「トゥイス」


 白色の光。


「キュアノ」


 青色の光。

 

「ヴェルメリオ」


 最後に赤色の光を生み出した。 

 そのまま五色の光は円を描くように水晶体の頭上を拡張、収縮を繰り返しながら回転する。不意に右手が伸び人差し指を回転するそれへと二回ほど突つけば光たちは回転を止め静寂を守るように静止するのだった。部屋に転移してから一歩も動けないでいる私はその者の周りを浮遊する光たちの威力に自身の薄紅色の光力が萎縮する。



 背を向けていたプラチナブロンドが振り返り青色の双眸がまた私を強制的に縛りつける。



「さて、まずは何故私が来たのかを話そうか。ああ、まずはどうやって彼女に取り込んだかを知りたいかな」


 円を描いた口元とは裏腹に細められた青色の瞳はどこまでも冷たく冷酷だ。

 私が口を開かないでいるとその者は固定と受け取ったのか私から視線を離し部屋全体に施された術を眺め始める。



「答えは単純だ。この身体の核が私を受け入れれる様になっただけさ」


 白く細い指先が静止している一色の光を突つく。気紛れなのか、故意にの行動だったのか、その者の一挙一動に私は気が紛れ、話しを飲み込めれないでいた。



「此処の砦は綺麗だね。確か君の配下と契約した一族が今もここを管理している状態だったね。別にこれは嫌味じゃないよ」



 そう言って突ついていた指を止め、青色の瞳が獲物を定めるように薄紅色へと瞳を向けた。



「近年、無の出現頻度が少し異様だと各地から報告が出ている」


 その言葉に動揺するように薄紅色の光がゆらゆらと頼りなく揺れる。



「薄紅のヴィクス。反らすな」



 とたん反射的に視線が合わないように下げていた瞳が上へとあげられ青色の瞳とかち合う。



 それは刻一刻と迫ってきている。さっさと終わらせろ。



 青色の瞳が静かにこちらを見ている。ただそれだけなのに彼の言いたい事が理解でき、身体が震えあがる。震えの中なんとか絞り出した声は聞こえているかわからないほど小さな声で畏まりましたと返事をしたのだった。




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