10話
すみません!大きなミスがありまして前回の話をもう一度目を通していただければありがたいです。
目が覚めたとき、またいつものベットに寝かされていたことに気付いたセルシアはふと横に違和感を感じて顔を向ける。
「リードったら」
セルシアの横で眠るリードに頬が緩んだ。不意に自身の着ている服が先程とは違い軽やかな白いワンピースだが髪には赤色のリボンが結われていたのでそれを少しだけ触れる。
リードを起こさないようにベットから出るのだが身体が怠くて思うように動けない。窓際まで寄れば閉められたカーテンからそっと窓の外を眺める。クランブル家の屋敷は王都から少し離れ森の近くに建つ屋敷は部屋から眺めるそこは豊かな木々が目の前に広がる。
幼い頃から眺めているその景色はどこか身体の憂鬱さを癒してくれるのだが今日は少し違った。不意に顔を背けた方角は以前お母様が教えてくれた王都だった。今までは出掛けるどころか屋敷の外を出ることが出来なかったセルシアだが徐々に回復していく姿にお母様がいつか王都に行きましょうねと話してくれたからだ。それから自然と外を眺めるセルシアの視線は王都へと向けられるようになるのだった。胸を踊らす気持ちとは違う感情がいつも彼女を不安にさせた。
不安を誤魔化すようにカーテンをそっと戻し振り返ったセルシアの目の前に青空色が彼女を見つめた。
もう夕刻だが目の前の人物にセルシアがおはようと声をかける前に輝く金色がふわりと揺れ温もりを感じた。
美しい金色の髪を優しく撫でれば彼女の服を掴む力を少しだけ弱めたのでそのまま撫でる手を止めなかった。
「心配かけてごめんねリード」
身体を震わせる弟にセルシアからも抱きしめれば途端に腕の中にいる彼は泣き出しそうな表情をした後口元をもごもごさせてまた強く抱きしめたリードにセルシアは彼の言葉を待つ。
「いまは、わからない」
「そうなのね」
やっと口を開いた言葉に幼いながら彼が考え導きだした答えなのだと思ったセルシアは訳を聞かずに答えた。その後リードがでも、と何かを言い続けたのだがセルシアには聞き取れなかった。
空は赤く染まり時期に夜になるだろう。夕暮れを眺めるリードの青空色の瞳が今は赤く染まり輝いているのをセルシアは横から眺めていた。
◇
男は目の前に広がる書類の山に囲まれながら上にあるものから手にかける。書類に目を通してはサインしていくのだがどれも同じ内容ばかりに男の眉間に皺が深くなる。
「陛下、後が残りますよ」
「お前もじゃないか」
陛下と呼ばれた男と同じく側にいた男の眉間も深い。陛下と呼ばれた男は深く溜め息をすれば目の前にある書類を片手に持ち怪訝な顔で眺めるのだった。
「こんなにも早く綻びが起こるとは」
男の呟きに側近である男は部屋の扉をチラリと一瞥すれば自身も手元に持っていた書類を見る。そこには地方の領主によるここ数週間の間に起きた報告書だった。
「すでに軍は地方に派遣させております。ですが」
「なんだ」
言いにくそうな表情をしている側近に王は続きを促す。
「殿下二人も派遣されてよろしいのでしょうか」
「二人が入ることにより兵力が上がるのだから構わん。それにそれは二人が自ら申し出てきたものだ」
それよりもやはり、と言葉を続けた王は椅子から立ち上がり壁に掛けられたクレイアン王国の地図へと近寄ればある一点をなぞる。
そこはついこの間見たものと同じ場所を照らし合わせるように重なるそこに目付きが険しくなる。
「一体どこにいるのだ」
側近が何かを言おうと口を開きかけた時だった。部屋が黄色く光りだしある一点へと集中する。その光景に二人はさほど驚いた様子ではなく静かに色を見つめれば、光がリングの様に一周した後に一点に色が集まる。
「今日は王都外じゃなかったのかロクシェ」
『カーミリアンは早くて夕方には着くだろう。それよりも早くこれを渡しにきた』
ロクシェの手持ちには子供用のベルで王はそれを受け取りじっと観察すると僅かに反応するそれに目を見開いた。
「これは」
ベルを見た王の動きは早かった。すぐさま部屋を飛び出すので側近も着いて行こうとすれば手で制止して彼とロクシェだけが廊下を歩き出す。
王は右手首に付けている腕輪を時折確認するようにしながら歩き遂に大きな扉の前で止まる。
「我イグレシアン王の血を受け継ぐ者。我の血に呼応し古き友よりここに開かれよ、そして」
唱え終えれば扉のノブが輝いた。そして王は進みだせばロクシェも着いていく。そして最奥へとたどり着くと、手をかざす前に向こうから扉が開かれる。そこで見知った色が現れたことに驚いた。
「来てくれたのか」
『つい先程ロクシェに呼ばれてな』
黒を纏った精霊が扉を開けて王を出迎えてくれた。
『珍しいお客もいるよ』
青の精霊に引っ張られるように出てきたのは蒼色を纏った精霊だった。
渋面をしている精霊に王ははじめましてと挨拶すれば相手からも小さく答える。本来認められた者しか入ることが出来ないのに彼が居るのはここにいる皆が許可を受けたからだろう。
「私の代では初めてだねシュルツ」
名に反応した蒼の精霊に横にいた青の精霊が嬉そうに反応する。
『彼は知ってるぞ名を』
赤子が仮契約をするまでの間の情報も王の元へ内密に報告されている。仮契約の子供が誘拐される話が過去に何度も起きているから精霊と仮契約を持つ子供は不用意に情報を漏れないように国が施した法の一つだった。
「それよりも本題だ」
シュルツについても話をしたいと思うがそれは今すぐではないため王は早足に中央にある白い台座に向かう。
白い台座にロクシェから受け取ったベルを静かに置いた。次の瞬間その場にいた四色の精霊が息を飲めば残り二色は四色の様子に黙り混んだ。
「呼び出した意味がわかったな」
王の鋭い瞳が回りを見渡せば緊張が走る。ベルに駆け寄るように白色の精霊が飛び出してきた。
『なにこれなによこれ!』
『おい落ち着けよ』
険しい表情をした白色の精霊がベルに向かって叫ぶのを緑色の精霊が彼女を止めにはいるが次に白色の精霊はベルから王へと向き直り指を指す。
『これは彼の色。でも私達が与えてきた物はこれじゃないわ』
『ええ、見たことないです』
『当たり前だ』
白色と同様に青色の精霊までもが王へと詰め寄るのだがその間にロクシェが口を出した。
『それはカーミリアンと私が今日初めて人に授けた物だからな』
「つまり、それは初めから色など纏っていなかったという訳だな」
王がそう言い手元のベルを五色の玉の一つへと近づければベルにはめ込まれた水晶が勢いよくくだけ散って跡形もなく消えた。その時ほんの僅かだが薄い玉の色に一点濃い色が浮き出るのだがそれを吸収するように次には元の薄い玉の色へと戻る。
王はゆっくりとシュルツへと向けば彼の蒼色の瞳とかち合う。
「さてシュルツ、話してくれ。君は勘づいているはずだ」
赤の行方を。
リードの意味深の言葉はのちのち書きます。
そしてやっとだせた精霊達。彼等と王族の繋がりがこれから見えてきます。




