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夏生詩集

可愛くない犬でした

作者: 夏生

可愛くない犬でした


噛むな、といえば


噛むし


吠えるな、といえば


これでもかと、吠えるし


食べ物はよこせ!と


しつこく迫ってきて



躾ても、躾ても


聞いちゃいなくて


この犬の中で私の順位は


最下位だったと思う


肉球で何度も顔を踏まれたから



私が出かけるときだけは


ひざの上にのって


どこにも行かないでぇと


しおらしくなった


つい、負けてしまって


ヨシヨシしてやったことが


何度かあった


あとはうるさく吠えて


うんち、おしっこ所構わず


踏んでしまったときの


絶望感、筆舌尽くし難しで



騒がしくうっとおしい日々が


十年を過ぎた頃


苦し気に息を吐く犬の背中を


摩ってやって、また明日ねと


部屋のドアを閉めた


(あれ、今、何か言ってたな)



翌朝、死んでしまった犬の顔を


見ることができなかった


あいつは死ぬようなタマじゃないよ


ビックリして出てくるよ、と言いながら


犬の亡骸が入った段ボール箱を


強く揺すった


バタンと倒れた段ボールはしんとして


静かだった


静かすぎて、痛かった



あの夜、あいつは私になんて言ってたんだろう


さよなら、じゃない


ありがとう、でもないな


またな、だ


そう。またな、って顔だった









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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。神通百力と申します。 拝読させていただきました。 良いお話ですね。 最期も良かったです。
[一言] ヤバいです・・・ヤバいのです・・・。 こういう系は本当にヤバいのです。 前が見えません・・・。
[良い点] 良いですねー。 [一言] 最後も決まってお見事です。
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