表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それは夢か、現か  作者: 葡萄鼠
第一章
2/5

はじまり


 ◇◆◇


 暗い部屋……いいや、黒一色で壁も床も染められた部屋では、それに反し眩い映像が部屋のいたるところに映し出されている。笑い、喜び、泣き、怒り、画面では様々な人間が様々な時間を過ごしていた。そんな複数の映像を見ているのは、黒色の生地に茶色の木枠、取っ手のロッキングチェアに座り揺られている男性一人だけ。それも周りの黒に溶け込んでしまうほど、彼本人も黒一色だった。その髪も、服も、靴も、手袋も、全て。――ただ一箇所、映像の光に照らされて白すぎるほど白く映るその顔だけは違っていた。

「……」

 黒いサングラスをかけているせいでその視線さえもどこを向いているのかわからないが、僅かに上下している胸元から生存確認だけはとれる。

 全く動かなかった腕がそっと、静かに動いた。そしてその腕に従うように、漂っていた映像が動き出しある一つの画面が彼の指先で止まった。

「……」

 映像が流れ続ける画面に、『ENTER』の文字が映し出された。それを迷わず押し、その後に出てきたパスワード入力画面でも難なくパスワードを入力して『execution』を押した。すると辺りに眩い白い光が部屋いっぱいに溢れだした。


 ◇◆◇


 外壁は所々ヒビや汚れなど築年数相応のダメージを感じさせるが、何の変哲もないただのアパート、のとある1Rの部屋。キッチンとの仕切がない分居室スペースが広くはなっているが、ベッドと机、小さなバストイレとクローゼットだけの物が少々溢れかえっているほどよく散らかった、なんとも生活感のある空間だ。この部屋の主である立木誠(たちきまこと)は、仕事から帰ってきてからずっと自室のPCと睨めっこ状態だ。

「ううう゛むぅ……」

 唸り声が、決して狭くはないが広いとも言い難い部屋に響く。

 いったい何をそんなに眉間に深い皺をよせ、奇妙な唸り声を発するほど悩んでいるのかと思えば。PCの画面上には、「記憶が蘇る!? 記憶喪失のためのショック療法」「後退催眠とは」「あの人の記憶を塗り替えられる魔法術」「叩けばOK! 嫌な思い出はぶっとばして忘れちゃえ!」など等……。

 どれでもが怪しく、不気味で、変な内容だ。 どれでもが怪しく、不気味で、変な内容だ。しかし誠は至って真剣に、画面を凝視している。

「ううぅ…………はあぁああーーー」

 悩みに悩みに、最後は盛大なため息しかでてこない。

「やっぱどれもイマイチなんだよなぁ。なんっか、こう、コレだ! ってもんが中々……」

 何も手がかりが見つからず嘆息しつつも、何かないかとネットサーフィンを続ける。 

 ふと、何気なく開いたニュース記事の一覧の隅っこにあった広告に目がいった。何となくクリックしてみると、そこには誠が求めていたことに対する回答が求めるままあった。

「――これだ……」

 思わず、といったように誠の口からそう声が漏れていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ