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月を仰げば。  作者: 水城
第一章
8/18

6


 第一印象はさわやかだった。第二印象は笑顔だった。


「暁乃。俺の子になれ」


 にこにこ、いや、にやにやする理事長を見ていた瞬間、その口から発せられた言葉を聞くまでは良い印象だった。なのに、それは全て吹っ飛ばされた。


「…阿呆…ですか?」

「いや、大マジだが?不満があるか?暁乃?」


 不満、文句…ではなく、その言葉自体に問題がある。急に現れ、急に宣言し、急に呼び出し、急に編入させ、急に連れだされ、急に出会ったかと思えば…。


「何を言い出すのです?えっと、理事長?」

「藤堂明人だ。明人さんまたはお父さんと呼べ」


 ああ、黙っていればかっこいい、というのはこう言う人の事を言うのだろうか。本当に、これは本気で、思う。黙ってれば、さわやかで、理事長をしているのに年齢を感じさせない(実際の年齢は知らないが)好青年なのに。


「理事長。何の説明も無く、ただメインを言うのではあまりにも相手に失礼だと、以前言いませんでしたか?」

「ん?そうか。まぁとりあえず、俺はお前の親になりたいんだ。お前親いないし?とりあえず、気に入ったとしか言えないけど。うん。お前が好きだ」


 この人は一体何を言っているのだろうか。今なら何を言っても許される気がするのは気のせいですか?気に入っただけで人間を、しかも自分の養子にとるというこの人も、金銭感覚が狂わされたお金持ちですか?


 訳の分からない説明。無駄にキラキラし始める理事長、藤堂明人と名乗る人物。そして、その理事長の言動にため息を吐く要。とりあえず、俺は変な所に来てしまった、ということは確実に言えるだろう。








「で、何故俺なんですか?」


一応、ということで、再度確認をした。また同じ答えを出して来るのならばこの話を断ろうと決意して。ただ”気に入った”という理由だけではいと返事ができる訳が無い。


「ああーまぁ気に入ったのは腕前というか…なんて言うんだろうな?」


 理事長がきょとっとし始め、直ぐにうーんと唸ったかと思うと身に覚えのない話を始めた。”腕前”とは何の?と聞く間でもなかった。その答えはすぐに返って来た。


「情報屋、”朧月”知ってるだろう?」

「なっ…」


 知る、知らない、以前にそれはもう消えかけた名前だった。もう二度と聞く事の無い名前…のはずだった。


「隠し事ができないタイプだな。朧月。風間…暁乃?」


 その言葉は確信で。俺の過去を抉る言葉で。何故知っているのか。何故俺に…言うのか。


「…何処でそれを」

「たまたま、ハッキングに長けている知り合いがいてな。そいつに調べてもらったんだ。お前はもう消えたあとだったからあまり期待し無かったんだけどな。まぁそしたら意外にも?なんか残ってて?」

「…残ってた…?」

「まぁその辺は極秘だ。そのうち会うだろう。そいつとな。まぁ今は朧月のことは置いておいて、そんな感じでお前の事を知ってな、家族いないってあるし?息子にしたいほどかわいいし?なぁ。要」

「私は存じ上げませんでしたのでなんとも」


 何故、何故としか出て来なかった。

朧月を知っている。ならばどこまで、この男は知っているのだろうか。



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