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Short Short Circuit

何度でも

作者: 境康隆

「あなた、またですの?」

「おいおい。またとか言ってくれるな。男にとって、ここの問題は大問題なんだぞ。そりゃ、またって言われるぐらい、何度でも挑戦するさ」

「いえね……」

「むむ。確かに今までいろいろ試してきては、挫折してきた。この件に関しては、俺もお前のことは笑えない。お前の買っては放り出す通販のダイエットグッズと、俺のここの問題は似たようなものだろうな」

「私のは、ほら……」

「新しい薬を買ってきては、効果がないと途中で放り投げてきた。確かにこう何度も何度も新しいものに挑戦していては、お前がまたかと心配するのも無理はない。せっせと毎度毎度鏡に向かう俺の姿は、さぞかしおかしいもんだろう。だがなお前。今回のは、違うぞ。効果が出る人は、すぐに結果が出るらしい。それこそ、薬を塗った瞬間からな」

「私のはほら、副作用とかないですし……」

「副作用か? 確かにこれだけの効果がある薬だし、心配だな。そう言えば、読んだ覚えもないな。どれどれ、何々? 注意書きがあるな。『何分頭部への刺激を伴いますので、適量以上のご使用はお控え下さい』だと。まぁ確かに、少しでも多く使いたくなるのが人情か。俺もそうだしな」

「あなた? 大丈夫なの?」

「分かってる。使い過ぎだと言いたいんだろ? 何、ちょっとぐらいオーバーしても平気だ。こういうのは、少々大げさに書いてあるもんなんだよ」

「だって、あなた……」

「人によって、体質も違うだろうしな。適量なんて、所詮控えめに書いてあるものさ。俺の場合は、致命的に手遅れだからな。人より多く使っても、それが丁度いいぐらいだろうよ」

「いえ、ですんでね。あなた……」

「言うな。男には、無駄と分かっていようとも、何度でも、何度でも、挑戦しなければならない時があるんだ。すぐに結果が出る薬なら、尚更楽しみだし、試さずにはいられないんだよ」

「あなた。もう一度ここを読んで下さい。ほら、ここ。注意書きの副作用のところ」

「何だよ? しつこいな。何々。『適量以上にご使用なさいますと、まれに記憶喪失を伴うことがあります』だって? むむ。怯むものか。俺は何度でも――」

「でもあなたそれ――今日だけでもう五回目よ」

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