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EP 4

コンクリートの墓標(東京)と、三河の古狸

開戦からわずか一週間。

日本の首都・東京都は、一発の銃弾を撃ち合うこともなく「完全な死」を迎えていた。

新宿、東京都庁の展望室。

かつて室町幕府を開いた英雄・足利尊氏あしかが・たかうじは、眼下に広がるメガロポリスを見下ろし、絶望の涙を流していた。

「……食い物が、ない。どこにも……ない……ッ!」

1000万人の人口を抱えながら、食料自給率ほぼ0%。

鎖国状態に陥った瞬間、東京は「世界最大の要塞」から「世界最大の姥捨山うばすてやま」へと変貌した。

開戦2日目でコンビニとスーパーの棚は空になり、物流トラックは一切入ってこない。防衛省の中枢システム(富士通製)も、霞が関の官僚たちも、腹が減っては1行のコードも書けず、1つの法案も作れないのだ。

「殿! 暴動です! 港区や渋谷区のIT企業群が、備蓄の米を巡って殺し合いを!」

「練馬の自衛隊第1師団も、維持限界を超えました! 隊員たちが武器を捨て、芋を探して畑を掘り返しております!」

報告を聞き、尊氏は崩れ落ちた。

コンクリートとアスファルトで覆われたこの土地では、農作物は育たない。1000万人の都民は今や、生きるためにアスファルトを引っ剥がして土を耕す「農奴」へと成り下がるしかなかった。

「……降伏だ。隣国の埼玉、千葉、茨城へ白旗を揚げよ。都民を労働力として差し出す代わりに、米と芋を乞うのだ……我が足利幕府は、餓死にて滅ぶ」

こうして、最新鋭のインフラを誇った東京は、他県の農地を開墾するための巨大な「奴隷供給源」として盤面から消滅した。

一方その頃。

四日市コンビナートの無傷制圧という大戦果を挙げた織田軍は、大量のタンクローリーを引き連れ、愛知県へと凱旋していた。

信長を出迎えたのは、豊田市(三河国)を拠点とし、軍需産業と兵站のすべてを取り仕切る男――徳川家康である。

「おお、家康! 見事な陣立てであった。貴様が三河のトヨタと三菱をまとめ上げ、後方支援ロジスティクスを完璧にこなしたおかげで、我が軍は存分に暴れられたわ!」

信長は上機嫌で、恰幅の良い家康の肩を叩いた。

現代において、愛知県は「尾張」と「三河」という二つの国が合わさった奇跡の県だ。最前線で神算鬼謀を振るう信長と、後方で異常な生産管理能力を発揮する家康。この「令和の清洲同盟」は、盤面において反則級の強さを誇っていた。

「ははっ、御前にお褒めいただき光栄の極み。しかし殿、喜んでばかりはいられませぬぞ」

家康は、温厚なタヌキ親父の顔から一転、鋭い眼光を放った。

「東京(足利)が自滅したことで、関東のバランスが崩れました。厄介なのは、神奈川県(相模)に陣取った『北条』です」

「ほう。あの引きこもりの小田原評定が動くか」

「奴らは横須賀基地を押さえております。海上自衛隊の誇る『イージス護衛艦』と潜水艦隊……これを動かされたら、我が軍のハイラックス部隊など、艦砲射撃と巡航ミサイルで一帯ごと吹き飛ばされまする」

信長は将棋の駒を弄るように、顎を撫でた。

「北条も馬鹿ではない。イージス艦を動かすには莫大な油と飯が要る。奴らは必ず、海路から資源を求めて『西』へ侵攻してくるはずだ」

信長と家康の視線が、地図上の一点――静岡県へと向けられた。

「静岡(駿河)には、ホンダやスズキ、ヤマハといった二輪の機動力と、浜松基地の航空戦力がある。北条より先に、我らが静岡の『足』と『空』を食い破らねばならんな」

令和の戦国乱世、次なる舞台は東海を血に染める「静岡争奪戦」。

最強の矛(信長)と最強の盾(家康)が、ついに太平洋へと牙を剥く。

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