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EP 5

福岡市、西部方面隊・地下司令部。

黒田官兵衛のもとに、中国山地へ潜入させていた特殊工作部隊の隊長から、高度に暗号化された定時連絡が届いた。

『……ポイントアルファより司令部へ。毛利の防空レーダー網および通信インフラへのバックドア構築に成功。さらに、防衛情報ネットワーク(富士通製)の深層領域から、愛知・織田軍の最高機密データを傍受しました』

官兵衛の目が鋭く光る。「愛知の機密データだと? 読み上げろ」

『はっ。現在、愛知県内にて数百万規模の関東難民による大規模な暴動が発生。トヨタの生産ラインは完全にストップし、織田信長は暴動鎮圧のために主力を県境に張り付けており、一切の身動きが取れない模様。……繰り返します、信長の陣営は現在、完全に崩壊寸前です』

その報告を聞き、地下司令部の幕僚たちは歓喜に沸いた。

「閣下! これは千載一遇の好機です! 信長が難民の泥沼で身動きが取れない今なら、手薄になった本州を海路から一気に突けます!」

幕僚の言葉に、官兵衛は無精髭の生えた顎を撫でた。佐世保や博多港に待機させている輸送艦隊を使えば、中国地方の『デスロード』を飛び越えて、愛知の喉元へ刃を突き立てることができる。

だが、官兵衛の直感が微かな警鐘を鳴らしていた。

(……出来すぎている。あの織田信長が、難民ごときに足元をすくわれるか?)

一方、その頃。

愛知県、作戦本部。

織田信長の陣営にも、防衛情報システム経由で「九州軍の不穏な動き」を知らせる緊急アラートが鳴り響いていた。

「殿! 富士通の早期警戒システムが、九州からの大規模な通信トラフィックを探知しました! 暗号通信を解析した結果……『九州の電力網(玄海原発および地熱発電)が謎のサイバーテロでダウン。焦った黒田官兵衛が、資源を求めて決死の本州上陸作戦を企てている』とのことです!」

鬼又1佐の緊迫した報告に、輜重奉行の木下藤吉が首を傾げる。

「電力網がダウン? あの引きこもりの天才軍師が、そんな致命的なドジを踏むッスかね?」

信長は、将棋盤の上の駒をじっと見つめていた。

「……弥太郎。その情報は、どこを経由して我が軍のシステムに入り込んだ?」

「え? あ、はい。経由しているサーバーは……広島。毛利元就の領地にある通信ノードです」

その瞬間、信長の口元が凶悪に吊り上がった。

「くくく……はーっはっは!! なるほど、そういうことか! 喰い破られたのは九州の電力網ではない。官兵衛の放った『ネズミ(工作員)』が、毛利という猛毒の蜘蛛に捕食されたのだ!」

信長は即座に、二つの偽情報が意味する「真の盤面」を看破した。

広島県、呉の海上自衛隊基地。

瀬戸内海を望む司令部で、毛利元就は優雅に熱い茶を啜り、もみじ饅頭を口に運んでいた。

「さて、種は蒔いた。官兵衛殿には『信長が隙だらけだ』と囁き、信長には『官兵衛が死に物狂いで突っ込んでくる』と教えた。これで両者は疑心暗鬼に陥り、わしの用意した中国山地の『デスロード』で勝手に潰し合う手筈よ」

マツダのロータリーバギー部隊が、エンジンを甲高く唸らせて出撃の時を待っている。

二重スパイを利用した、謀神による完璧な同士討ちの罠。

しかし、毛利元就はまだ知らなかった。

自らが「完璧に騙した」と信じて疑わない両端の天才たち――信長と官兵衛が、すでにその罠の「さらに一手先」を読み、恐るべきカウンターを準備し始めていることを。

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