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EP 3

白銀の狩猟場と、独眼竜の『雪崩なだれ

「……だから言ったのだ。本州の連中が勝手に死に絶えるのを、暖かい部屋で待っていればよいものを」

北海道、札幌道庁。

大名・松前慶広は、通信が途絶えたモニターを見つめながら、深くため息をついた。

数日前。松前の「待機命令」に痺れを切らした陸上自衛隊・第7師団の一部若手将校たちが、独断で動き出した。

『最強の装甲と火力を誇る我らが、なぜ本州の弱小勢力に怯えねばならないのか!』

彼らは血気盛んに90式戦車と10式戦車の一部部隊を率いて津軽海峡を強行突破し、本州最北端・青森県へと上陸を果たしてしまったのだ。

だが、彼らの誇る「無敵の機甲師団」の幻想は、上陸からわずか3日で無惨に打ち砕かれることとなる。

――青森県、八甲田山系。

猛烈な吹雪の中、進軍を続けていた北海道軍の戦車部隊は、完全に「停止」していた。

「くそっ! キャタピラが空転する! 深雪に車体が沈んで、これ以上前進できません!」

「エンジンを吹かせ! 暖房も切るな、外気温はマイナス15度だぞ!」

車内の暖房と、雪を掻き分けて強引に進むためのフルスロットル。

ただでさえ燃費の悪い巨大なガスタービンエンジンやディーゼルエンジンは、この極限環境下で文字通り「滝のように」燃料を消費していく。補給線などとうに伸びきっており、携行していた予備燃料は底をつきかけていた。

「装甲がどれほど分厚くても……動けなければ、ただの鉄の棺桶じゃないか……!」

若手将校が絶望の声を漏らした、その時である。

『ドスゥゥゥンッ……!!』

突如、遠くの山頂付近で凄まじい爆発音が轟いた。

「砲撃か!? どこからだ!」

「違います! 敵は我々を狙っていません! 撃ったのは……斜面の上部(雪庇)です!!」

将校がハッチから顔を出し、雪山の斜面を見上げた瞬間、彼の顔から完全に血の気が引いた。

爆発の衝撃によって斜面に積もった数万トンの雪が崩落し、巨大な白い波――**『雪崩なだれ』**となって、谷底で立ち往生している戦車部隊へ向かって全方位から襲いかかってきたのだ。

「全車、ハッチを閉めろォォッ!!」

轟音。そして、完全な暗闇。

最新鋭の戦車群は、一瞬にして数十メートルの雪の下へと生き埋めにされた。

その白銀の地獄を、遥か上方の尾根から冷酷に見下ろしている隻眼の男がいた。

東北6県を強引にまとめ上げた雪将軍、伊達政宗である。

「……阿呆め。いくら陸上最強の動物であるアフリカ象であっても、吹雪の雪山に放り出されればただの巨大な肉塊よ。己の強さを過信し、環境(盤面)に適応できぬ者は死ぬ」

政宗の背後には、白い雪上迷彩服に身を包んだ、陸上自衛隊『冬季戦技教育隊』を中核とするスキー機動部隊が、音もなく整列していた。

彼らの背には、信長から日本海ルートで支援されたばかりの「01式軽対戦車誘導弾」が担がれている。

「雪崩で生き埋めになったとはいえ、戦車の装甲は雪の圧力程度では潰れん。だが、排気口が塞がれればエンジンは止まる。奴らは今、極寒の鉄の箱の中で、凍死するか、ハッチを開けて這い出てくるかの二択を迫られておる」

政宗は、スノーストック(杖)で眼下の雪原を指し示した。

「ハッチを開けてモグラが顔を出したら、対戦車ミサイルで上から脳天トップアタックを撃ち抜け。一匹たりとも北の檻へ帰すな。この東北の雪山が『絶対防衛線』であることを、松前のタヌキと、西の黒田官兵衛に教えてやれ」

『ハッ!!』

純白のスキー部隊が、斜面を滑空していく。

それはまさに、雪山を支配する飢えたヒグマの群れが、動けなくなった巨大な獲物を蹂躙する狩猟の光景だった。

数時間後、松前道庁の通信端末に、政宗からたった一言だけメッセージが届いた。

『極上の鉄屑スクラップ、痛み入る。せいぜい海峡の向こうで震えておれ』

北海道の「絶対的な武力」が、東北の「雪とゲリラ戦術」の前に一敗地に塗れた瞬間であった。

西の毛利、北の伊達。信長の放った物資によって、両端の「番犬」は、ついに最凶の牙を剥き出しにしたのだ。

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