⑤ 魔法の箒で空を飛ぶはずだった日。
夏。
とんでもなく暑い日々を乗り越えるには?
魔法で世界を変えたい話。
夏。
眩しい日差しが輝く。
今日は風が少し吹いている。
みんなが暑そうにせかせか歩いているのを私は上から見下ろす。
箒に跨っているだけでどこでも移動できるなんて楽すぎる。
コンクリートからのジワっとした暑さもないし。
とビュンビュン飛び回っていると…
手が滑った
落下してあっという間に地面がすぐそこ…
なんてことはなかった。
澄香はパッと目を覚ます。
急に落ちたショックで心臓がバクバクしているが、実際には布団の上で寝ているだけだった。
枕元には昨日寝る前に読んでいた魔法学園の物語が置いてある。
どうやら就寝前の空想が夢に出てきたようだった。
どうせなら夢じゃなくて現実でいいのになぁと思うが、現実で落下していたら助からない可能性が高い。
やっぱり便利などこにでも出れるドアみたいなのが欲しいなぁと考え直す。
落ちることはないし暑さで疲れることもない。
箒で飛んでいる時はどのくらい暑さを感じるんだろう。
風が吹いてたら気持ち良さそうなんだけどなぁ。
澄香の小さい頃の夢は魔法使いになることだった。
現実が見えてきても、理想の夢としては変わってない。
現実的な夢よりも理想的な夢の方がワクワクするが、この歳になっては流石に魔法使いになって箒で空を飛びたいとは口に出せなくなっていた。
澄香が小説やマンガが好きな理由の一つは夢や理想、楽しみが詰まっているからだ。
現実では口に出さないことやできないこと、手に入らないものをいつでも感じることができる。
なにも言わなくていいし、いつでも帰れる場所にもなる。
ただ、現実に澄香の世界とそれらが交わることは今までなかった。
世界を変えるのはとんでもなく難しい。
今日は夏祭りの日だ。
朝からなんとなく街がザワザワしてる気がする。
この後蒼也と18時に待ち合わせて、屋台を楽しみつつ花火を見る予定だ。
浴衣はめんどくさいし暑いから諦めた。
持ってないし、買っても使わないと勿体無いかなぁと思ってしまった。
適当な服を選んでパッと準備して家を出た。
外はジリジリとした暑さで、コンクリの地面がゆらゆらして見える。
やっぱり箒でもしんどそう。
結局どこにでも一瞬で行けるドアが一番だなぁ。
とか考えながら蒼也の家の前まで来ると、ちょうどドアが開いて蒼也が出てきた。
一歩外に踏み出した瞬間暑さに顔をしかめている。
いつか世界が変わる日が来ると信じている私の、いつか魔法の箒かドアを手に入れたら…という理想を蒼也に話してみたが、家にいるのが一番じゃんという言葉に叩きのめされた。
世界を変えるのはいつになるのかわからない。
今日の日記。
夏祭りは人混みがすごくてとんでもなく暑かった。
箒に乗ってても屋台は地面にあるし、ドアで瞬間移動ができても花火を見ている間は暑いだろうし。
移動を楽にしたらいいわけでもなさそうだった。
ただ、魔法使いになりたいという夢は変わらない。
もっと暑さに対応できる魔法が使えればいいんだから。
いつかなれますように。
読んでくれた方ありがとうございます。
前回の更新からだいぶ空いてしまいましたが、その間にも読んでくれている方がいてとても嬉しいです。
家から出かけ先まで瞬間移動できたらありがたいですよね。私の理想です。
次回は蒼也視点で二人で夏祭り楽しんでる話です。




