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⑤-2 もしも魔法使いだったら。

大好きで

変えたくない、変わりたくない時間。

なくしたくない思い出はありますか?

もしも魔法使いだったら。

時間を止めて

好きな時間だけ繰り返して

なんでも都合良くなるように

彼女とずっと一緒にいられるように

できたのかもしれない。

そんな世界があれば。


現実はそんなことなく、澄香と夏祭りに来たものの二人で屋台をまわっていた幸せな時間は終わりを告げようとしていた。

それとなーく澄香の写真を取り集めていたものの、綺麗で輝いて見えていたはずのそれはいざ写真として見返すと過ぎてしまった時間のただの固まりに感じられた。

心だけが取り残されていく感じが好きじゃない。

身体は不自然なく動くのに、心だけが一歩遅れてついてきている感じがする。

これを伝えようとすると寂しいの一言にまとめられちゃうのかな。

もしも魔法が使えたら。

自分の好きな時間だけ繰り返して変わらないままの世界を閉じ込めておくのに。

楽しかったはずなのに周りが色褪せて見えてくる。

夏祭りだけじゃなくて

どんなイベントでもこういう感覚ってあって。

寂しさを感じない思い出が欲しい。


澄香はニコニコかき氷を食べている。

幸せそうにご飯を食べれるのも一種の才能だと思う。

俺はつい真顔で無心に食べちゃうから。

「そろそろ花火見えるところに行く?」

澄香が嬉しそうに聞いてくる。

「そうだね」

と答えて歩き出そうとすると、澄香は

「ちょっと待って」と言って急に走り出した。

ゴミを捨てに行くのかと思ったけどそうではなく、澄香はある屋台の前まで行って立ち止まり、何かを買って戻ってきた。

「お待たせ。行こ。」

何もなかったかのように歩き出す澄香にゆっくりとついていく。

なんでもない時間。

写真じゃなくて空間ごと閉じ込めたい時間。

止められない一瞬の時間。


ぼんやり一歩遅れて彼女の後ろ姿を見ながら歩く。

予定の場所に着くと澄香が振り向き、何かを差し出した。

「今日誘ってついてきてくれたお礼ね!」

と黙ったまま固まっていた俺の手にそれを押し付けると澄香は視線を逸らす。

目を落とすとそれはおもちゃのカメラだった。

「この夏祭り、屋台で5個食べ物買うとおもちゃの引換券貰えるんだけど、さっきそれと交換してきた」

彼女はちょっと楽しそうに話す。

「おもちゃだから写真は撮れないんだけど、カメラは写真で記録できるだけじゃなくて、カメラ自体にこの空間ごと世界が詰まってるみたいに感じることがあって。感じるだけで取り出せないけど、思い出としてあげるね」

言語化するの難しくて意味わからないかも…とちっちゃく呟く澄香を見つめる。

スマホの中の写真の切り取られた世界とは違う。

澄香がくれたこの瞬間の世界が詰まったカメラ。

「ありがとう」

澄香は嬉しそうに笑った。

魔法のようなカメラはたぶん今年いちばんの思い出にする。



もしも魔法使いなら

時間を止めたり

好きな時間だけ繰り返したり

なくならないようにその瞬間の世界を思い出に閉じ込めたり

そんな魔法が使えるのかもしれない。

世界は今も変わらない。

澄香がくれた魔法のカメラを見つつ、それでも魔法を諦められない俺はきっととんでもない欲張りだ。

読んでくれた方ありがとうございます。

前回からまた時間が空いてしまってすみません。

更新できてない間も読んでもらえていてとても嬉しいです。

次回も楽しみにしてもらえるように今後も頑張ります。

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