表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コールドケース  作者: aqri
警視庁特殊課承認チーム
88/91

5 乗っ取られた山吹

「ここに引っ張り出すことができます。ちょっと他の物もいろいろくっついてくるかもしれませんけど」

「カービィか」


 扉の前に立つと笛吹は少し耳をすませていたようだが大きく口を開けた。そして顎を動かしていないのに口から発せられたのは言語のような音のような、表現ができない何らかの「音」だった。

 次の瞬間扉が開き凄まじい勢いの突風が吹き込んでくる。確かに空調はあるがそんな風を発生させられるものなどない。空気が圧縮されているのだ、ソニックブームに近いのかもしれない。証拠品はどれもしっかりと固定してあるので確かに吹っ飛んでくる事はなかったが、小さかったり固定が外れてしまったものは飛んできたのでいくつか山吹が受け取った。そして。

 ハエの大群のようなものがこちら側に叩き込まれる。うねうねと蠢くそれは形にはならないが部屋中を飛びまわり山吹と笛吹に切り傷を作っていく。まるで小さなカッターが飛びまわっているかのようだ。


「とりあえず俺と笛吹をどうにかすれば今ここには他の部署の人がいないわけだし、お宝取り放題なわけよ。好きなもん持っていけるんだからこんなにおいしい話はないと思わない?」


 黒いものに向かってまるで子供を諭すように優しく問い掛ける山吹に笛吹は訊ねる。


「その心は」

「腹減ってきたから早く片付けて飯食いに行きたい」

「バナナとスルメだったらありますよ」

「足りねえって」


 黒いものが一気に山吹にまとわりついた。心臓を持っているのは山吹で嫌いなのも山吹だ。あれだけ散々あったのだから攻撃を仕掛けてくるなど分かり切っている。

 実は葛からもらったパワーアイテムは先程の鉄パイプに貼り付けていた紙一枚だけだ。身を守るものは何ももらっていない。他にもありますよと葛からは声をかけてもらったのだが山吹は全て断った。ごちゃごちゃいろいろつけてたら田中さんが会いに来てくれなくなっちゃうから、そう言って。

 耳から、口から、鼻から、あらゆる場所から黒いものが山吹に入っていく。山吹は白目をむいて体中に血管が浮き出てきた。体を乗っ取ろうとしているというよりは内部から破裂させようとしているような感じだ。いくら山吹の回復力が凄まじくても破裂したらどうにもならないかな、と笛吹はその様子を見守る。

山吹の体ががくんと大きく震え、口を開いた。


「本当に助けないんだね」


喋っているのは田中だ。声も山吹ではなく田中の声である。


「なんで助けなきゃいけないんですか、めんどくさい」

「いつでも自分が殺せるから、っていう余裕からかな」

「そういうわけでもないんですけど。さっきも言ったようにめんどくさいので。俺面倒なこと嫌いなんですよ」


 何を考えているのかわからない、全く思考が読めない。今まで観察してきていても一見すると大人しめなごく普通の男だった。いろいろと器用なことができるようだが性格が悪いわけでもない、激情に身を任せるでもない、リーダーシップがあるわけでもない、全く何の特徴もない男。だからこそ扱いが難しい、適当に扱えば適当な方向に進んでしまう。しかも本人はそれをわかってやっている。


「目的のものは手に入ったし、せっかくだからこの体を有効に使わせてもらおうかな。こんな奴の体を使うの反吐が出るから、ここ出たら適当に捨てておくから後で回収していいよ」

「めんどくさいからいいです」


 笛吹の本当にどうでもいいという態度が不可解ではある。まだ何か奥の手があるのだろうか、それとも本当に身近の人間がどうにかなっても全く何も感じない人格なのだろうか。相手を始末できる者同士、という話だが今心臓は田中の手中だ、いきなり何かをしては来ないと思うが。

 引きずり込まれたとは言えあまりにもあっさりと目的のものが手に入って警戒心を最大限に強めていた。まだ何かありそうだ。


「昔聞いたことがあるんですけど、頭のいい奴は馬鹿だなって言った人がいるんです」


 笛吹の言葉に警戒しながら次の言葉を待つ。


「お勉強ができる優等生タイプの人って何か事を為す時いろいろごちゃごちゃと考えすぎるらしいんですよね。その先のことをじっくり考えて失敗パターンを考えて準備期間に何日も何ヶ月もかけて結局やらないみたいな。やりたいはずなのにやらない理由を色々と探すことから始めるんです。俺から言わせたらごちゃごちゃ考えてないでさっさとやればいいのにって感じです」


 一瞬何のことかと思ったが全身がバラバラになるような激痛が走る。今何が起きているのか、何かをされたのかそれさえもわからない。山吹か、いや、今体を完全に管理しているのだからそれはない。そうなると笛吹か。


「俺は他の人とはちょっと違った特技があるっていうのもわかってるんでしょう。それが音だってことも。俺がペラペラ喋ってること自体が何かされてるんだなって答えにどうしていきつかないんですかね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ