3 大きく変わった組織
自分達が取り扱っている通常では考えられない何らかの出来事に巻き込まれたのなら、もっとわかりにくい形でややこしいことになっているような気がする。それがここまではっきりと話に残っているのなら、なんとなくヤクザに目をつけられたとか踏み込んではいけないものに踏み込んでしっぺ返しを食らったとかその程度のことな気がした。
「まぁ大体合ってるっちゃ合ってる。正解は、辞めたその二人は自分たちの行動は絶対に正しかったと証明してやると意気込んでそのまま深く首を突っ込んで自滅した。なんて事は無い、現実離れした怪異とかじゃなく普通にただの殺人事件だったんだ。そして辞めた二人の方が実は真実として正しかった。それを嗅ぎつけられて犯人が二人を殺しちまったんだ」
「それはそれは。それがわからずに別の物を証拠品として承認した当時のトップと承認チームってほんとに頭悪かったんですね」
「それもあるし犯人の頭が異常なほどに良かった。サイコパスの頂点に立つような人間だったっぽいな」
そもそも二つのチームが追っていた事件は猟奇的な殺人でもなければ被害者がいる事件でもなかった。片方は行方不明者の捜索、もう片方は盗まれた工芸品の捜索。これらがコールドケースとして回されたのは当時日本を震撼させるような大きな事件が起きていて、警察の調査が日本全国的にそちらに向けていたので通常の事件がどんどんコールドケースに回されていたのだ。
「その日本を震撼させるような大きな事件もその犯人が起こしたってことですか」
「さすがにそこまでは予測が立たない。大きな事件が起きたから今のうちに遊んでみようかなって思っただけかもしれないし。現実離れしたオカルト的な事件ばかり見てるとこういう現実的な事件が起きた時もそっちに切り替えるのがなかなか難しくなる。仮説を立ててある程度絞り込んで動くのは大事だがそれに固執するととんでもない方向に行っちゃうからな。山で遭難するのと同じだ」
そこまで話すと山吹はふっと小さく笑った。
「それを反省して組織は改変され物事を客観的に見れる人間を集めたみたいだ。それでも後に部署に大打撃が起きた事件が勃発した。このままじゃダメだってことで当時まだ外部の人間だった今の課長が組織に招かれた。本来であれば部署の人間はもっと上の人が選別するんだけど、課長が部下は自分で選ぶことを条件に警察に入ったらしいから人事に関しては他の意見を全く取り入れなかったそうだ。大月さんが来て他のチームメンバーも招かれて。ようやく今の形がまとまったわけだけど。ここでもう一つクイズだ。前に言っただろ、特殊課のメンバーで一人だけ人間じゃない奴がいるって。誰だと思う?」
「あえてそういう言い方をするって事は小野寺さんの相方ではないってことですか。嘘でしょ、あの人が人間だとか。この世に存在する地球人はあの人以外全員火星から来ましたって言われないと納得できないんですけど」
「気持ちはわかるけど。別に答えなくてもいいけどなこのクイズ。何が言いたいかっていうと人間の枠から外れてそうに見えても人間だし、超常現象だったとしか思えなくても超常現象じゃないこともある。普通だって思ってることが普通じゃないことなんてざらにある。そこんとこを理解してないと頭が固くて自分がミスしてるってことにも気づかない」
掃除用具ロッカーを開けると山吹は棒のようなものを取り出した。
「なんで掃除用具入れに鉄パイプが入ってるんですかね」
「俺もいろんなものを使って遊んできたけど、なんやかんや総合的に見て鉄パイプが一番使いやすいんだよな。長さとか握りやすさとか振り回しやすさとか強度とか、結構優秀なんだよ」
「すみません、全然理解できないです」
「わかりますよ俺も好きですから、って言われても困るからちょっと安心したわ。それはともかくだ」
笛吹が軽く息を吸った。その様子を見ながら山吹は困ったように笑う。
「これだけのことを言ってまだ自分のことだと思ってない馬鹿がいるんだから本当に救いようねえなあ。いい加減にしてくれよ、普段温厚な俺もいい加減キレるぞ」
ピュ、と小さな口笛の音が響いた。次の瞬間ガラスが割れるような激しい音がそこら中に鳴り響く。山吹は笑いながら何もない場所に思いっきり鉄パイプを振り下ろした。バギッ! っと鈍い音が響き目の前から黒い何かがあふれ出る。
「油断してるからだ。今時の鉄パイプは結構頑丈だろ?」




