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コールドケース  作者: aqri
警視庁特殊課承認チーム
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1 迎える準備

 今日がお前の命日になるから白装束着ておけと言われないことを願いながら水木樋との出来事を大月に電話で報告した。それには大月も予想外だったらしく驚いた様子だった。


『事前の調査では自分から動く事はないと踏んでいた。すまん、私の判断ミスだ』

「それは俺たちも同じです」

『理由はどうであれ外部の人間をそこに入れたのは何らかの処分が必要だ。仕方ないという理由は採用されない。だがそれは全て事が終わった後でそれにふさわしい内容を私が考える』

「お、優しいじゃないですか」

『水木樋が目的のもの以外全く興味がなかったこと、自分のやりたいことをやったらさっさと帰るつもりでしかなかった事を鑑みてだ。今処分だなんだとやっている暇もないしな。あとお前たちの対処もあの場ではそれが最善だと思う』


 そこまで会話を聞いていた笛吹が俺は喧嘩売ろうとしましたと言うと大月はお前は後で踵落としな、と言った。


『多分お前たちが思ってる以上に事は急展開に動く。神の心臓の入れ物探しは後回しだ。とりあえず山吹が持ち歩け。田中がなりふり構わず保管倉庫に突撃してくるのは時間の問題だぞ』


 証拠品保管庫は田中にとって押し入れと化している。田中が仕掛けだけ施して放っておいている物がおそらくいくつかあるはずだ。それらを必ず回収しに来る。最強の鍵をつけている事は既にばれているので下手な余裕を見せず全力で突っ込んでくるはずだ。


『お前たちのやることは変わらない。田中をなんとかしろ、それだけだ』

「ラジャりました」

「はい」


 通話を終えて山吹は改めて水木樋から渡された偽物の神の心臓を観察する。小さなみかんほどの大きさだが、表面はしわしわの茶色で何かの燻製だと言われた方がしっくりくる見た目をしている。おそらくこれも誰かの心臓なのだろう。


「ちょっとだけポケットサイズじゃねえなこれ、入れたらかさばるんだけど」

「パンパンに膨れているジャケットのポケットって一番ダサイですよね」

「わあってるよ、どげんかせんといかんなぁ」

「山吹さんって宮崎県出身なんですか」

「いや全く違う」


 自分のデスクに座り神の心臓をお手玉のようにポンポンと放り投げながら考え事をしているとグッさんが水面に顔を出した。


「見たいのかな、やっぱり透明じゃないと不便だな」

「その水槽、からくり箱はもうグッさんのものですから。本人の頑張り次第で形が変わるんだったらそのうち透明にもなるんじゃないですか」

「性能のクオリティがヤバいな」


 グッさんの前に見せると少しの間水面で浮遊していたがやがて底のほうに泳いでいってしまった。どうやらお気に召さなかったようだ。


「そのからくり箱には自分から入ったのに、こっちは嫌いか。質が良い悪いじゃなく相性かな」

「いや、多分不細工なんだと思います」

「美形うんぬんの対象なのかこれ」

「たぶん?」


 「本人」がそう言っているのだから笛吹には意図がわからない。『醜いわ』と言って水の底に逃げてしまったのでどちらにせよお気に召さなかったようだ。


「今後の事ですけど、何か作戦ありますか。俺は何もないです」

「この後に及んで作戦とか無意味だろ。人間の究極の最強技、フィーリングでいくしかない」

「同感です」


 なんやかんやいろいろ考えたところでそれを覆すだけの小手先を田中は持っている。こうやってみたらダメだったからじゃあこうしよう、などと言ったところで通じる相手ではない。

 それができるのは至って普通の人間相手、普通の事件だけだ。自分たちが扱っているのは普通の事件ではないし、増して相手は普通の人間ではない。臨機応変の手段を無限に持っているような相手に計画を立てて対処など徒労に終わるに決まってる。言葉で打ち合わせるよりも相手の行動に合わせる。相方とはそういう存在だ。


「とりあえず今できるのは、保管庫前の掃除だな」

「そこが対応場所としては一番でしょうね」


 田中の目的は山吹たちをどうにかする事ではなくあくまで保管してある物の回収。たとえ鍵が完璧に直っていようがおそらく田中はここに来る。一度入ってしまえば中からこじ開ける方法などいくらでも持ち合わせているだろう。鍵屋が完璧な鍵を作ったといってもあくまで鍵屋は人間だ。人間でないものにどこまで通じるかは保証ができない。

 そうなるとエレベーターの下、保管庫に入る前のスペースに簡単な寝泊まりセットや掃除用具入れなどが置いてあったがそれらは全て撤去しなければいけない。邪魔だからというのもあるがあくまで備品だ、勝手に壊してしまうわけにはいかない。スーツのジャケットを脱いで動きやすい格好になると二人で片付けを始めた。

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