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コールドケース  作者: aqri
模造品の心臓
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8 情報交換

 そこで一旦話が途切れる。そんなものに少女一人の心臓と偽物を物々交換しましょうと言ったところで相手が頷くはずもない。そして特殊課の仕事の範囲内に該当するかどうか微妙なところだ。田中に関してはどうにかしなければいけないのは仕事として決まっている。そのことを考えるとやはりあまりにもリスクが高すぎる。偽物の心臓を作り出せないとなると本物の保管してあった心臓を佐藤に渡すことに自分たちには何のメリットもない。


「君たちの考えてる事はわかる。取引の内容が自分たちにはあまりにも見合わないんだろう。だから最初に言ったんだよ、どんなことも協力するってね。その心臓と同等のものが作り出せれば君たちの保管品としてのものは問題ないはずなんだけど」


 神の心臓は承認しなければいけない事件の証拠品とは少し立ち位置が違う。かつて起きた出来事の原因がこれではあるが、これが一体何なのかと聞かれれば強大な力を持った心臓というだけだ。そもそも特殊課の襲撃事件は自分たちがファイリングをする事件とは全く関係ない、そういう出来事があった、というだけで済まされる問題である。


「神の心臓には条件や定義がある。それとそっくり同じものを作り出せれば、君たちの証拠品が失われることはない。僕が代替品を作ってそれと交換、でもまあいいんだけど。知識の提供の方が期限も幅もなくていいかなと思ってね」

「どうにかできそうなのは俺たちの証拠品を紛失してはいけないという事実だけ。ガチの神様に捧げる偽物がどうしても製造できないならこっちの証拠品は別の形で製造しようってことですか……結構難しいですね」


 判断が難しい、果たしてそれで本当に問題がないのかどうか。例えばローラーなど今まで取り扱ってきた案件だったらそれは絶対に不可能だ。偽物はあくまで偽物、コピー品は証拠品としては認められない。

 しかし神の心臓は正確に言えば証拠品とは違う。条件を満たしたものが存在していればいいと言われれば確かにそうなのだが。


「ボスの人に神の心臓を渡してしまう事は何の問題もないんですか」


 佐藤と山吹の会話をずっと黙って聞いていた葛が佐藤に尋ねる。


「そこからは完全に僕の仕事になるんだけど。確かにそこだけ見ちゃうと全然良くない。ボスさんは本物と偽物をすり替えておいて神が完全体になるのを防ぐと同時に、本物の心臓を自分のものにすることでレベルアップでも考えてるかもしれないからね。本当だったら渡さないのがいいんだけど、そこはちょっと考えがあるから大丈夫」

「どんな?」

「今はまだ内緒。というか”言葉”にして出さない方がいいかな、どこでどう聞こえちゃうかわからない。でも、調子に乗ると痛い目みるぞってことくらいは叩き込んでおこうかと思ってる。で、どうする?」


 この話に乗るかどうか。佐藤はあくまで判断を山吹たちに委ねているように見えるがおそらく99%決まっていることなのだろう。ここで断る事はもちろんできる。客観的に見ても自分たちにはメリットがあまりない。


「追加情報をあげるとね。ハルちゃんともう一人、君たちが田中さんと名付けた奴は正直に言えばザコだ。だが親分さんと、水木樋が出てきたら君たちでもちょっと対処が難しい。神の心臓を持っている限りその危険には常にさらされていると思ってくれ。それを手放す事はこれ以上事態を悪化させないためにも必要なことではあるよ。あの連中のトランクルームになるのはそろそろ区切りをつけておかないと、文字通り取り返しがつかないことになる。君らの課長と大月さんにもさっき忠告した。判断は、君らに任せるみたいだけど」


 そこで再び沈黙が降りる。山吹はずっと何かを考え込んでいるようだが笛吹はこれといった特に反応は無い。


「先に笛吹君に聞いておこうか、君の考えはどうかな」

「俺ですか。俺個人の意見は特にないです」

「どうでもいい、って意味じゃなさそうだな。なるほどね、君はなかなか変わってるようだ」


 笛吹の一体何に対してなるほどと言ったのかわからないが、笛吹が面倒だから適当に言ったというわけでは無いのはわかったようだ。どんな選択をしても結果は変わらない。笛吹はそう言っているのだ。手段や途中経過は笛吹の興味の範囲外であり仕事においてもそれほど重要ではない。

 そうすると必然的に山吹に注目が集まる。考え込んでいたようだがようやく佐藤の方を向いた。


「条件付きで乗りましょう」

「そりゃどうも。条件は?」

「俺たちの邪魔をしないでください、それだけです」


 その言葉に佐藤は小さく笑うと承知した、とだけ答えた。自分たちにとてつもなく有利になるような内容でもない。シンプルだがその言葉に全てが詰まっているように思える。


「協力していただけるのはありがたいんですけど。他の人が手を出すと詳しいことが把握しきれなくなっちゃうんで、極力自分たちでやります。佐藤さんにお願いしたいのはあちらのボスが特殊課に余計なちょっかいを出さないよう念入りに釘を刺してほしいのと、今後どうしても困ったことが起きたら知恵を貸してほしいです」

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