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コールドケース  作者: aqri
模造品の心臓
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2 ある男の体験談

「いや、ご本人も自分のキャラぐらい把握してるでしょうからそういうリアクションされるってわかってると思いますけど。話を思いっきり脱線していいですか、今正直事件の事あまり興味なくなりました。彼氏さんについてもうちょっと詳しく知りたいです。まずはそうですね、その方はまっとうな人間ですか?」

「さすがに今の発言は蹴り殺されると思うぞ。知りたきゃ自分で聞きな。まあとにかく、彼ピの話を参考にすると」

「ちょっと集中力が削がれるんで、別の呼び名でお願いします」

「他に呼びようがないんだからしょうがないだろ、名前俺も知らないし。その人が大月さんにそういえば昔こんなことがあったんだけど、って話から発覚した」


 なんでも大月の恋人はかなりの田舎出身らしく山奥に住んでいたそうだ。しかも父親との二人暮らしで周囲に近隣住民はない。たまたま遠出をしたときにとある町に立ち寄った。


「最初の事件みたいに箱の周りが血で濡れてるとか明らかな事件性が見られればちょっと騒ぎになったんだろうけど。二件目は正直事件ってわけじゃない。現に彼氏さんは不思議な事があったな、くらいな認識だ。話を聞いた大月さんもそういう判断だった。話を聞いた時はその出来事から十年以上経過してたらしいからな」


 男は普段父親と二人暮らしで山奥に住んでいたが、母の命日だけは買い物に降りるようにしていた。山には何もないのでお供え物、特に花と母親が好きだった甘いものを買おうと決めていた。いつも同じ場所で買い物をするというわけではなく今年はあの村に行ってみよう、去年はあそこに行ったから今年はこっちに行ってみようかと毎年違う場所を選んでいたため、その町に来たのは今回が初めてだった。

 過疎化が進みほとんど老人しかいない。スーパーなどもなく個人経営のコンビニのような日用品がある程度揃っている店が数件あるだけだった。

 さすがに花はなかったが饅頭などの甘味はあったのでそれを買う。どうやらこの店の手作り品らしく使い捨てのパックに無造作に詰められた、バーコードもない草餅。道の駅で売られているような物にも似ている。地元住民ではない男に店の者は興味津々だ。あれこれ聞いて来る会話を上手くかわして支払いを済ませようとすると、そういえばと店の者が言った。


「お客さんこんな話知ってるかい? この町にはある家に大きなからくり箱があるんだけど。それ、数年に一回のペースでおかしなことが起きるのよ」

「何が起きるんですか?」

「場所が移動してるんですって、勝手に。でも移動しようにも、そのからくり箱ものすごく重いらしくて。男の人三人がかりでようやく動かしたらしいけど」

「怖いですね」

「怖い、のかしらね? 特に何かあるわけじゃないから、皆慣れちゃったのよね。ああまたか、って感じで。運ぶの手伝ってくれた人誘って宴会開くのがお約束になってきたから別にそこまでって感じ」



「そこまでって感じじゃない気がするんですけど」

「なかなか凄いよな。慣れちゃった、で片付けるんだもんな。田舎だからっていう決めつけはよくないにしても、そこに住んでる人全体があんまり細かいこと考えない気質の人が多いんだろうな」



 普段山の中にこもって生活をしているのでそういう話は少しだけ興味がわいた。あまり深く関わるつもりもなかったが。動いているのなら動かしているものがいるということだ。おそらくそれは人ではない気がした。



「彼氏さんずいぶん柔軟な発想する方なんですね。普通に怪奇現象として受け入れてるってことですか」

「思い込みが激しいっていうわけじゃなくてむしろ逆だって言ってた。冷静だからこそ一つのことに決めつけず多角的に物事を見る人なんだそうだ」



 人の力では動かせないくらいに重いものが場所を移動している。少しだけ話を聞いてみると引きずったような痕はなく家の中にあったはずなのに玄関の外にあったり、物置小屋の前にあったり。それも一晩の間に住民に気づかれることなく動いているので音がしていないということだ。移動する頻度は不定期で毎年必ず同じ日に移動するというわけでもない、一年前に動いたと思えば五年以上動かなかったこともある。

 一度だけ何か良くないものでもついているのではないかと地元にある神社の神主にお祓いを頼んだそうだ。


「お祓いは一応やったんだけどね、神主さんが首をかしげながら悪いものじゃなさそうだって言ったらしいのよ」

「その神主さん霊感とかあるんですか」

「さあねえ。お酒が好きで地元の人とも結構仲が良いから信頼をされてて、あの人がそういうんだったら悪いものじゃないんだろうってことでみんな安心しちゃったっていうのはあるわ」

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