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コールドケース  作者: aqri
模造品の心臓
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1 からくり箱の続きの話

 山吹からの報告を受けて大月は少し考える。思った以上に「田中」の活動が活発で自分たちの方にも影響が出始めたので一度山吹たちの活動を止めたが、これはいよいよどうにかしなければいけない。正直自分や課長に何か影響が出てもどうでも良いのだが、累に影響が出るのがまずい。

 ハルと田中は全く連携をしておらず、むしろ田中がハルを利用している節があるのはわかっていた。しかしハルもそこまで馬鹿では無いらしくどうやら累の情報を一切田中に渡していなかったようだ。というよりも累が特別な存在であるとハルが全く気づいていなかったように思える。


 小野寺の報告ではハルが殺人事件を起こし、それに気づいた累が食ってかかったことで容疑者に仕立て上げられてしまったようだ。その場で殺さなかったという事はそっちの方が面白そうだったから、あと累を見下していたからだ。取るに足らない存在としか思っていなかった、彼女の特異性に全く気がついていなかった。

 しかしそこに田中が目をつけてしまったのだ。累を手に入れようとしたようだが、小野寺とその相方がついていることに気づきあまりにも分が悪いと一旦引いたらしい。

 次に目をつけるとしたらおそらく葛薫。彼もまた普通の人間とは違う。こちらも佐藤が付いているのでそう簡単に利用されないとは思うが。山吹からのメールに書かれている一文。


『親玉さんは神様を作りたいんじゃなくて神の心臓を作りたいんだとしたら、その材料になり得るのは今のところルイちゃんと葛君で合ってますよね?』


 自分からはほとんど情報を与えていないというのにここまで答えにたどり着いたのかと感心するのを通り越して少し呆れてしまう。ちゃらんぽらんに見えて、小野寺といい勝負しそうなくらい頭が良い。そんなことを考えているとピコン、とメッセージ通知が鳴った。


”山吹たちに全面的に任せていい”


 課長からだ、相変わらず絶妙なタイミングで送ってくる。やれやれ、と大月も腹をくくる。何かあった時の責任は本人、とは言っているが組織である以上は上司である自分の責任だ。

 まあ、あいつらならいいか。そんなふうに思う。山吹一人でも、まして笛吹一人でも絶対にダメだが二人ならなんやかんや器用にこなす。


「大月さんから正式に許可出た、佐藤さんと会うこと。絶対に神の心臓寄越せって交渉してくるから渡したら氷漬けな、だってさ」

「じゃあ出かけましょうか。それにしてもなんでみんなそんなに神の心臓が欲しいんでしょうね。どうだっていいじゃないですかそんなもの」


 神の心臓を手に入れるとなるとすぐに思いつくのは、自分が神になれるか心臓が無い神の力を自分で操ることができるか。いずれにせよ莫大な力を手に入れることができるというのは容易に想像ができる。そんなことをして何が楽しいのか、笛吹にはまったく理解できない。


「俺は神様じゃないから気持ちわからん」

「なるほど。俺もです」


 二人は指定された場所へと出かける。馬鹿正直に神の心臓は山吹が持ち歩いていた。持って行かなければいいのにと思うが、そこは山吹なりに何か考えているのだろう。というよりも神の心臓を持っていることが佐藤と会うためのチケットのようなものなのかもしれない。持っていかなかったらおそらく佐藤は来ていない気がした。

 指定された場所は少し距離がある。電車で行くよりは車かな、ということで運転は山吹だ。以前笛吹に運転させたらブレーキのないジェットコースターのようだったので、運転するなと言われている。


「ところで数トンある物持って車に乗って大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、違法ギリギリアウトな仕様に改造してあるから」

「聞かなかったことにします」


 特殊課の車はパトカーではない、いわゆるファミリーカーというやつだ。証拠品を回収しやすいようにとトランクが大きめ、後部シートを倒せばもっと広くなるタイプだ。


「着くまでに時間あるなあ。からくり箱の証拠品がモヤッとしたままだから続きでも話すか」

「続きあるんですか」

「わざわざ知る必要ないから省いたけど実はある。同じような事件がもう一件」

「資料に残ってないし備考欄とかにも書いてなかったって事は事件としては取り扱われてないんですか」

「これに関してはそういう出来事を知ってるっていうだけだ。しかも知ってるのは一般人だからな。具体的に言えば大月さんの彼ピな」


 そこで長い長い沈黙が訪れる。車の中は特に音楽をかけているわけでもない。ひたすらに車を走らせる音が続いた。くあー、と山吹が大きなあくびをしたところで。


「……は?」

「すげえ長かったな、ばれたら殺されるから気を付けろよ」

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