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コールドケース  作者: aqri
真名
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5 「逮捕」した理由は

「本当に概要を話しただけだけど他に何か知りたいことあるか。真名事件は俺たちの所には資料も証拠品も来てないから俺もあんまりよく知らない。調べればわかると思うけど、正直事件の内容自体はルイちゃんのことを知るにはあまり関係ないと思うから」

「ルイさんが特殊な存在だとして。彼女の存在を田中さんが狙ってこなかったのはなぜなんでしょうね」

「単純に考えれば田中さんよりルイちゃんの方が強いってことだろう。ルイちゃんの存在を田中さんはキャッチすることができなかったんだ」

「でもバラバラ殺人事件で田中さんも気づいた。そういった者たちに利用されないために保護したんですね。小野寺さんが慌てるわけだ」


 そこまで話していて少し山吹が真剣な表情になり黙り込む。何か思いついたのだろうと次の言葉を持っていると山吹は立ち上がった。


「脳みそしゃっきりさせたいから飲み物買ってくるわ。何か飲むか」

「ブラックコーヒーお願いします」

「一応エナジードリンクも売ってるけど」

「あれただの砂糖水ですから」


 山吹が部屋を出て歩いていく姿を見送りながらなんとなく笛吹は思う。あまり良くないことを思いついたんだろうなと。

 山吹はこれだという確信を持った考えに対してはいつも余裕の表情でわかりやすく説明してくれるが、自分たちや部署にとってマイナスになりそうなことに関しては非常に思慮深く、本当にその考えが合っているか客観的に見つめるために一旦別の作業などを挟むようにしている。飲み物を買いに行く、体を動かす、これらの行動があるとき大体は良くないことを思いついた時だ。そしてそれは今のところ的中率が十割である。

 山吹のデスクにいる冷水の中で優雅に泳ぐ熱帯魚に話しかける。


「山吹さんが貴女と会話できたらもっと良いアイディア浮かんだのかもしれませんけどね」


『別にいいわよ。貴方達の会話を聞いているだけで楽しいから。もう少し私も楽しみたいから、あなたも彼位ひらめきを磨いてほしいところなんだけど。あなたはそういう人じゃないのよね』


「自分でも必要なことしか考えるつもりないので。わからない事は山吹さんが教えてくれますし、二人で同じ事考えて同じ結論出したって意味ないじゃないですか」


『それは確かに。本当に貴方達とても相性が良いコンビだわ、デコボコに見えてピッタリはまってる』


「俺もそう思います」

「なーにぶつぶつ独り言いってるんだ」


 飲み物を買って戻ってきた山吹が笛吹にコーヒーを渡した。


「ありがとうございます」

「自販機の前でたまたま捜査一課の奴と会ったんだけど」

「へー」

「アレもう多分死んでるわ。ハルちゃんかな、殺されて操られてるっぽい。いよいよ警視庁内にも侵入者が現れ始めたか。だいぶ幼稚だけどな」

「特殊課に行きたいんでしょうけど無理ですね。同じ建物の中にはありますけど特殊課以外の人全員ここに来れるようにはできてないですから。その人はそのまま放置ですか?」

「ちょうど掃除チームの片割れが飲み物買いに来たから任せてきた」

「なるほど。ゴミですもんね」

「否定はしない。さて、行方不明扱いになるのかそんな奴は最初からこの世に存在してない事にされるのか。徹夜明けで機嫌悪そうだったから、後者かなたぶん」


 あはは、と軽く笑うと買ってきた飲み物を飲みながらふうと大きく息を吐いた。


「ちょっと俺の思いついたこと言うから率直な感想聞かせてくれよ、いつもとは逆パターンだな」

「分りました。聞くまでもなく多分その考え合ってるんだと思いますけどね」

「合ってるかどうか知りたいっていうよりは、笛吹の意見が聞きたいかな。俺たちの方針を全部俺が決めるわけでもないし、正直今後どうするか悩ましいところでもあるから」

「そうですか、山吹さんがそう言うのなら気合入れて真剣に考えてみます。それで何思いついたんですか」

「ルイちゃんが普通の人間じゃないのって田中さん達がやってる実験や検証の賜物じゃないかなって思った。やったのは田中さんでもハルちゃんでもない、親分さんとかな」


 それを聞いて笛吹も数秒間沈黙して考える。


「確かこの部署に昔大打撃を受けた策略と島が一つ島民ごと消えてしまう出来事があったんでしたね。田中さんや馬鹿女子高生がやっている内容と比べたら質もレベルも段違いだ。親分さんがやっている内容は明らかに規模が違う、ルイさんも親分さんがやった検証結果っていうことですか」

「結構強引なこじつけかもしれないけど。彼女の場合最初からそういう目的で名前をつけられたっていうのは明確だ。じゃあ一体誰がつけたんだって話だろ」


 田中たちの目的は神を作れるかどうか。累を使って神を作れるか試したということだろうか、いや違う気がする。

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