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コールドケース  作者: aqri
真名
67/91

4 累との出会い

「他の奴に見られるとまずい、始末書も厳罰も全部俺が責任取るからこの子を事務所で匿っておいてほしい」


 前代未聞だ、そんなこと許されるわけがない。ということを小野寺も言うまでもなくわかっているのだから相当な覚悟の上で行っているということがわかった。連れてこられた女子高生は何か言いたそうにはしているが少しうつむいて何も言わない。


「よくわかりませんけど、わっかりました」

「すまない、頼んだ」


 そのまま小野寺は急いでどこかへと出かけていった。改めて少女の方を見るとスポーツ系の部活をしているらしく日焼けした肌、短い髪、とても健康的な見た目だ。


「じゃあとりあえずその辺に座ってよ」


 少女は戸惑った様子だったが小さく頷く。




「ここに入れたんですか」


 さすがに驚いたらしく笛吹は興味深そうだ。ここに特殊課以外の人間を入れるなどおそらく前例がない。


「もちろん保管庫の方には行ってない。特殊課に他の課の奴が来ることはないけど念のため死角になる場所には座ってもらって暇つぶししてた」

「何してたんですか」

「ストライクブラザーズ」

「ゲームでしたっけ」

「そう。別のチームの奴らの私物だったけど勝手に借りた。ボコボコに負けた」

「山吹さんの場合夢中になりすぎてコントローラを壊しただけでは?」

「あ、やっぱわかるか」




「何も聞かないんですか」


 二人とも自分のスマホでゲームをしながらなので相手の顔を見ていない。ゲームは圧倒的に累の有利だった。先ほどまでやっていたゲームは山吹がコントローラーを壊してしまったのでスマホの対戦型ゲームをやっている。スマホだけは絶対に壊したくないと山吹はとても慎重に操作していた。


「俺に必要なことだったら聞くけどね。今んとこ必要ないから聞かない。何か聞いて欲しいんだったら聞くけど」

「いえ、別に……あなたも何も知らされてないみたいですから。あ、ひとつだけいいですか」

「はいよ?」

「さっきの人名前はなんていうんですか」

「小野寺さん」

「ありがとうございます。前にも一度会ったことがあってその時は特に自己紹介とかしなかったから」


 二回も彼に会ったのなら普通の子じゃないな。そう思いながらとりあえず課長たちには小野寺から連絡がいっただろうから何か指示が来ていないかとパソコンを見てみると大月から連絡をよこせとメッセージが来ていた。

 これはメールではなくて電話だなと思い大月に電話をするとワンコールもしないうちにすぐに出た。


「今から言うことをお前の中の最速で対応しろ」

「了解でーす」


 そこから大月からはいろいろな指示が出た。紙に文字を書いてそれをドアに貼り付けろだの、トイレにある鏡を一つ引っぺがしてきて課長の席の後ろにつけろだの。やっている事の意味は全くわからなかったがこれが累を守るための何らかの手段だということぐらいはわかった。

 そして累自身に指示を与えるのでスピーカーにしろと言われてスピーカー状態に設定すると累の前にスマホを置いた。


「通報があった、公園で見つかったバラバラの遺体の殺人犯は君だという内容のものだ」

「誰が通報したのか何となく想像がついているのでいいです」

「君の身の安全を確保するためにも君にはこのまま殺人犯になってもらう。今後はこちらの指示に全て従え」

「……分りました」


 非常に短い会話だった。累自身が全く慌てた様子もなくこれからどうなるんだとか、そういう事は一切聞いてこない。自分に何があったのかも説明するわけでもない。勝手に出歩いたり話しかけたりもしてこないし素直にすべての指示に従った。

 累と一緒にいたのはおよそ一時間ほどだ。一時間後には大月が事務所に戻ってきて累は彼女に連れられてそのままどこかに出かけていった。たった一時間だけだったが山吹は累が只者でない事は感じ取っていた。

 一緒にいる時の、息苦しさがそれを物語っていた。累が真面目そうな印象でなかったら手足をへし折って拘束していたところだ。


「その後聞いた話だと予定通り殺人事件の容疑者として逮捕された。捜査一課に渡さないためにいろんな手続きとかは大月さんがやってくれたみたいだ。とりあえず小野寺さんの手伝いを始めるってことでルイちゃんは特殊課のアルバイトっていう形で所属することになった」

「それが思いのほか優秀で山吹さんも、というより特殊課のサポート役をやってもらうことになったってことですね」

「彼女はもう表の世界じゃ生きていけない、この事件が世間一般から忘れられたとしても彼女はこのままずっと特殊課所属のアルバイトだ。多分戸籍も偽造されてるんじゃないかな。俺から一つ言えるのは、なんとなくだけどお前は最悪に相性が悪そうだからルイちゃんには近寄らないほうがいい」

「まあそんな感じですね。そんな気がします」

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