3 バラバラ殺人の容疑者
「神か悪魔か何かと契約して藤堂をぶっ殺してもらった、そのかわりその事実を口にすることができないっていう契約内容だ、みたいに考えてるとしたら外れだ」
「ハズレでしたか」
「名前ポイントが高すぎることを考えればわざわざそんな契約なんかしなくたってルイちゃん一人で何とかできる。多分この間の水鏡みたいなもんだよ」
「ああ、なるほど。本人の意思とは無関係に跳ね返してしまったんですか。それでこの資料にそう書いてあるんですね」
「累」の名前は強すぎた。何か危害を加えようが呪いをかけようが普通の人ではできないようなことをしようが。累は全く効なかった。
その名前は確かに本人を守った。藤堂は自分を守る術を持っていなかった。
「実際会うとわかるけど結構不思議な雰囲気の子なんだよ。あの子の存在そのものが何百面鏡って感じだ。それとも何百種類も色があるルービックキューブかな。何か影響与えようとするとどこかで色が揃ってまた別の影響を及ぼす。パズルゲームで三連鎖させようとしたら二十連鎖ぐらいが起きるようなもんだ、あの子に何かすると」
「まるでレベル一億のバリアがあるみたいですね」
「それに近いかもな」
その事実がわかったとしても特殊課で何かをしたというわけではない。彼らの仕事の範疇外だ、この先も累は普通の女の子として生きていけばいい。そこで何かに巻き込まれ事件が起きたのなら調査をして承認するのが特殊課の仕事だ。
「それがあってから一年後だ。彼女自身が巻き込まれる事件が発生した」
一時、名前占い師という者がSNSで話題となった。町で突然名前を言い当てられ、名前を占われると良いことばかり起きるという。占い師を探す者が増えて情報交換も頻繁に行われた。
「名前っていうパワーワードに課長と大月さんが少し引っかかっててな。もし名前占い師に累ちゃんの名前を占ってもらったらどうなっちゃうんだろうって。なんて言えばいいのかな、ロケットの打ち上げ失敗みたいな大爆発が起きるんじゃないかってさすがに心配したみたいだ」
名前占い師がまともなやり方ではない占いをしていたのは間違いなかった。その力と累の名前の力、この二つは最悪に相性が悪いと思われた。この二人を出会わせてはいけない、そう結論づけた特殊課は密かに調査に乗り出した。動いたのは小野寺だけだ、相方はあまりにも相性が悪すぎる。
少し調べると占い師を探すための大規模な捜索活動が行われるとSNSで書き込みがを見つけた。それを企画したのは間違いなく累だった。自分の名前を悲観して名前を占ってもらうことで良い人生にしたい、という感じではなかった。あまりにも危機迫るものを感じたのだ。
「人手が足りないから手伝えって言われて俺がSNSや掲示板なんかをざっとチェックした。ルイちゃんと思われる書き込みはだいぶ切羽詰まっている様子だった、大勢に捜索協力頼んでたからな。これは自分の名前を名乗って欲しいんじゃなくて名前占い師の活動をなんとかやめさせたいって思ってるんじゃないかなと思ってそれを小野寺さんに伝えた」
「俺がここに来る前のことですか」
「捜査一課にはいた頃だ、この部署には来てなかったけど。俺が関わったのはここだけ、とりあえずルイちゃんと接触して名前占い師と絶対に関わらないように釘を刺すかっていう話だった時にバラバラの遺体が見つかった」
公園でバラバラ遺体が見つかった。被害者の女性は名前占い師を探しており探偵事務所にまで依頼をしていた。その探偵事務所から情報提供を受け捜査一課は殺人事件を調査することとなる。
「そういえばそんな感じのがあった気がします」
「だったら事件の概要は笛吹の方が詳しいだろ」
「確か一般人からの情報提供で犯人を確定できたってあっさり終わっちゃったんですよね。なるほど情報提供が馬鹿女子高生でしたか」
「通報を受けたっていうのも全部俺らに筒抜けだったから、そのままルイちゃんを殺人容疑で逮捕するって形で保護することにしたんだ。もしかしたらハルちゃんがルイちゃんにちょっかい出し始めてたのかもな。小野寺さんにしては珍しく結構強引な手を使ったみたいでルイちゃん本人を連れ帰ってきたからちょっとびっくりした」
捜査一課には見られないように裏口から累を連れて小野寺が事務所に入ってきた。この時たまたま事務所にいたのは山吹だけだった、課長の机に承認書を置きに来たのだ。
「どちら様?」
キョトンとしてそう尋ねると小野寺は周囲を警戒しながら女子高生を山吹の方へと預けた。




