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コールドケース  作者: aqri
ローラー
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5 ローラーとは何なのか?

「この頃からこのクラスの様子がおかしいのは他のクラスの生徒からも聞き取り調査で確認されてる。とにかく皆焦ったような、困ったような感じだったそうだ。他のクラスに給食の残りをもらえないか、教師にばれないよう根回しがされてたそうだ」

「そうなるとさすがに他のクラスの子もおかしいと思いますよね、何でそんなに給食がいるのかと」

「ああ。このころからローラーの噂は少しずつ広まっていった。クラスが違っても専攻が同じなら仲が良い子もいるからな。しかし、不思議な事にローラーが見えたのはこのクラスだけ。他のクラスの子供は結局ローラーとやらがなんなのかわからなかったらしい。最終的に教師に給食の件がばれて、衛生面からも持ち帰り禁止となった」




 どうしよう、どんどん大きくなる、というような会話が聞こえるようになったので、「ローラー」は急に成長を始めたようです。それも、想像できないくらい大きく。どれくらい大きいのかはわかりません、その会話には私は参加しなかったので。

 それで。一回だけ、瀬那君と話したんです。私のピアノを聞きに来てくれた日。ピアノを聞くときは瀬那君は一人で来るって決めてたみたいですから二人になるってわかってましたから。


「ねえ、ローラーの事。気が付いてる? クラスの皆がだいぶ変でしょ」

「ああ、なんか皆すごくビクビクしてるね。聞こえてくる会話も最近はあんまり隠さなくなってきたから聞こえるよ。これ以上大きくなるとまずい、そもそもアレなんなんだろう、みたいな」

「ずっと聞けなかったんだけど。ローラーって何だと思う?」

「……誰もいないから言っちゃうとさ。そんなのいないと思うよ」

「どういうこと?」

「見えてるふりしてるだけなんだと思うよ。あの四人組でしょ? 最初って。たぶん、埜口さんへの嫌がらせだったんじゃないの。専攻少し違うけど歌とピアノ、音楽って点では共通点あるし。埜口さんは間違いなく才能あるよ、あの四人じゃ追いつけないくらいの。だから仲間外れの理由が欲しかっただけじゃない」

「クラスの皆は?」

「暇だったから参加しただけ。誰かが強く『こうだ』って言い始めると後の人って引っ込みつかなくなるんだよ。あの四人キャラ強いし、ちょっとクラスの中心だしね。わかんない、なんて言ったら仲間に入れてもらえないって思ってさ。見えてないけど見えてる、いる、って適当に話合わせてただけだと思う。もしくは見えてるはずだよね、みたいに強制されたとかさ。だって、ありえる? 手のひらに乗るくらいの大きさだったのにびっくりするくらいでっかくなる、ピンクで毛はない、牛みたいな泣き声、何でも食べる一部の人にしか見えない生き物」

「正直に言えば、ない、かな」

「でしょ? いないよそんなの。みんなが口裏合わせてるだけ」

「でも、だったら飽きたからって言って終わりにすればいいだけなのに。何で今皆怖がってるんだろう?」

「さあね、それは俺にもわかんないよ。“見えてる”人たちの心理は。あれだけローラーの事でクラス一丸となったから、引くに引けないんじゃないかな。ま、どうでもいいけど」


 瀬那君は演技指導の授業で心理学があったので、人が何でそう考えるか、という観察が良くできてたと思います。だからその時はそうだな、って思って納得しちゃったんですけど。


 今思えば、食べ物が足りないっていうのはどういうことだったんだろうって思います。だって、本当にいないなら食べ物が足りないっていう事にはならないじゃないですか、減らないんだから。実際に持って行ってる給食はどうしてたのかな。

 置いておいて、誰かがこっそり捨ててたとか? どういう風に引っ込みがつかなくなったのか、私にはわかりません。



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