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コールドケース  作者: aqri
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10 敵の狙いはわかった

「全知全能の神ってのは大体暇だ。何せ努力しなくても何でもできちまうんだからな。だから小さいことやくだらないことに全力を注ぐ」

「ちなみにその傍迷惑のブリーダー、田中さんやハルちゃんのボスってことでいいんですよね。わかってる限りで最大の被害って何なんです。まさかうちの部署だけじゃないんでしょう」


 先ほどまでの軽い雰囲気ではなく、ひどく真剣な様子で山吹が訪ねる。


「島が一つ消滅して、そこに住んでいた島民二百八十六人が消滅した。島は初めから無かったという、事実改変が起きている」

「へー」

「へー」


 二人同時にそれだけ言った。そんなとてつもない規模の災厄を招くものが頂点に君臨している。警察の権力や話し合いでどうにかなるレベルではないのは想像していたがその予想を少し超えたのだ。


「とりあえずそのブリーダーさんを直接相手にするのほんとにやめといた方がよさそうですね、絶対どうにもなりませんよ俺たちじゃ」

「そっちの件は佐藤に任せてある、ほっとけ。改めて確認だがお前たちがやる事は田中、こいつの対応だ。小金井ハルと違ってこいつは厄介なものを大量生産しやがる。それも複数個同時にだ。さっさとどうにかしろ」

「はーい」

「わかりました」

「小野寺たちの案件とお前たちの案件管理するのは大月に任せた。わからんことがあったらあいつに聞け。小金井ハルはお前たちは無視しろ、苛ついたらぶん殴って構わん。以上だ」


 そう言うと次の瞬間には課長の姿はなかった。


「さて、田中さんを引っ張り出す作戦会議をしておくか」

「今日はもう気分が乗らないからやりませんけど、田中さんが起こしたと思われる事件拾っておきましょうか。あと神様の心臓もあのまま棚に飾っておくってわけにもいかないでしょうし」

「いや、鍵直してるから大丈夫だろ。とりあえずどうすっかなあ。挑発には乗らないとなると、やっぱ心臓をエサかな」

「キーホルダーにしてカバンにでもつけますか」

「あれを?……いや、意外といけるかな? 持ち歩く作戦でいくか」

「え、マジですか」

「お前が言ったんだろうが」


 言いながら一度保管庫に降りて神の心臓を持ってくる。箱を開けて中身を出す。中から出てきたのは箱だ、それをあければまた箱。


「マトリョーシカですか」

「七重にしないといけなくてなー」


 最終的に出てきたのはクルミほどの大きさの、というよりクルミにしか見えないもの。それをつまみ上げるとホレ、と見せてくる。


「素手でいけるんですか」

「触るのは平気」


 そう言うとそれを持ったまま笛吹を外に促した。


「じゃ、散歩行ってみるかね。とりあえず様子見だ、なんか来たらフォローよろしく」

「やっぱりストレートに行くしかないですよね」

「挑発やひっかけにのらないんだったらこそこそ隠れて様子見る必要なんてない。お前を釣り上げるための餌だぞってアピールしながら持ち歩いて堂々と行動するしかないからな。慎重な奴には小細工は時間の無駄だ」


 この方法は言うまでもなくとんでもないリスクがある。自分の命もそうだがこれを奪われたときのリスクだ。普通のものだったら絶対にやらない超がつくほどのハイリスクハイリターン。少し博打に打って出るということをやらない山吹がこういう行動しているのだ。何とかなるという受動的な考えではなくなんとかするという能動的な考えの下だということがわかる。

 それなら相方である笛吹はそれを全力でサポートするだけだ。そのために特殊課は必ず二人一組なのだから。

 部署内のチャットツールにその内容を打ち込むと課長からは好きにしろ、大月からはクソばか、小野寺からは了解ですという返事がそれぞれ打ち込まれた。


「さあて、この心臓が田中さんにどのくらい大切なものか、その他大勢にとってもどれくらい食いつきがあるのか。様子見といくか」

「ちなみに」

「ん?」

「人じゃないのがちょっかいかけてきた時はどうするんですか」


 その問いに山吹はあはは、と軽く笑う。


「そりゃお前、どうにでもしていいだろ。この世で法律に守られてないモンに気遣う必要ねえわ」

「ですよね」

「粉にすんぞ」

「ですよね」


 心臓を持ったまま山吹はそのまま外に出る。さて、どうなるかな、と思っていると周囲の空気が振動しブチブチ、というおかしな音がした。振り返ればすでに笛吹がいるので口笛で何かやったようだ。


「何かあったか」

「ハエ取り紙みたいのがうじゃうじゃあったので全部壊しました」


 くだらない罠を大量にしかけているとなると。


「ハルちゃん諦めてねぇな」

「やりたいことがあるならやればいいと思いますけど。あと、こういうのが全部田中さんに筒抜けになるから田中さんにはラッキーですかね」

「まあ、俺らの特徴なんて簡単にバレるだろうから遅いか早いかの差だろ。その辺は俺らにゃ関係ないから気にすんな」


 自分たちの特徴がバレて相手がどんな手を打つかなんてわかるはずもない。相手は普通の人間ではないのだ。それならその場の状況判断でどうにかするしかない。特殊課とは、そういう仕事の進め方だ。常識の範囲外の事を扱っているのだから、常識にとらわれない言動が必要となる。それができない者は所属できない。

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