表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コールドケース  作者: aqri
接触
47/91

8 それぞれの事情

 ケホケホと咳き込むと血を吐き出した。繋いでいた意識を切るのがもう一瞬遅れていたら間違いなく死んでいただろう。なんだったのださっきのは。

 こんな事は初めてだった、何をやっても自分はうまくいくのに。ほんの少し恐怖を抱いてしまったことに一気に怒りが湧く。そしてどこからか声が聞こえた。


へたくそ。


 怒鳴り返しそうになったのを何とか押さえ込む。ムキになったらまた馬鹿にしてくるに決まっている。


あそこは俺がやるからちょっかい出すのって言ったのに。自業自得だ馬鹿。テスト勉強でもしてれば。


 クスクスと小さく笑い声が聞こえ完全に気配が消えた。まさか自分の行動も全て筒抜けになっていたとは。足元に置いていた小さな壺を思いっきり壁に叩きつける。ガシャンと壺は割れて中に入っていた骨が散乱した。

 絶対にこのままにするものか、あいつらも、クソ生意気なアイツも。まとめてぐちゃぐちゃにしてやる。

 怒りに震え、ハルは口元の血を拭うと薄暗い部屋を出た。壺が割れてあたりに飛び散った骨は炭のように真っ黒になり砂となりそのまま消えてしまう。


「……だめです、消えました。片倉ひまりの骨は回収不可能です」


 ある建物を見つめていた小野寺はメガネをかけながら隣にいた課長にそう声をかける。


「そうか。戻るぞ、もう用はない」


 言いながらすでに歩き始めている課長に対し、もう一人いた男、小野寺の相方がケラケラと面白そうに笑った。


「あのバカ女消すこともできるけど?」

「やりたきゃやれ。俺は忙しいから後始末は全部自分でやれよ」

「えー」


 えー、を言っている頃にはもう課長の姿はない。片倉ひまりの壺を触れるのは課長か大月しかいない。大月は別件でここには来れなかったので課長がここにきたのだが徒労だった。


「才能はあるのに全く生かしきれてない、ボス猿にも同僚にも見下されていいように使われるだけ。本当にどうしようもねえガキだな。想像以上に期待はずれだ」

「監視の必要もなさそうですね。大したことを知らないでしょうし、彼女からカミサマにたどり着くことはできないでしょう」

「じゃぁさっくり始末しておくか」


 そう言うと男は軽く右腕を上げるが、小野寺はすでに踵を返している。


「少しだけ利用価値があるのでそのままにしておいてください」

「へー? お前がそういう風にいうの珍しいな」


「累の件で少し。いろいろな事が混ざり合っていますが今回のケース分けて考えた方がわかりやすいです。累がちょっかい出された件がハル、神様の件が田中さん」


 そこまで聞くと男は腹を抱えて笑いだす。


「まじで田中さんて呼ぶのかよ」

「名前があった方が便利ですからね。とにかく田中さんの件は承認チームに任せましょう。本来調査は俺たちの仕事ですが、二人の特性を考えても田中さんとは相性が良いですよ」

「全然興味ねえからそういや知らねーんだけど。どんなやつらだったっけ」

「軽そうに見えて無茶苦茶思慮深い馬鹿力男と、冷静そうに見えて救いようのない大雑把な爆竹男です。ちょうどいい組み合わせなんですよあの二人は」

「めんどくせえ連中」

「前者は別にいいんですけど、後者の新人はちょっといろいろ問題がありまして。前者の男、山吹にしか取り扱いができないと思います。扱い方間違えるとあなたよりタチ悪いですからね、笛吹は」

「ああ、そりゃあ最悪にタチ悪いしクソだな。俺と同じで生きてる価値ねえわ」


 影を操って侵入者を消そうとしたときにチラリと見えた男。巻き込まれないように飛び退いて少し驚いた表情していた。いたって普通の反応だったので大した事ないつまらない奴だと思っていたが、どうやらあまり自分が好きなタイプではないらしい。腹の中がまったく読めないという事だ。怯えたり驚いて間抜けな顔をしていたというよりは、自分の実力で対抗できるかを考えていたのかもしれない。

牙をむけるか、否か。


「まぁ俺が会う事ってないからいいか。死んだら自分の身一つ守れないそいつがゴミだったってだけだからな」

「その辺の相性も山吹はいいんですよ。仕事はきちんとやりますから任せておきましょう。それより悪魔召喚の件と累の件、いい加減決着をつけたいのであなたもやる気スイッチ入れて頑張ってください。これ以上あっち行ってこっち行ってくり返したくありません」

「俺のやる気スイッチ心臓の中にあるんだよ。押したきゃ手つっこみな」


 くくっと笑いながらそんなことをいう相方に、小野寺は小さくため息をついた。


「いやですよ、クリーニング代いくらかかると思ってるんですか」


 その返事が気に入ったらしく男は再びケラケラとからか笑い飛ばしその場から姿を消した。小野寺もその場を後にする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ