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コールドケース  作者: aqri
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7 神の心臓

「たとえパチモンだとしても使い方によっちゃ役に立つんだろう。おかしなおもちゃを作り出すのが好きな田中さんやハルちゃんなんかはもしかしたら欲しいかもねって話。食いついてくれるかがわからんが、田中さんを引っ張り出すにはリスクを背負わないとな」

「例えばその心臓をユピテに入れたら?」

「機械じかけの神様でもできるんじゃないかな。そしたらブチ切れて真っ先に俺たちに天罰下しに来ると思うけど」

「確かにそういう使い方なんでしょうね、心臓ですし。心臓がないものに使う必要がある。片倉ひまりみたいなツボの中身に使われると厄介ですね」


 そこまで言うと山吹は、ふむ、と少し考え込む。今までの話から何か思いついたようだ。一から十までを聞き十一を知る、山吹のひらめきやアイディアが頼りになる。

 いつもはほんの数秒考えてアイディアを口にするのだが珍しく今日は考えている時間が長い。長考の邪魔をしないようにモグモグとバナナを食べていた。


「よし」

「何か思いつきましたか」

「とりあえず上司に相談ってことで。上に行ったらお前にも説明するけど。なんとなくこんな感じかなっていう予想が一つできた」

「これだけの情報だけでですか、結構すごいですね」

「お前よりは数年多くここで働いてるからな。ちょっと心当たりがあるんだよいくつかの事件と。突発的に起きた出来事のケースと、思い返してみるとちょっと違うかなと思うケース。数式みたいなもんかな、一見すると普通の解だけど、じゃあこの解に至るまでの式をひもといてみると、1+1に見えて実はとんでもない数のIF関数使ってたりとかな」


 起きた結果としては解だったが、それに至るまでの出来事は多分こうだったんじゃないかという予想の範囲でしかない。なぜなら彼らは事件が起きてからの対応だ、事件を直接見ていない。

 2という解があって、はたから見ればただの1+1と思われる。

しかしもしその事件に立ち会って直接行き来をしていたら括弧の中に複雑な数式があると気づいたかもしれない。

 もちろん彼らの仕事はその式の部分を解き明かすことではない。あくまで調査の終わった事件の証拠品の保管をするだけだ。今回は事情が事情なだけに特別措置だと考えた方が良い。既にハルからのちょっかいまでかかってきている。


「とりあえずもしも小野寺さんが片倉ひまりの壺をもって帰ってきたらどうやって保管するか考えないとな。奪われないかっていう点でも対処が必要だけど、普通にどうやって保管するか問題なんだよ」

「アイツには事情説明してちょうどいいのないか聞いてはみましたけど。連絡がないから今のところはそれらしいのがないのかもしれません」

「この辺も課長に相談だな。佐藤さんに物を探してもらったほうがいいかもしれない」


 今この会話も聞かれているという前提なので葛の名前は出さなかった。大丈夫だと思うが念のためだ。佐藤のほうはどうせ偽名だろうし自分で何とかしてくれると思うので二人は気にしていない。

 課長に連絡を入れると色々と向こうも話したいことがあるらしく一度署に戻るから時間を空けておけと返事が来た。


「課長にお会いするの久しぶりですね」

「俺も。大月さんとの会議の話もいってるだろうに、それでもまた話をしたいって事は具体的な方針が決まったってところかな」


 じゃあそろそろ戻るかと再び山吹は一気に走り出す。笛吹も電動バイクにまたがりエレベーターのあるところに向かって走りだした。スピードを上げて山吹の隣にぴたりとつく。


「山吹さん」

「んー?」

「カミサマっているんですかね」


 そういうことを聞いてくるのも珍しいなと思いチラリと笛吹を見れば、その顔は無表情だ。いつも感情の起伏などないが、今の笛吹は初めて出会った時のように本当に何もない「無」の状態。


「神様っぽいものはいるんじゃないかな」


 そんなことを言えば、意外だったのか少し戸惑った様子でチラリと山吹を見た。


「っぽいもの」

「何せ八百万の国だからなここは。自分は神様だって名乗ったら神様だよ。そこを外野がこいつは神様だけどこいつは神様じゃないって線引きする必要あるか?」

「……ない、ですね。名乗りたければ名乗ればいいし、崇めたければ崇めればいい」

「俺毎年ちゃんと初詣にも行ってるけど一度も神様に会ったことねえわ。片倉ひまりが崇めた神様とやらがとんでもないモノじゃないことを祈ろう」

「神様に?」

「いやあ、田中さんにだろ」

「田中さんも一応神様なんですかね」

「そんな大層なもんじゃなさげだけど。出涸らしとか上澄みとか三回使った紅茶のティーバックとかだろ」


 山吹のその返答が笛吹にどんなことを考えさせたのかわからない。そうですねと言って二人はそのままエレベーターに戻った。


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