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コールドケース  作者: aqri
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6 資料の内容とは

「鍵あけといたぞ」


 冷凍保管庫の前でおやつを食べている山吹と合流し、自転車から降りた笛吹は肩にかかっていたゴミをパンパンと手で払う。


「何かあった?」

「m257ayd09pが戯れてきました」

「あれ冷凍保管してないからな。ちゃんと壊さずに対応できたか」

「一応。なんかビビられたみたいで、棚の裏に隠れちゃいました」

「おいたはしちゃいかんて俺も二回ぐらい言ってるから、いい薬になっただろ。さて、行くかね」


 冷凍保管庫の中に入ると身を切るような寒さが肌を刺激する。マイナス三十八度、長時間いられる場所ではない。寒い寒いと言いながら山吹はずんずんと先に進んでいく。保管庫の中は広く今まで回収した生物系の証拠品が番号順に並べられていた。

 山吹を先頭に歩き続けていたがある場所に来ると山吹はぴたりと足を止めた。奥にはまだ部屋が続いており足を止めた場所にはこれといって変わったものは無い。


「多分ここだよな。他の証拠品が一定距離保ちながら保管されているのにここだけ隙間がほんのちょっと広い」


 証拠品の保管は決められたスペースを空けて保管することがルールとして決まっている。それはその証拠品の特性に合わせて距離が長かったり短かったり。他の物との距離が一番長いのはローラーだ。隣の保管品までおよそ五メートル以上。その他は大体1メートル間隔位だ。しかし今山吹が足を止めたところはおよそ1メートル弱。きっちり1メートル間隔ではないのでぱっと見ではあまり不自然には思えない。


「とりあえず開けゴマって言えば良いのか?」

「俺がいるんで、音声入力対応してくれると思いますよ」


 そう言うと笛吹は口を開く。そして唇も顎も動かしていないのに辺りに奇妙な音が鳴り響いた。それは人間が発せられる言語や声ではない。機械音のような野生動物の威嚇する声のような、奇妙な「音」だった。

 突然目の前に一枚の紙がひらりと落ちてくる。それをつかんだ山吹は「ワオ」と呟いた。


「時間制限付か、十五秒」

「あ、じゃあお願いします」


 山吹は記憶力が良い。写真記憶の持ち主なのかと言いたくなる位資料の一字一句全て覚えている。十五秒間しっかり資料を見つめ、ぴったり十五秒経つとそのまま紙は消えてなくなった。


「面白かったですか」

「どんな内容でしたか、って聞いてこないあたり笛吹らしいよな。まあ面白かったよ。神の心臓、外に持ち出していいかどうか課長に聞いてみよう」


 なぜ面白かったのかと聞いたかと言えば読んでいるときの山吹が実に楽しそうな顔をしていたからだ。あらゆることに興味がない笛吹と違って山吹は好奇心旺盛だ。しかし山吹が心の底から楽しいと思えるものを前にしたところは見たことがない。

 その山吹が絵本を読んでいる子供のように目をキラキラさせて、証拠品を外に出せないか聞いてみようとまで言ってきたのだ。これは間違いなく。


「滅茶苦茶面倒くさいんでしょどうせ」

「イグザクトリィ」


 山吹は手間ひまを楽しむ。どんなに面倒くさいことでも回り道にも、それら全てを楽しむ。本当にこの二人は正反対なのだ。だからこそペアを組んでチームとして行動する。


「とりあえずそうだなぁ」

「そのとりあえず、の前に出ましょうよここ、寒いんですけど」

「そういやそうだった、忘れてた。俺の上着着る?」


 暑さにも寒さにも強い山吹は防寒着など本来ならいらないはずなのだが郷に入りては郷に従えというようにTPOを意識した行動する。手足が冷えてきていた笛吹は遠慮なく上着を羽織った。厚手の上着を二個着ているのでかなりずんぐりむっくりになったが。

 冷凍庫を出た二人は冷蔵庫の前に置いてきた荷物の中から食べ物や飲み物を取り出し思い思いに食べ始める。


「俺の見た内容さっくり説明するぞ。日本にはたくさんの神がいる、多神教だからな。その中でえげつない力を持った神様がいたんだそうだ。あの心臓はその神様の心臓だって言われてる。ただ本物かどうかを証明することができない。本物はそう簡単に見つかるはずもないっていうのもあるみたいで、何百も偽物が見つかってるらしくてな」

「本物か偽物かの証明ができないけれど、あれ単体でもとんでもない力を秘めている。だから保管もできないし持て余してるってことですか」

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