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コールドケース  作者: aqri
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1 見張り当番

 片倉ひまりの事件について、証拠品消失により書類上のみの承認とすると備考欄に書いて課長に提出するために封筒に入れた。クラウド等が発達した現代でも事件に関する承認は必ず現物の書類でと決まっている。笛吹はその理由を知らない。理由を知らなくてもそれをやれば達成できるので問題ないと思っている。自分よりも有能な人間が多数いるこの部署だ、ペーパーレスでいいんじゃないですかなど思いつかない人間の方がいない決まってる。やりたくてもできない、やってはいけない理由があるのだろう。

 鍵屋が鍵を直すまであと三日。この三日間は山吹と笛吹が交代で寝泊まりすることになっている。初日は笛吹の当番だ。保管庫に入る必要はないと大月は言っていたがやはり保管庫にいた方がいいだろう。侵入者が扉から入ってくるとは限らないのだから。

 いつも証拠品を保管場所に置いてくるだけなので気にしたことがなかったが、昔誰かが寝泊まりしていたらしく宿泊するのに困らないものが結構揃っている。さすがに誰かが使ったと思われる寝袋を使う気はないが。


 まず警察署の地下一階に自分たちの事務所スペースがある。そこにエレベーターがあり地下二階が保管庫だ。エレベーターで降りた先の保管庫の最初のスペースが電動バイクやその他の荷物もあるが打ち合わせができる机や椅子、ソファーもある。インテリアのソファーではなく形からするとおそらくソファベッドだ。

 保管庫の中は保管品を劣化させないように温度管理が徹底されていて暑くもなく寒くもない。昔使っていた誰かが増設したらしくパーティションで区切った小さなスペースもある。という事は二人位でここにこもっていたことがあるという事かもしれない、プライバシーの保護なのだろう。トイレは上の階にありコンセントはいくつかある。パソコンと充電器、自分たちのデスクがある方の事務所から冷蔵庫と電子レンジを持ってくればほぼ完璧だ。さすがに風呂はないが一晩入らない位どうにでもなる。


 今は承認しなければいけない事件は扱っていない。こういう時は過去の事件や承認待ちをしている事件のおさらいなどをしている。

 実は証拠品はあるが承認されていない案件はかなりの数がある。一時保管品と書かれている収納にきれいに並べられておりその中から山吹は次はこれ、次はこれといった具合に一つずつ対応しているのだ。


 この一つずつ対応している理由も順番の決め方も笛吹は知らない。慣れてくればいずれ自分もそれをやるのか、それとも山吹の特権なのか。知る必要ができたら聞こうと思っているのでまだその理由も知らない。

 承認待ちの物の中から、承認予定が未定と書かれたものを見つけた。なんらかの理由で承認ができないようだ。証拠品に付いているナンバータグを確認して同じ番号のファイルをパソコンのデータバンクから検索する。そのタイトルを見て、ポツリとつぶやいた。


「……めんどくさそう」


 書かれていたタイトルは「神の心臓」 神が絡むとろくなことがない。承認の予定が決まっているものはわざわざ今確認しなくてもいずれ山吹の説明がつきながらファイルを見るに決まっている。承認予定がないのなら事前に読んでおこうかと思ったのだが、さすが予定が未定なだけあって一筋縄ではいかなそうだ。

 しかしファイル開いてみれば、意外にも内容は簡単だった。というより、簡単すぎる。何故なら二行しか書いていない。


「一九九五年九月三十一日 神が探し求めている心臓。本物である可能性はあるが贋作である可能性も大きい。他の物への影響を考え保管するかどうかは保留。……未定というよりも保管する気がないのか」


 ありえない日付にもその内容にも突っ込まず、笛吹はファイルを閉じた。何らかの事件があるわけでもない、概要が書かれておらず保管に関する注意書きだけだ。

 いい加減というわけではなく逆だ、おそらくとんでもなく重要なもの。それでも現場に保管することなく保留という立ち位置で棚に置かれているのなら、今のところは危険なものではないということだ。

 探し求めているという神が一体何なのかがわからないし、贋作の可能性も大きいと書かれている。つまりこの世には本物があって偽物が多数存在するということだ。

 こういうものが田中さんとか好きそうだよな、というのは笛吹の正直な感想だ。存在からしてとんでもないものである神の心臓。仮にこれが偽物だったとしても可能性があると言われているのなら本物と間違える位に似ている、その特性を持っているということだ。一体何に使うのか知らないが役に立つと考えれば取りに来るんじゃないかな、などと思っていた。

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