4 やるべきこと
「うちの部署で捻り潰さなきゃいけないのはこいつだ。妙なちょっかいをそこら中のやつに出して面倒事を引き寄せる。さっきの箱、願望器、その他いろいろなオシャンティーアイテムを作り出す」
「名前とか具体的な事はまだわかっていないということですか」
このままでは本当にその人物をアホという認識をしてしまいそうな笛吹に聞かれ、大月はそうだと言った。
「他の二人の調査に時間を費やしていたからこっちの調査はあまり進んでいない。それだけどうにかできそうだから優先順位が低かったということだ。水木樋はダントツでヤバイからこいつを最優先で調べた。このアホとハルが一般人を唆し余計なことを次から次へとこさえてくる」
水木樋はそういうことをしていないということだ。そういうことをしていないのに一番警戒するべきだという。この三人の下には複数人の名前が書かれているがおそらく使い捨てなのだろう。そちらをどうにかする必要はなさそうだ。
「最後に一番上の親玉だけどな。こいつにも絶対に関わるなと課長から言われている」
「水木樋の親分ならそうでしょうね」
「正確にはこっちは別の者が対応に動いているということだった。山吹は知ってるだろう、佐藤一郎だ」
「あ~」
納得、というような反応する山吹にその人物を知らない笛吹は誰ですかと聞いた。
「俺も一回しか会ってないんだけど、まあなんかいろいろすごい人だよ。なんでそんなこと知ってるんだっていうようないろんなこと知っているし、何かいろいろ器用だし」
ざっくりとした山吹の説明に大月は呆れ顔だ。
「お前いつもこんなわかりにくい説明してるのか笛吹に」
「知ってることを事実として話すとこんな感じでしょう。実際俺もあの人のこと全然知らないですから。大丈夫ですよ、笛吹は一を聞いたら十を理解する奴なんで」
「一から十まで聞いて十一を知るお前とは正反対ってことか。確かに相性がいいんだなお前たちは。じゃあ笛吹、今の説明で佐藤という人物について何を思った」
「あまり信用しないほうがいいかなと思いました」
その答えに大月は興味がわいたようにふうん? と言い、山吹は満足そうに笑う。
「ほら言ったとおりでしょ」
「なかなか面白いな、どうしてそう考えた」
「いろいろ器用なら裏も表も全て自分でコントロールできるってことですよ。そんな人が自分にとって良い人なわけないじゃないですか」
「素晴らしい、百点」
パチパチと拍手をしながら山吹が言った。
「一を聞いて十を知る奴、本当にいるんだな。それだけ認識していれば大丈夫だ。佐藤は敵ではないが味方にもなり得ない。深く関わりすぎないのが一番良い」
「了解です」
少し話がそれたがまとめると意図的に普通では解決できないようなものを量産している奴がいる、それをどうにかしないと自分たちの仕事は終わらない。こういった事件が起きる理由は様々だ、一貫性はない。しかし意図してそれを作り出されたら人手がいくらあっても足りない。
必要であれば目的等調査をするがそれは山吹たちのチームではなく小野寺達が現在調査中なので山吹たちは別の仕事をすることになる。当面はセキュリティの強化、保管庫の死守。
「ここが狙われる理由って何なんでしょうね」
ホワイトボードに書かれた議事録のようなただの落書きのようなものをタブレットで撮影しながら笛吹がいうと、大月が少し鼻で笑った。笛吹を笑ったわけではないようだ。
「宝の山とでも思ってるんだろどうせ。この親玉には明らかに目的があって、その道具としてこの三人を使っている。その模索方法や手段は各個人に任せてるみたいだからな。良い方法を探すためにあれやこれやとくだらないことを撒き散らしているようだし、便利なアイテムがあるとでも思ってるんだろうよ」
「別に使い道ないものばっかりですけど。事件の証拠品ってだけで」
「世間一般ではそうでも頭のネジが二、三本吹っ飛んでる奴にはそう思えないんだろう。このアホ自らここに飛び込んでくる事はないと思うが、来る奴を全部対応してたらさすがに手間がかかりすぎる。小野寺たちの動きが悪かったら作業分担して調査に取り掛かる」
そう言ってから山吹と笛吹を見る。
「本来であれば小野寺が目的の人物を探して、お前たちがどうにかするっていうやり方が一番手っ取り早いんだがチームの編成は認められてない。何かあったときの指示はこちらからするから、勝手な行動するなよ」
「ガッテン承知の助」
「わかりました」
彼らは絶対に命令違反をしない、それは大月もよくわかっている。そのため今ここで言葉に出した指示は確約だ。これに違反した時は命に関わる位重大な事情ができた時か、裏切った時。どちらの理由であってもそれが行われたときは処分されるということだ。降格等の立場の処分ではない、文字通りの処分である。




