1 カミサマ、カミサマ
カミサマ、ママがいうように私は悪い子でしょうか。
カミサマ、おじさんがいうように私は悪い子でしょうか。
カミサマ、先生がいうように私は悪い子でしょうか。
私は悪い子だと思っていません。私は悪いことをしていません。だからカミサマおしえてください。
本当に悪いのはダレですか。
「これが犯行声明なのか遺書なのか断定できていない。何故ならこれを書いた人物は犯人だという意見と、これを書いた人物が既に死亡しているという意見が対立しているからだ」
会議室で行われているミーティング。この部署は会議というものを行わない、別に何も会議で共有することも意見を出し合う必要もないからだ。それぞれには役割がありその役割に与えられた権限と責任のもと仕事を行う。二人一組、お互いがお互いをフォローする。
そのおかげで会議というものに全く慣れていない山吹と笛吹は事前準備何もなしに会議室に入ってきたので係長からチョップを食らった。
「これを書いたのは当時十一歳の片倉ひまり、今から十五年前だ。片倉ひまりは十五年前に行方不明になり今も見つかっていない。そして先日起きた殺人事件。これの犯人が片倉ひまりだと言われている」
係長の大月の説明に山吹と笛吹は資料を見ながら事件の概要を頭の中で整理した。何せこの資料は今初めて見た。十五年前片倉ひまりという少女が行方不明となる。彼女は三人の人物から虐げられていたことが後の調査で分かった。
母親、近隣の住民、担任教師。母親からは育児放棄と虐待、担任の教師からは勉強ができないことに対する差別的な扱い、そして近隣の住民からは性的虐待だった。
誰もが彼女は可哀想な目にあっていると気づいていたが見て見ぬふりをした。誰も手を差し伸べなかった。
八月九日、夏休みの間に片倉ひまりは姿を消した。彼女の行動を把握している者はおらず、母親はいなくなってこれ幸いとばかりに捜索願も出さず自分の好きなことをしていて、彼女がいなくなったと警察に届け出たのは夏休みが終わる八月三十一日。行方不明捜索が行われたもののあまりにも時間が経ちすぎていたので手がかりは何も見つからず、七年後母親は失踪宣告を手続きを行い片倉ひまりは事実上死亡という扱いとなった。
しかし十五年経った現在、六日前。この三名が異様な殺され方をして発見された。また三人が見つかった場所が同じ場所、引っ越しをしたり仕事をしていたりとバラバラの場所にいたのにもかかわらず一つの場所にまとめられていた。
体は細かいパーツにバラバラにされきれいに並べられていたという。その傍には先ほどのメモ書きが置かれていた。
鑑定の結果その紙は小学生が使っている学習ノートであること、紙がかなり劣化していることから片倉ひまりの持ちものであり十五年前に書かれたのであろういうことが結論付けられた。
遺体が確認されていないので片倉ひまりが死んだという証拠はない。もしかしたら当時片倉ひまりには他に仲の良い人物がいて十五年経った現在になって復讐したのではないかという意見もある。
そうなると当時同じように子供だった同じ学校に通う誰かではないかと推測されたが、当時の片倉ひまりには近寄る子供はいなかったという。
母親からの虐待で満足な食事も与えられず、服なども持っていない。風呂に入っていなかったのだろういつも不潔で髪もボサボサ、いじめられていたわけではないが誰もが彼女遠巻きに扱いまるでそこにいないかのように過ごしていたという。二人組を組む時も誰も彼女とは組まず三人組が一つ出来上がる。それを担任教師が容認していた。
「最近起きたばっかりの事件がこっちに回ってきますね」
ほんの数秒資料を見つめただけで今の内容を頭に叩き込んだらしい山吹が大月に尋ねる。
「持続案件だからな。この件は願いを叶える壺の卸し元につながる、というのが課長の意見だ」
「つまり片倉ひまりは確かに死亡していて、この紙には書かれていませんが自分を虐げた者達が不幸になりますように、といった類の願いを込めていたということですか」
山吹の意見に大月は「そうだ」と言った。
「片倉ひまりについてはウチじゃなくて別の協力者の調査のもと、確かに死亡しているということがわかっている」
「遺体や遺骨は?」
「存在はしているが回収はしていない。というよりできなかったようだ」
「はあ」
不思議そうな顔をする山吹に大月はカバンから一つの小包みのようなものを取り出した。昔ながらの巾着に包まれているそれはマグカップ一つが入りそうな程度の大きさだ。
「今から中身取り出すが、ゲロ吐くなよ」
「あ、じゃあちょっと準備します」
笛吹がそう言いながらデスクから取り出したのは昼食を買ったときにもらったビニール袋、山吹は自分の手で口をぎゅっと押さえている。




