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コールドケース  作者: aqri
ローラー
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2 不思議な存在

 私の学校は一年生からずっといる子より、編入生が多いです。六歳で活躍してる子は少ないですから。それで、私も今年の四月から編入しました。クラスにはあまり馴染んでなかったと思います、優しい人も多かったけど、みんなそれぞれ自分のコース勉強に必死でしたし。

 ピアノ専攻は私だけでした。歌専攻は人気で、クラスに四人いました。この四人は仲良しグループだったみたいです。

 それで、いつだったかな。たぶん私が編入して一週間とか、本当にすぐだったと思うんですけど。その歌専攻の四人組が私に凄いものを見せたいって帰り道一緒に来てほしいとさそってきたんです。

 仲良くなれるかな、と期待してついていって、案内されたのは学校から少し離れた誰も使ってない公園でした。そこに段ボールがあり、「ローラー」がいるよって言われたんです。


“ローラー?”


はい。私もローラーが何なのかわからず、段ボールを覗いたんですけど。何もいなかったんです、空の段ボールでした。


「何もいないよ、何がいるの?」

「いるじゃん! え、ふざけて言ってる?」

「ふざけてない。何もいない。空の段ボールだよこれ」

「うそお? え、本当に? 本当に見えないの?」


 四人は驚いてお互い顔を見て、本当に見えないのかと何度も聞いてきました。だから、正直に何もいないというと、諦めたみたいで「じゃあ、いい」と言って帰ってしまいました。私には何がなんだかわかりませんでした。

 そこから、クラス内に少しずつ「ローラー」の話題が増えました。その子たちは私が見えなかったのが信じられなかったらしく、クラスの子に少しずつ声をかけてローラーを見てもらったみたいです。それから一ヶ月くらいかな、どうやら「ローラー」が見えないのは私だけみたいで、私はクラスに馴染めませんでした。


“いじめられてた?”


 いいえ、それはないです。悪口言われたとか、嫌がらせされたとか、全然なかったです。ただ、私がいつも一人でいる感じ。まあ、たまに話に入ろうとしても「埜口さんローラーの話わからないでしょ」って言われた事はありますけど。寂しかったけど、いじめ、ではないと思います。気が合わない人、って感じで。


“彼女達と、クラスの人と仲良くなりなかった?”


 まあ、正直に言えば。でも皆が見えて私だけ見えないのって、なんか私が間違ってるみたいな雰囲気があったから、無理に輪に入ろうとするのはやめました。無視されたりとかはなかったです。ちゃんと必要な事はしゃべるし。一人でいるのは寂しかったけど、その分ピアノの練習する時間を増やしたのでなんとかなりました。



“ローラー、というのは具体的にどんなものかわかりますか?”


皆の話から聞こえたのは、手のひらに乗るくらいの大きさの何かの生き物、ピンクで毛はない、牛みたいな泣き声、何でも食べる。


“ローラーという名前は誰がつけましたか?”


わかりません。たぶん四人の誰かだと思います、彼女たちが最初なので。

それで、クラスがローラーの話題で持ちきりになった頃に瀬那君が編入してきたんです。




瀬那芳吾(せなよしあ)、聞いたことあるだろ」

「当たり前です。三年連続で国際映画祭俳優賞受賞してれば知らない方がおかしいくらいです」

「当時は天才子役って呼ばれてた。それでも十分凄いんだが。当然芸能専攻に編入、演技を学びに来たというよりもいろんな分野のプロからあれこれ指導を受けて演技の糧にしてたって感じかな」

「日本が世界に誇るピアニストと俳優が同級生なんですね」

「この学校じゃ誰と誰が同級生、先輩後輩ってのはもうよくあることだからな。で、瀬那芳吾が編入して来て事態が変わる」


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